メンバーが語る『Brand-new idol Society』全曲解説!

1. STUPiD(作詞:松隈ケンタ×JxSxK 作曲:松隈ケンタ)


 本人たちの歌唱が初公開された強烈な爆音チューン。皮肉でツンデレな歌詞を5人の個性的な歌唱でぶちかまし、新たな始まりを宣言した逸曲となっている。

トギー「〈歯切れの悪いオワリカラ〉って、めちゃくちゃ2期のことだねっていう話になって」

ティ部「〈次こそあそこ立てるかな〉もたぶん武道館のことかなとか。でも、〈だいたいが馬鹿しか聞かない歌だし〉からの〈全部嘘だから あいあい愛して〉のくだりが凄い好きで、可愛い歌詞だなって思いながら歌ってます(笑)」

マナコ「いまの私たちが発信するのにピッタリな曲で、いつも練習しながら〈半端じゃ無いな 前世があるの クラクラしちゃう〉っていうところで凄い自分の気持ちにハマるなって思うんですよ。Twitterとかでも〈旧BiSを超えてくれ〉とか〈あの9人を超えられるわけがない〉とか、特に2期BiSのファンの方たちとかからは散々な書かれ方をしてて。そういう状況に対して発信するのに、〈あなたからすごく嫌われたいよ〉とか〈だからクソみたいに道走るよ〉みたいな言葉もピッタリだし、凄い感情移入しやすいです。いまいろんな気持ちを向けてる人に対しての宣戦布告というか、〈やってやるぞ〉って気持ちが入る」

ネオ「伝えるために、力強く歌えます」

 

2. BiS-どうやらゾンビのおでまし-(作詞:松隈ケンタ×JxSxK 作曲:松隈ケンタ)


 MVも公開済みのリード曲。作詞者の一人称的な思いをより具体的に吐露しながらも、壮麗なストリングスと青春マナーの描く疾走感は、過去を振り切って駆け出していく新たなBiSの姿を壮大なスケールで祝福するかのよう。

マナコ「私たちも最初は〈2期のBiSについて歌ってるね〉っていう結論でした。それこそ〈選択が一つしかなかった 迷わず選んだんだ〉は解散のことだし、〈その時僕ら信じあえたら 今も一緒に歩けるのに〉とも言ってるし。けど、振りを作るにあたって考えていったら、これは私たちの始まりの曲なんだって気付けて」

チャント「うん、ドラムが強めの疾走感のある曲っていう感じで、〈行かなくちゃ僕ら〉って力強い雰囲気で録ったんですけど、マスタリング済みの曲を聴いたら、ストリングスも入って、もう、素晴らしく、美しく、爽やかな曲調になっていて。全然ガラッと印象が変わって、羽ばたいていきそうな壮大なイメージだったので、いままでの殻を破っていきたいっていう思いで、振付けもみんなで考えました」

トギー「新しく羽ばたいていくぞ!って」

マナコ「羽ばたくだけじゃなくて、サビでは私たちがいろんなものを壊して作っていくイメージで、見たことないような力強い動きも入れています」

 

3. SURRENDER(作詞:松隈ケンタ×JxSxK 作曲:松隈ケンタ)


 引き続きパワフルな演奏で圧倒してくるが、こちらは曲調の激しさが痛切な心情を浮き彫りにする内省的な仕上がりに。哀しみを帯びたシャウトやデス声が轟く。

マナコ「出だしの〈ずっと探してる 輝くもの〉はネオなんですけど、レコーディングは全員してて。松隈さんがティ部の歌ったのを聴いて、〈これが冒頭にあったらめっちゃクドイけど、凄くイイから入れたいな〉みたいに仰ってて、〈じゃあ、最後に付けちゃおう〉みたいな」

ティ部「その場で決まって。曲が終わったとこでヒグラシが鳴きはじめて……っていう」

マナコ「その時に凄い感動して、松隈さんって遊び心が凄いっていうか、急にそんなアイデアが出てくるのが凄いなと思いました」

ティ部「渡辺さんが“primal.”と“スパーク”に次ぐ自信作みたいなことを言ってたので、歌う時は凄い緊張しました」

 

4. リフレイン(作詞:松隈ケンタ×JxSxK 作曲:松隈ケンタ)


 そこはかとなくビーイング風情もある重々しいミディアム。過去BiS曲の詞も断片的に散りばめながら、タイトルが示唆する通りの〈繰り返し〉を逞しく歌い上げている。

ティ部「〈飛び込む準備もなく進む 泥舟かもな 本当大丈夫?〉って、うちらに言われてるみたいで、ホントそうだなって。いままでのBiSも見てきたので」

マナコ「レコーディングしてた頃とかは、特に不安が大きくて。この先ホントに大丈夫かな?って思う気持ちもあったので、歌詞を見てドキッとしました」

ティ部「〈僕ら消えても 誓いは果たせるんだろう〉とかのフレーズは、聴いてても歌っててもグサッときてしまう。私たちじゃなくてもいいのかな?って」

マナコ「でも、その後に〈でもそうじゃないようにしよう〉って続く流れがめちゃくちゃ美しい。よくよく考えたら〈代わりはいるかもしれないけど、自分たちじゃないとダメなんだ〉ってならないとダメなので、〈誓いを果たすのは私たちだよ〉っていう振付けを考えています」

 

5. BiS3(作詞:松隈ケンタ×JxSxK 作曲:松隈ケンタ)


 当初は渡辺淳之介の歌唱で公開された最初の音源。過去の“BiS”“BiSBiS”を踏襲するかと思いきや、あからさまにKing Gnu風のクールなジャズ・ファンク調となった。

マナコ「最初に聴いた時はビックリしました。実際、松隈さんにも〈King Gnuを意識して〉って言われて(笑)、歌い方も寄せてるんですけど、最初に渡辺さんの歌声で披露された時も〈BiSの新しい可能性が見えた〉とか〈え、この方向ならついていけない〉とか賛否両論いろいろあって。まあ、いままでなかったような曲なので、めっちゃインパクトはあったなって思います」

ティ部「何かになりきりながら歌った感じ。King Gnuっぽい姿を想像してるんで、自然に自分とはちょっと違う感じの人になって歌えてます」

マナコ「ネオは黒人になりきって」

ネオ「そう、難しい難しいって思いながらがんばった」

 

6. this is not a love song(作詞:竜宮寺育 作曲:豊住サトシ)


 アルバム随一の切実さで迫るエモーショナルなナンバー。“WHOLE LOTTA LOVE”や“アゲンストザペイン”などのトラックを手掛けた豊住サトシが作曲し、BiSH“サラバかな”などを作詞してきた竜宮寺育の歌詞も素晴らしい。

チャント「これはもう、曲を聴いたら歌詞がスッて入ってきて……読むのが危うい漢字もあって、〈罅割れる〉とか読めなかったんですけど、〈人に優しくと 優しくと 言われても〉とか、刺さる歌詞が多いです。メロディーも凄いキャッチーで、振付けも一晩で作ることができました」

トギー「超イイ」

マナコ「ね、歌いながら泣きそうになる!」

ティ部「サビの〈最低の人に捧ぐ 良き歌〉っていう部分が、特に曲に合った振付けにできたのでは、と思っています」

 

7. 1,2,3!!!(作詞:松隈ケンタ×ネオ・トゥリーズ 作曲:松隈ケンタ)


 読みは〈ワン、ツー、スリー〉。シンセの立ったエッジーなサウンドにネオ作詞のグロテスクな言葉が躍る。

ネオ「6曲くらい作詞の課題があって、これだけ全然思い浮かばなくて後回しにしてて、凄い時間をかけていちばん最後に書いた歌詞です。他の曲では全部物語みたいに書いてたんですけど、これはストーリーにするのが難しいなと思って、意味がなさそうでありそうな単語を並べてったんですけど。渡辺さんのインタヴューか何かでおもしろかったら採用するみたいなのを見たことがあったので、〈脳みそ〉とか〈心臓〉とかいう言葉を入れたいなと思って。で、サビとかはもう強い曲調に合わせて、全部〈つまらないこと全部ステテコ〉とか、〈駆けろ全身〉とか〈狂え脳内〉とか、何か自分たちの〈これからやってくぞ〉っていう気持ちを書いたんですけど……説明が難しい(笑)。凄い意味がなさそうで、実は意味があるっていうのを、伝わらなさそうに書いたっていうのがあります」

 

8. absolutely meeeeee!!(作詞:松隈ケンタ×JxSxK 作曲:松隈ケンタ)


 アルバム中では異色な愛嬌のあるポップ・チューン……を装いつつ、〈何度話しても聞く耳もたない 運命感じちゃって酔ってる自分に〉などのフレーズは自己主張の肥大ぶりを強烈に皮肉ったようでもあり。

トギー「これはみんな歌い方が可愛いんですよね」

ティ部「〈私を見て~〉って気持ちで、歌い方とかもみんなブリブリしてますね。でも、それに反して、けっこう小馬鹿にしたような表現とかもあって、そこがまた好きなんですよ、このクソみたいな煽りが(笑)。特にトギーの歌い方に凄いハマってて、もうすっごい聴いてて楽しい」

マナコ「我の強い主人公だし、アイドルアイドルしてる感じもアルバムの中で逆に目立つし、凄い自己主張の激しい曲です。合いの手も〈絶対私! 私のはずよ!〉とか、もう合いの手とは思えないぐらい主張がある。でも、〈テンション上げて、可愛く歌って〉みたいに言われて、他の曲は全然そうじゃないから、めっちゃ難しかったよね」

チャント「うん。他の曲は声を張る系が多いんですけど、これはみんな耳に優しい、丸めの声になって歌ってます」

ネオ「ムズかった。歌詞がよく見たら意味ありげな感じだから、その全部の意味を悟られないように、ちょっと頭がホワホワした子の感じを意識して」

ティ部「私もこれはエロなしで歌わせてもらえたんですよ(笑)。ウザったい女で歌わせてもらって楽しかったです」

 

9. ナンデスカ?(作詞:トギー 作曲:井口イチロウ)


 トギーが作詞したチャイルディッシュなスウィング調のナンバー。作曲を手掛けた井口イチロウは、“レリビ”や“BiSBiS”の編曲、“CHANGE the WORLD”の作編曲などで最初期からBiSに関わってきたクリエイターだ。

トギー「私は大人を信用してる側の人間なんですけど、騙そうとしたり、悪いほうに持っていこうとする人もいるので、優しくしてくれる大人を全員信じてたら終わっちゃうよね~みたいな、自分への戒めソングです」

マナコ「集まった最初の頃にマネージャーさんから〈そういう大人に気をつけてね〉みたいな話があって。その、これからいろんな人たちが〈おもしろいから〉とか言って無責任に汚そうとしてくるけど、そういうのを全部鵜呑みにしたらダメだよっていうお話を聞いたんです」

トギー「その話を聞いた直後に〈騙されないぞ〉という気持ちになって書いた歌詞です」

 

10. thousand crickets(作詞:松隈ケンタ×JxSxK 作曲:松隈ケンタ)


 バイオリンではなく〈1000のコオロギ〉。加工された無機質な歌声が仰々しいダークなトラックに響く。

ティ部「この曲がだいぶ好き。イカレ感が好きなんです。コオロギで例えてるのもおもしろくて」

マナコ「これは何だっけ、脳みそ空っぽ人間?」

チャント「人造人間」

マナコ「そうそうそう、〈人造人間になったつもりで歌って〉みたいな感じで。だから、みんなレコーディングしてる時もホントに何も考えてないみたいな顔して歌いました」

ティ部「無、無! 虚無を見つめて。気味悪すぎる」

マナコ「それが良くて。サウンドもめっちゃカッコ良くって、ストリングスの感じとかが激しいのにキレイで美しくてカッコイイ。で、その機械みたいな歌い方がそこに凄いハマってて好きです」

 

11. teacher teacher teacher(作詞:イトー・ムセンシティ部×JxSxK 作曲:松隈ケンタ)


 遠い親戚にあたるBILLIE IDLE®にもどこか通じるような、クセのある80s風味のドライヴ感が新鮮なロック・チューン。キャラを上塗りするようなティ部の詞作も光る。

ティ部「曲をもらったなかで、たぶん最初に書き終わった歌詞で、上京前に新潟で書いてたんですけど、家の前が完全に田んぼなんですね。なんで、授業でやった田植えのことを書いてるんですよ。〈泥まみれ〉で〈先生〉で、まあ、ちょっと思春期が入った感じで」

マナコ「普通にセックスの曲かなって思いますよね……」

ネオ「絶対そうじゃん、だって……」

ティ部「わざとそういうふうにしました。〈ちょっとエロい恋愛ソングなのかな?〉みたいな。エロキャラみたいなのが定着する前だったんですけど、これが選ばれたことで〈あっ、もう完全に……〉ってなっちゃいました(笑)。ただ、〈ああ、泥まみれだったな〉〈足ぬかるんだな〉とか、私的にはそういう思い出です」

 

12. strawberry girl(作詞:マナコ・チー・マナコ×JxSxK 作曲:松隈ケンタ)


 V系好きのマナコらしい美意識系の詞作に導かれて各人が暴れ回るラウド・ナンバー。ノイジーな毒々しさがラスト前をカオティックに散らかしていく。

マナコ「ピアノから入って〈おっ、キレイな曲だな〉って思わせてから、ハードになって裏切ってく感じとか、めっちゃ好きな曲調で。90年代のヴィジュアル系とかが好きなんですけど、わりとそっち寄りなのもあって、自分の中二心に響いたんです(笑)。なので、〈これ絶対に選ばせたい〉と思って歌詞を書きました。歌詞を書く時に仮歌から〈血が流れてる〉って聴こえて、そこから広げて書いたんですけど、サビが〈なぶり殺せ〉を全員で言って、その後のフレーズは一人で歌うみたいな感じになってるんですけど、それが凄い何か、カルト・ソング感が凄い」

トギー「歌詞が凄い」

ティ部「イイ感じに中二病臭いところも私は刺さってくるんですよ。〈希死念慮〉とか〈自己嫌悪〉とか、私も言ってたタイプなんで(笑)」

マナコ「この〈希死念慮〉〈不法占拠〉〈自己嫌悪〉で韻を踏んだりとかしてて。ネオの歌い方とかめちゃくちゃカッコイイし、最後の〈公開処刑〉ってフレーズのトギーのシャウトも、その直前の〈破れ〉って獣が吠えてるみたいなモンちゃんもめちゃくちゃカッコ良く歌っています」

 

13. LET'S GO どうも(作詞:松隈ケンタ×JxSxK 作曲:松隈ケンタ)


 大団円のメロコア・チューン。置かれた位置や歌詞の伝えるメッセージも含め、往年の“レリビ”や“CHANGE the WORLD”のポジションを継承した曲なのは言うまでもないだろう。

マナコ「レコーディングの時に、スタジオにいる大人も全員集まって、最初の〈ワ~〉とか〈ヘイ〉の部分を録ったりしたのが、お祭り騒ぎみたいな感じで楽しかったです」

ティ部「その部分はライヴで絶対に観客の人にも言ってほしいし、〈こんだけの人数で叫んでるんだから、お前らもライヴで絶対やってくれよ!〉っていう気持ちも込めて、大勢で歌ったんですよ」

マナコ「エンディングテーマみたいな感じもあるし、最後に自己紹介みたいに〈こんな僕らだけどよろしくです どうも〉って歌ってアルバム終わるの、めっちゃキレイな流れだなって思います。この位置も含めて凄い好きです」