INTERVIEW

betcover!!の冷めた苛立ち「問題ばかりの日本、チルってる場合じゃない」

betcover!!『中学生』

自分は過大評価されてる

――さすが天邪鬼(笑)。アルバムでは凝ったサウンドに反して、歌声はストレートなのも印象的でした。何か意識したことは?

「音程が外れないようにがんばって……そのくらいですね。でも、まっすぐ歌おうというのはありました。中学生というよりは小学生のような気持ちで、とにかくしっかり歌う。変な歌い方とかせず、上手い下手とか気にせず、真剣にありのままで。だって、〈中学生〉なんて真っ直ぐさしかないじゃないですか。

中学生活も特に広がりがないというか、ただ学年が上がって、その先に高校生活が待っている。生活区域も地元から広がらないまま将来に向かう……いや、向かっているかどうかもわからない。その真っ直ぐさっていちばん芸術的な年頃だよなと。中学生のストーリーってみんな濃いじゃないですか。僕、『中学生日記』とか結構好きで。あの作品の空気感をイメージした部分もありますね。普遍的な地元感っていうか」

――誰しもが持っている原風景というか。

「そうそう。歌詞もメチャクチャですけど、メチャクチャすぎると普遍的になったりしますよね。自分でもよくわからないところもあるし。歌詞を作るのが苦手で、わりと適当なところがありますね。自分が音楽を聴くときもそうですけど、歌詞の意味とかあんまり知りたくなくて」

――町田康さんが〈只者じゃない!〉と歌詞を褒めてたのに!

「過大評価されてるんですよ(笑)。6曲目の“世界は広いよ”とか、なんの歌かまったくわからない。周りに聴かせたら爆笑してました(笑)。サビも〈魅惑の体〉と言ってるだけだし。メッセージ性もあるっちゃあるのかもしれないけど」

betcover!!の2019年作『中学生』収録曲“世界は広いよ”
 

――〈魅惑の日本、犬になろうぜ世界は広いよ〉ってくだりとか。

「社会批判みたいなメッセージ性がありそうですよね(笑)。でも、僕はわかりやすいところでは出さないかも」

――この曲のアウトロで、言葉にならない叫び声のあとに〈バンザーイ〉って入っていたのが生々しくて驚きました。

「あれを録ったときはハードコアにグッときてて、(アルバムの)どっかで叫べないかなって思ってたんですよ。それで叫んだらメンバーもエンジニアさんもドン引きしてたので。これでいこうって(笑)」

 

いまの日本、チルっている場合じゃない

――そのあと、後半に入っている“ゆめみちゃった”“中学生”という10分前後の2曲がアルバムの軸を担っている印象ですけど、ストリーミングが主流になりつつあるご時世に、こんな長尺の曲を用意するのも攻めていますね。

「そういうのをあんまり考えてなくて。〈長い曲ってカッコイイじゃん〉と思ってスタジオに持って行ったら、ちょうどビリー・アイリッシュのアルバム(『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』)がリリースされたときで。〈やっちまったー、時代と違いすぎる〉って(笑)。そうそう、ビリー・アイリッシュにも今回はかなり影響を受けてますね。バリバリの低音を出すとか、スタジオでもその場でやってみようとなったんですよ。しっかり消化することなく(笑)」

ビリー・アイリッシュの2019年作『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』収録曲“bad guy”
 

――『中学生』はベースの音が相当出てますもんね。ダブの手法とビリー・アイリッシュ的なプロダクションが組み合わさっているというか。

「群馬と東京でレコーディングしたんですけど、群馬での初日にビリーのアルバムが出て。レコーディング中、全員その話しかしてなかったです。みんなレコード買ってたし」

――彼女は人間性もユニークですよね。誰にも媚びないスタンスのままビッグになって。

「時代を代表しているし、カルチャー・アイコンとしてもカッコイイですよね。自分をメチャクチャ持ってるじゃないですか。日本でこういう人が出てくるのはムリですよね。いまの時代では絶対にムリ」

――そこに物足りなさを覚えたりもする?

「します。それこそ音楽がつまらなさすぎるというか。文字や映像、それ以外のカルチャーと結びつきがなさすぎる。音楽だけでしか語れていないし、カルチャーの中心に音楽がいないというか。いまは主流が変わってるじゃないですか? 日本ではアニメやゲームのほうがずっと勢いがあるし。それに対する(音楽側の)理解も全然ないと思う。

もったいない国だなって。せっかくおもしろい言葉があって、空気感も独特のものを持ってるのに、世界に発信しようという意思がまったく見えないし。それこそ、大物がちっともサブスク解禁してないじゃないですか。ちょっとはやる気出せよって。そこがやってくれないと困っちゃう。どうにもなんない」

――〈音楽が本当にしっかり語られているのか?〉という視点もありますよね。以前Mikikiではニトロデイやステレオガールと並べて紹介されていましたけど、そもそも自分の語られ方には満足しています?

「してないですね。あの2組と比べられるのもピンとこないし。結局、みんな褒めることしかしないんですよね。なんというか……みんな丸くなりすぎかな。何に対してもビビりすぎ。僕、ホントに気が弱いのに、こうやってdisとか言ってるけど、みんな言わないでしょ。というか、そういうのがおもしろがれない。disとかそういうものに耐性がなさすぎる。

その代わりチル系がやっぱ強いんですよ。日本っていろいろ問題があるくせに、みんなラヴソングにしか共感しないですからね。あとはチル最高、波に乗っていこうぜみたいなのしかないっていう(笑)。いまの日本、メチャクチャ問題あるじゃないですか。チルってる場合じゃないんだけど、音楽が社会問題とかの空気感を音で示すのがタブーみたいになってる。それが音楽の廃れている理由じゃないかと思って。ただの音でしかなくて、メッセージがなさすぎて求められていない」

 

人がおもしろいと思うか/思わないか、それだけ

――アルバムの最後を飾る“中学生”には〈死んだネコ〉とか〈地獄〉って不穏なフレーズも出てくるし、〈Love Forever〉と繰り返すパートもあるけど、言うまでもなくラヴソングではなくて。曲調も含めてポエジーなんだけど混沌としていて、そこにチルってるだけの人たちにはない誠実さを感じた気がしました。

betcover!!の2019年作『中学生』表題曲
 

「あの曲は中学生に対する僕のイメージを全部詰めこんだ曲ですね。実際に中学生の頃、死んだ猫が道路で轢かれちゃってたことがあった。そこでどうしよう?となり、友達を呼んで埋めに行こうとしたんですけど、警察が来て止められたんです。そういう記憶に留まるのかどうなのか曖昧な出来事。現実と非現実の抜け出せない感じ、抜け出したくない感じ――僕はそういう年頃のモヤモヤを表現しているとよく言われます。でも、いまはまだ年齢的に当事者なので。30、40にもなってこういう音楽をやってたら結構ヤバイですよね(笑)」

――アイツ、まだやってるよって?

「そうそう、その可能性は全然ありそう。そうなっていてもおもしろいなって。本当、自分がこの先どうなっていくのかわからないです。だからこそ、ここで一度完成させておこうって。まずは自分の場所を周りの人にもわかってもらいたかった。〈こいつ、シティ・ポップじゃないぞ〉って(笑)。それはこれまでのEPと、この『中学生』で一旦終わり」

――じゃあ、この先はどこをめざします?

「次はめちゃくちゃポップな曲をやるかもしれないし、クソダサい曲作るかもしれない。いい音楽を作りたいって感じじゃないし、先端を追うとかもできないし、僕はどれだけ人がおもしろいと思うかに賭けているところがある。いまはその枠に誰もいないので、自分がやりたいなって感じです」

 


LIVE INFORMATION
1st.フルアルバム発売記念 単独公演『中二魂』
2019年8月23日(金)東京・渋谷WWW
開場/開演:19:00/19:30
前売り:3,000円(ドリンク代別)
★詳細はこちら

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