Page 2 / 6 1ページ目から読む

ワクワクする出会いをもたらしたい

――なるほど。そういうさまざまなタイプのリスナーに向けて、どんな音楽をアウトプットしていけばいいかを考えながら作られたのが新作『Emulsification』だと言ってもいいんでしょうか?

WATARU(ギター/キーボード)「そうだと思います。とっつきやすいものや耳なじみの良いものなど、そういったものをなにかと考えた一年でもあり、そこは曲作りの面にも反映されています。

僕たちは英詞で歌っていますけど、そのなかでも簡単な単語を選んだり、誰もがわかりやすいものを用いて聴きなじみの良いものを作ることをめざしているので」

――アルバムはトータルで13曲。かなりヴォリューミーな仕上がりになっているのがまた印象的です。

HIROSHI「明らかに時代と逆行してますよね(笑)」

――で、アルバムを聴いた率直な感想としては、いい意味で欲張りな作品だなぁと。どの部分を切っても、もっと遠くまで伝えたい、もっと僕らのことをわかってほしいという貪欲な姿勢が浮かんでくる。

HIROSHI「客観的に見たときに、日本のマーケットにおいて英詞で歌っているという僕らは、非常に回りくどいことをやっているバンドだと思うんですが(笑)、あえてそうしつつも、もっとわかってほしい、という思いはずっとあって。

それは何かというと、自分が好きなアーティストと出会ったときに、こんな世界もあったのか!という驚きと共にいつも扉を開けてもらう感覚を得てきたわけです。そういうワクワクする出会いを僕らの音楽を聴いてくれた人にももたらしたい。

それがつねに根本にあるんですけど、今回はこれまでFIVE NEW OLDとして出してきたものをもう少し深いポイントで精錬させ、抽出しようと試みたところがある。自分たちの音楽をもう一度じっくり振り返りながら作った作品になっているかと思ってます」

 

メンバーでアレンジを分担することがバンドにもたらした変化

――特にリズム面においてかなり試行錯誤の跡が見て取れる本作。先鋭的ながらもとことんポップ、という感触もこれまでになく徹底されているなと思ったりもして。制作作業において何かこれまでとは違ったものなどありましたか?

HIROSHI「EP『What's Gonna Be?』(2019年)あたりからそうなんですが、アレンジをメンバーに預けることがずいぶん増えて、メンバーのそれぞれの色がかなり作品に出るようになりましたね。

一方僕は、作詞やメロディー作りにおいて、いったい何を込めるか、という思いの部分に注力していくことを心掛けた。そこがいちばんの違いですかね」

SHUN(ベース)「今回HIROSHIくんが曲作りで悩むことも多々あったので、他のことであまり気をつかわせたくない、という気持ちもありました。

そこでアレンジをメンバーで割り振りながら、HIROSHIくんの思い描く完成形に近づけていったんですが、そこでしっかりと自分の主張も提示できたし、いろんな要素を取り込みつつ本来のイメージと違ったものが出てきてもOKにしていく、そういう作り方はこれまでと違っていたのかなと思います」

WATARU「作業を分担することで、効率よくできたことは明らかに違う点で、いちばん良かったと思えるところですね。さまざまなパターンを試せる回数が増えたんですよ。以前だとその場でいっしょに悩みながら、ああでもないこうでもない、と言いながら作り上げていくことが多かったけど、最近の形だといったん完成させたものを聴きながら最終形へと持っていけるので曲の方向性がより明確になるというか。

さっきSHUNくんが言ったとおり、思っていたのとは違うものが出てくるという可能性の幅がだいぶ広がりました」

――意外性を取り込む余地も格段に増したということですね。

WATARU「その機会は格段に増えましたね」

HAYATO(ドラムス)「HIROSHIが曲作りに真正面から向かい合えたり、SHUNくんが持っているJ-Popのいろはを溶かし込んでいくことで何パターンものアプローチができたんですが、その結果、効率が良くなって曲があがるまでの流れがスムーズになって。とにかく作業がリズミカルにいけたんです」