夏真っ盛りの今、セミの鳴き声を聞かない日はない。しかし彼らは短命で、だからこそいろいろな作品でとりあげられる。岡田惠和脚本の『セミオトコ』が私の周りで大人気。自分の命を救ってくれたアラサー女子を幸せにしてあげたいと、7日間だけ人間の姿となって望みを叶えてあげようとする話だが、ショーン・タンの『セミ CICADA』はそんな甘さはかけらもなく、シュールそのもの。背広を着たセミが語るカタコトの言葉がチクチクと胸を刺す。巻末の芭蕉の句の翻訳が秀逸。オーストラリア生まれのショーン・タンは、2011年にアカデミー賞短編アニメーション賞を受賞した新進気鋭の絵本作家だそうです。要注目。