INTERVIEW

「ハッピーエンドが嫌い」 ★STAR GUiTARのサウンドに通底する、失うことの美しさ

★STAR GUiTAR『for ever&ever』

「ハッピーエンドが嫌い」 ★STAR GUiTARのサウンドに通底する、失うことの美しさ

SiZKことAkiyoshi Yasudaのソロ・ユニット、★STAR GUiTARによる最新作『for ever&ever』がリリースされた。

本作は、前作『Wherever You Are』からはおよそ3年半ぶり、自身を総括した2種類のベスト・アルバム『Here and There』『Special Ordinary』を経てのオリジナル・アルバムとなる。ゲストにはかねてより親交の深かった4人組バンド、NewspeakのRei(ヴォーカル)や、京都を拠点に活動するインストゥルメンタル・バンド、jizueのKie Katagi(ピアノ)、NY在住の音楽家Hidetake Takayama、そしてタイ発のポップ・バンド、プラスティック・プラスティックと多彩な顔ぶれが参加。これまでの★STAR GUiTARの流れを汲んだエレクトロニックな楽曲から、ピアノやアコギ、さらには自然音などをも取り込んだ新境地ともいえる楽曲まで並んだ、実にヴァラエティーに富んだ仕上がりとなっている。

デビュー以来、さまざまなアーティストとコラボを重ね、別名義での楽曲制作やプロデュース業などによって、アルバムごとに変化と進化を繰り返してきた★STAR GUiTAR。それでも一貫して貫かれているのは、どこか懐かしくも切ないメロディーだ。その原風景は一体どのようなものなのだろうか。本作を紐解きながら、SiZKのクリエイティヴの真髄に迫った。

★STAR GUiTAR for ever&ever CLUSTER SOUNDS(2019)

★『for ever』 SpotifyiTunesApple Musicレコチョク
★『& ever』 SpotifyiTunesApple Musicレコチョク

 

感情や情景に音を付けるって、こういうことなのか

――今作『for ever&ever』は、配信では『for ever』と『&ever』の2枚に分かれていますが、パッケージだと1枚にまとめられているという、若干イレギュラーな形でのリリースとなっていますね。

「単純に作っていた時期が分かれているんですよ。『for ever』に入っている曲は、以前インタヴューしていただいた頃から書きはじめていたもので、『&ever』にはここ1年くらいの間に作った楽曲を中心に収録しています。ジャンルというか、曲調も『for ever』にはいままでの★STAR GUiTARの流れを汲んだ、エレクトリック路線の楽曲が多いのに対し、『&ever』は割とオーガニックな楽曲が多くて。それでスタッフから〈分けて出すのもおもしろいんじゃない?〉と提案してもらったんですよね」

――配信の方も、当初は1枚にまとめるつもりだったわけですね。トータルで17曲入り、収録時間も1時間を超えていて、昨今の傾向としては長尺といってもいい部類に入るアルバムです。

「僕自身の作品の中でも長尺なほうですね。最近だと30分で終わるアルバムもありましたから。時代の流れに合わせたつもりは特にないんですが、曲自体はどんどん短くなってきています。それは、僕自身の興味が★STAR GUiTARを立ち上げた頃に比べると、ループ・ミュージック的なものから展開の多い楽曲に変わっていったことも影響していると思います。結果、曲そのものもコンパクトになっていったというか」

――それは大きな変化だと思うのですが、背景には何があると思いますか?

「おそらく、本名名義のAkiyoshi Yasudaで手がけた劇伴(『レンタルの恋』、 『3D彼女 リアルガール』)の影響が大きいと思います。それが後半の楽曲、つまり『&ever』の曲調や音の作り込み方には如実に表れている気がしますね」

――劇伴の作り方というのは、普段の曲作りとは大きく変わるものなのでしょうか。

「変わります。これまでの僕は、〈曲を作ろう〉と思って鍵盤に前に座り、演奏しながらイメージを膨らませていくというやり方が多かったんですよ。それが劇伴になると、どういうシーンで使われるのかを先方が映像や台本などで具体的に示してくるわけです」

――つまり映像を思い浮かべながら曲を作ると。

「はい。それは僕にとって初めての試みだったんですよね。よく〈絵や映像を観ていると音楽が浮かんでくる〉みたいなこと言う人いるじゃないですか。それまでの僕は、そういうのを疑ってかかっていたんです。〈本当に?〉って(笑)。でも実際にやってみたら〈なるほど、感情や情景に音を付けるってこういうことなのか〉と合点がいったんですよね。例えば悲しい場面で悲しい音楽を流せば感情を増幅させられるし、逆に悲しい場面で楽しげな音楽を流せば感情を抑制したり、あるいはまったく別の感情を生み出したりすることもできるわけじゃないですか」

――確かに。

「そういうことを、劇伴をやったことでより明確に気づきましたね。他にも、最初にタイトルを付けてから曲を作りはじめた楽曲もあります。特に『&ever』にはそういう曲が多いですね。例えばKie Katagi(jizue)とのコラボ曲“Part Of Me”は、〈誰かの一部になる〉というような意味ですけど、そこから〈自分が相手の一部になる〉、あるいは〈相手が自分の一部になる〉というシチュエーションを想像しつつ、そういうテーマをKieさんにも伝えて、そこからピアノのフレーズをお互いに考えていきました。これまで曲名など最後に考えることが多かったのですが、今作は早い段階から曲名を決め、そこから浮かぶ音を出していくといった作業はありましたね」

――ピアノが占める割合や、楽曲におけるピアノの重要度が以前よりも増えていることに関しては?

「単純に、自分で弾けるようになってきたのが大きいかな(笑)。〈表現したいけど弾けない〉〈どう弾けばいいのかわからない〉みたいなことが、どんどんなくなってきてはいるので。“Part Of Me”や、Hidetake Takayamaとの“dalur”のようなピアニストとコラボした曲の場合でも、いままでなら〈(自分が)弾けないのでお願いします〉だったのが、もっとテクニカルな部分で話を詰められるようになったのは大きいと思います」

 

いまの自分たちが表現できる〈勢い〉や〈熱さ〉とは

――ここ最近でインスパイアされた音楽はありますか?

「最近はアンビエントばっかり聴いてますね(笑)。ドローンとかそういう系ばかり。前回のインタヴューでも紹介しましたが、ハンモックやビング&ルースのような〈漂う音楽〉が僕は好きなんですよね」

――そのあたりの影響は、いまおっしゃった“dalur”にも感じられました。

「ああ、確かにそうですね。最初の段階では、Hidetake Takayamaと7年前に初めてコラボした“Live”(★STAR GUiTAR の2012年作『Traveller』収録)という楽曲に近いテイストにしようと思ったのですが、うまくいかなくて。“Live”は勢いのある熱い曲なのですが、あの頃の〈勢い〉や〈熱さ〉は現在の僕らにもう残っていないというか……(笑)。だったら違う形でできないかな、と。いまの僕らが表現できる〈勢い〉や〈熱さ〉とは?というテーマから、アイデアを膨らませていったんです」

――なるほど。パッと燃え盛る赤い炎が“Live”だとしたら、じわじわと熱を帯びる青い炎が“dalur”という感じがしますね。

「ちなみに、今作のCD版に2ヴァージョン入っている“Alive”という曲は、“Live”っぽいことを1人でやったらどうなるか試してみた結果、出来た曲なんですよ。おそらく“Live”を知っている人は、この曲を聴いて〈お?〉って思ってくれるのでないかなと。“Alive”のような希望に満ちた曲がある一方で、“dalur”のようなダークな楽曲が共存しているのも、このアルバムのユニークな特徴なのかなと思っています」

――NewspeakのReiさん、プラスティック・プラスティックをフィーチャーした歌モノの楽曲(“Too Late To Fantasize”、“distance”)は、どちらも一筋縄ではいかないスケールが使われていて、トライバルな印象があります。

「オリジナルとしては久しぶりの歌モノですね。Reiさんの所属するバンド、Newspeakのスティーヴン・マクネア(ドラマー)は、以前★STAR GUiTARの“Mind Trip”という曲で、ヴォーカリストとして参加してもらったことがあって。それが縁で、僕自身がSiZK名義で楽曲を書いていた時にもいろいろ手伝ってもらっていたんです。その頃から月1ペースでずっとお会いしていたんですよ」

――そんな縁があったんですか。

「それもあって、Newspeakのマスタリングをやらせてもらった時に、Reiさんの声がすごくいいという話をしていたら、今回のフィーチャリングに繋がったんですよね。まずは僕が、彼のヴォーカルを想定しながらバックトラックを製作し、それを彼に送ってメロディーを考えてもらいました。特にこちらからリクエストはなかったのですが、構成に関しては、Aメロ、Bメロ、サビみたいな展開じゃなく、中心となるモチーフだけを作ってほしいとお願いしました。メロディーはシンプルな繰り返しだけど、バックのトラックがどんどん変わっていくというというか。最初はブリティッシュな感じで陰鬱に始まるけど、最後のほうは僕の中のクラシカルなルーツも出てきますね」

――プラスティック・プラスティックをフィーチャーした“distance”は?

「もともとアジアの人と何かやりたいという話はしていて、それでレーベル・スタッフに繋げてもらったという経緯です。声を聴いてすぐ思ったのが〈この声でボンベイ・バイシクル・クラブみたいなことをやりたい〉でした。すでに曲も揃ってきていたし、アルバムにはポップに振り切れる曲があってもおもしろいんじゃないかと思って作りはじめましたね」

 

ハッピーエンドで満たされてしまうと、そこで終わってしまう

――“So Far”や“Only knows”のような楽曲を聴いた時に湧いてくる〈切なさ〉と〈懐かしさ〉、〈高揚するのに切ない〉といった二律相反する感情は、一体どこからくるものなのでしょう?

「うーん、レディオヘッドの“Creep”や“Airbag”あたりの影響ではないかと。情景でいうと、例えば“distance”には夏のイメージがありますね。めちゃくちゃ暑くて、誰もいなくなる時間帯ってあるじゃないですか。そんな情景が浮かんでくる。暑いときに聴きたくなるというか(笑)。

あと、劇伴を手がけたことによって音のテクスチャーによりこだわるようになりましたね。〈音の影〉というか、1つの音色の裏側に配置する音の種類が変わってきました。例えば、ピアノを弾いている時の椅子が軋む音を積極的に取り込むとか。そういう空気感……音階とは違うテクスチャーをいろいろ入れるようになりましたね」

――なるほど。“drowing”はまさにそういう曲ですよね。自然音を取り込んだり、アコギやメロトロンのようなサウンドが重ねられていたりして、音が滲んでいる感じはこれまでのSiZKさんの楽曲にはなかったものです。

「確かに。4月にNHKで放送されたよるドラ『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』のサントラを作ったんですが、“drowing”はその影響がモロに出ています(笑)。“So Far”とかもそうですね。どちらも音像が滲んでいて、うねりみたいなものが以前よりも感じられると思います。

セパレートしてきっちり聴かせる音楽が、以前に比べると好きじゃなくなってきているのかもしれない。初期の自分は〈どれだけ音が綺麗に整理されているか?〉にこだわっていましたけど」

――そんなふうに音のテクスチャーが変わってきていても、SiZKさんらしさが滲み出ているのはなぜだと思います?

「僕はハッピーエンドの物語が嫌いなんですよ。映画でも余韻が残るというか、結末をそれとなく匂わすくらいで〈あとはそれぞれ考えて〉といった作品のほうが好きなんですよね。例えば、いまパッと思いつくものだと『バタフライ・エフェクト』とかがそうで、感じ方によってハッピーエンドにもバッドエンドにもなりうるというか……。

それと〈失うことが美しい〉みたいな考え方も、常にどこかにありますね。それが僕の曲に通底している〈切なさ〉みたいなところにつながっている気はします。何かを失うと、新たに何か手に入れたくなるじゃないですか? そんなふうに、失うことで物事が止まらずに続いていくイメージがあって。でもハッピーエンドで満たされてしまうと、そこで終わってしまう。その先が想像できなくなってしまうのが嫌なんだと思いますね。

曲作りでいうと、トニック・コードのように〈解決〉するコードで終わりたくないので、トニックでもテンション・ノートを入れてみたり、中途半端なところで急にカットアウトしたり。それをSiZK名義の作品でやりすぎて、〈ちゃんと曲を終わらせてよ〉って(スタッフに)何度も叱られましたけど(笑)」

――そういう曲の作り方に影響を与えたものはありますか?

「確実にトレント・レズナー(ナイン・インチ・ネイルズ)ですね。僕は彼がサントラを手掛けた映画『ソーシャル・ネットワーク』が大好きで、オープニング・シーンでかかる“Hand Covers Bruise”という曲が特に好きなんですよ。あの、シンプルなピアノの単音が爪弾かれる後ろで、ストリングスやシンセ・ベースがザーッと鳴っている感じ(笑)」

――切なくもあり、不穏な感じもあるというか。

「そうそう、〈不穏さ〉が好きなんだと思いますね。ただ、聴きようによっては希望があるようにも感じられる。他にもあのサントラからの影響はバカみたいに受けてます」

――お話を聞いていて思ったのですが、ハッピーエンドに希望はないかもしれないですね。そこにとどまったままというか。でも、不穏や不安と希望は常に隣り合わせなのかなと。

「そうなんですよ。不安や絶望の中にこそ希望があると思います」

――まさに今作のアートワークも、そのことを象徴しているかのようですよね。陰と陽、無意識と意識、生と死とか。

「意識したわけではなかったんですが、結果としてそう見えるようになりましたね。僕のリクエストは〈文字がなるべく見えにくくなるようなデザインで〉くらい。こうやってフィジカルで確認すると、かろうじて文字が見えますけど、デジタル・データではほとんど見えない。別にミスじゃなくて(笑)、アルバム・タイトルをあまり重く見せたくなかったんですよね。意外と重たい意味にとられがちな文字が並んでいるので」

――タイトルに含まれる〈for ever〉も、例えば〈永遠に誓う〉というよりは〈永遠に続く(to be continued)〉に近いニュアンスなのかなと。 

「そうです。たゆたうものがずっと永遠にある感じですかね。僕は今年で36歳になるんですけど、勢いだけではうまくいかなくなってきたなということを実感していて。なんとなく35歳で一区切りついて、折り返し地点を過ぎたところなのかなと。明日死んでもおかしくないし、それを踏まえたうえでいまできることは何か?ということを、今作を作りながらずっと考えていた気がします。この感覚って、同年代の人は共感してくれるんじゃないかな。ともあれ本作は、これまでの★STAR GUiTARの作品の中でもっとも内省的なものになりましたね」

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