INTERVIEW

映画「パリに見出されたピアニスト」 路地裏の天才が本当の音楽に出会う! 監督ルドヴィク・バーナード、主演ジュール・ベンシェトリ インタヴュー

映画「パリに見出されたピアニスト」 路地裏の天才が本当の音楽に出会う! 監督ルドヴィク・バーナード、主演ジュール・ベンシェトリ インタヴュー

ルドヴィク・バーナード[監督]
――クラシック音楽というものがもたらしてくれる感動というのはユニヴァーサルなものですからね

ジュール・ベンシェトリ[主演]
――人はひとりずつ感じることが違うので、あなたが感じることをだしなさい、とピアニスト、ジェニファー・フィシェに言われました

 パリの北駅におかれたアップライト・ピアノでバッハを弾く革ジャンの青年。音楽とともに、表情が変わってゆく。誰も気にしていない、とおもいきや、そばでじっとみつめている初老の男性が。この二人が、異なった生活をおくりながら、音楽によって映画を牽引してゆく――。

 クラシック音楽って何なのか。ピアノを弾くって何なのか。生きていくなかで、音楽はどんなものなのか。バッハ、リスト、ラフマニノフが、パリのさまざまな光景とともに、問いを発する。音楽がただそれだけのものとしてとおりすぎてしまう人もいる。他方、音楽が生と重なってくる人もいる。

©Récifilms – TF1 Droits Audiovisuels – Everest Films – France 2 Cinema – Nexus Factory – Umedia 2018

 監督のルドヴィク・バーナード(L)と、マチュー役のジュール・ベンシェトリ(J)――何と、ジャン=ルイ・トランティニャンの孫という――にはなしを聴くことができた。

――いまYouTubeやDLとかして音楽を聴く人の多くは、何かをし「ながら」音楽にふれていることが多いと思われます。でも、映画のなかでは、生きていることと音楽とがもっと直接にかかわっています。それが視覚的にもわかります。

[L]YouTubeの矛盾するところですね。私たちはすばらしい音楽をこれで知ることができます。「ながら」だけではなく、もっといい音楽があるというような好奇心をかきたてるようにできるといい。あなたもわたしとおなじくらいの年齢かとおもいますが、若者たちに手をさしのべて、こんないいものがあるんだよ、と言ってあげるのも必要ではないでしょうか。

――どちらかというとふだん表情の変化のないマチューが、演奏のときにはさまざまに変化します。音楽とともに微妙に変わるのが映しだされています。

[L]音楽はけっして耳だけで聴くものではなくて、やはりピアニストがピアノを弾く、ヴァイオリン奏者がヴァイオリンを弾くのをみることで、音楽をよりつよく感じることができます。映画ならなおさらです。手をみて感動を、というわけにはいかないけれど、顔、表情によって伝わるものがある。その音楽が演奏者にもたらしているものをあらわすことができます。

――ピアニストを演じることの大変さはどんなところでしょう?

[J]ピアニスト、ジェニファー・フィシェがわたしの指導をしてくれたのですが、彼女から言われたのは、つくった感情はダメだよ、ということでした。ちゃんとあなたの感情を表現しなさい、人はひとりずつ感じることが違うので、あなたが感じることをだしなさい、つくりこんではいけない、と。演奏しながら無表情でいることなんてできないのだから、と。

――映画をみながら、マチューとともに、音楽の聴き方を学んでいる、と感じられます。

[L]そう言ってくれるのは、ほんとにうれしいな。クラシック音楽を映画にしたいと考えたときの最初のおもいはそこにあったのです。わたしは楽譜も読めないし、楽器も何ひとつ演奏できないけれど、音楽は大好きで、しかもクラシックが大好き。そういうおもいを多くの人たちと共有したいというのが自分のなかにあります。クラシック音楽というものがもたらしてくれる感動というのはユニヴァーサルなものです。そして、音楽はひじょうに深い意味でマジカルで、唯一無二というような力がある。年齢も人種も性も違う人たちがおなじように感動できるのですから。

[J]ぼく自身ははじめてピアノを弾いたんです。最初は集中講義のようなかんじで、一日何時間も数か月というかんじで。学ぶことは山ほどあります。コーチとともに、映画の音楽を手掛けた作曲家も一緒に指導してくれたので、とても恵まれたといっていいですね。弾いてみせてくれたときには、目指すべきところが高すぎるんじゃないかとため息をつきましたけど。

――個人的な音楽とのかかわりの物語とともに、社会的な問題にふれています。

[L]日本ではどうかわからないのだけれど、フランスでは、クラシック音楽はゆとりのある富裕層だったり学歴の高い人たちが聴くものだという偏見がある。僕らの音楽ではないとおもわれてしまう。でもこのままでは終わりがなくなってしまいます。わたしが言いたかったのは、クラシック音楽はどこかのカテゴリーに属するものではないんだ、みんなのものなんだ、ということなんです。いま、そうした偏見のなかで生きているからこそ、映画のなかではアフリカ系の女性が富裕層で、マチューは郊外で生活している層だというふうにわざとしているわけでね。フランスのいいところは、パリ・コンセルヴァトワールはけっしてブルジョワのためにつくられたものではなく、誰でも行けるというところです。学院長になる人もかならずしもエリートが選ばれるわけではない。そうした開かれたところがあるのです。それにもかかわらず、偏見は変わらなかったりするのですけれど……。

――intoxicateの読者へ、ひと言ずつメッセージを。

[L]これが好きなんだよね、とクラシック音楽に彩られたパリをみつけていただければうれしくおもいます。

[J]パリには歩いていても多くの音楽があります。映画にもそれがあらわれているので、お楽しみください。

 


映画「パリに見出されたピアニスト」
監督=ルドヴィク・バーナード 脚本=ルドヴィク・バーナード&ジョアン・バーナード
音楽=アリー・アルーシュ
出演=ジュール・ベンシェトリ/ランベール・ウィルソン/クリスティン・スコット・トーマス
配給:東京テアトル(2018年 フランス・ベルギー 106分)
©Récifilms – TF1 Droits Audiovisuels – Everest Films – France 2 Cinema – Nexus Factory – Umedia 2018
paris-piano.jp
9/27(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ YEBISU GARDEN CINEMAほかロードショー

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