20歳の頃、一緒にバンドをやっていた先輩がいた。気が向かなくなると急にバンドを辞めると言い出すし、その数日後には何事もなかったかのようにスタジオにくるし、簡単に言えばめちゃくちゃな人だった。そして、そんな先輩のことが大好きだった。一緒に曲を作って、好きな音楽を聴いて、明け方まで飲んで、眠い目を擦りながら大学へ行った。今、何しているんだろう?

夏もピークになってきて、昼間の日差しは余りにも暑い。日が落ちた後は少しだけ涼しいから、最近は夜になると近所のスーパーまで、コンビニまで、自販機まで、適当にフラフラと散歩をしたりする。ふと空をみたら星が綺麗でBand of Horses『Infinite Arms』のジャケットみたいだった。先輩が大好きで、僕も大好きで、一緒にいるときはいつもこのアルバムばかり聴いていたことを思い出した。

第3回はシアトルのバンド、Band of Horsesの3rd Album『Infinite Arms』(2010年発表)について。

BAND OF HORSES Infinite Arms Columbia(2010)

例によって出会いから。初めてBand of Horsesを知ったのはYouTubeで偶然見た“No One's Gonna Love You”のライブ映像だった。

このライブ。今見ても鳥肌級にヤバい。曲もアンサンブルも最高なんだけど、何より歌がヤバい。つま先から頭まで、全身で歌っているような力強さがあって、それなのに脆くて繊細な感じも同居していて、胸をガッと掴んでくる。当時、毎日のようにこの映像を見ていたと思う。

それからというもの中々売っていなかったアルバムを探し回り、初めに手にしたのが『Infinite Arms』だった。見つけたときは嬉しい反面「あ〜“No One's Gonna Love You”が入ってるアルバムじゃないのか……」と思ったのをよく覚えている。ただ、家に帰りCDをセットして1分、そんなことはどうでも良くなってしまった。そのこともよく覚えている。

カントリーテイストな雰囲気を持ちながら、どこまでも肉体的で力強く、そこはかとなく甘い。身体をグイッと引っ張っていくようで、優しく包んでくれるみたいな音。ドッシリ構えたリズムも最高だし、ザラついたギターは生々しくて気持ちいい。完璧すぎるコーラスワークも神聖で美しい。でも、それら全てが歌を中心に展開しているのが、このアルバムを聴くとよく分かる。何より歌がひたすらカッコいいから。

それに加え、録音においてもこのアルバムは素晴らしくて、音は太く、柔らかい。たっぷり空気を含んだリッチなふくよかさがあって、ガツンと来たり、耳を優しく撫でてくれたりする。そして、それを嫌味なく最後までサラッと聴かせてしまうあたりに、歌の良さやミックスの妙を感じる。アルバムを通した流れも含めて満点! 大盛りなのに一口目から食べ終わるまでずっと美味しい。まるでラーメン二郎なわけ。

中でも僕は“Older”という曲が大好きで、先輩もこの曲が大好きだった。夜中に酔っ払うと先輩はきまって「おい、“Older”かけて」と言ってきて、結局そのままアルバムを何周も聴いた。いつのまにか全部を身体が覚えてしまっている。

個人的な基準になるけれども、音楽って一人で聴きたいものと、誰かと一緒に聴きたいものがあって、きっとBand of Horsesは後者。だから、このアルバムを一緒に聴くのが好きだったんだなと思う。Band of Horsesと出会ってからもう何年も経つし、その先輩と会わなくなってからもう何年も経つけれど、今でもこのアルバムを聴くと一緒に遊んだ夜のことを思い出す。先輩もきっと何処かで時々聴いているのかな? どっちでもいいけれど、空気があって、人がいて、音楽を通して繋がっていく。そういう瞬間のことをBand of HorsesはInfinite Arms(直訳:無数の腕)と名付けたのかもしれない。

 


INFORMATION

EASTOKLAB EASTOKLAB DAIZAWA(2019)

恍惚に満ちたファルセットボイス
ダイナミックなアンサンブルで美しさを描く
退屈を撃ち抜く鮮やかなデビューアルバム完成!

EASTOKLAB
Debut Mini Album『EASTOKLAB』
2019.06.05(Wed)Release
UKDZ-0200 ¥1,700(w/o tax)
DAIZAWA RECORDS/UK.PROJECT inc.

1. Fireworks
2. In Boredom
3. Passage
4. Always
5. New Sunrise
6. Tumble

 

UKFC on the Road 2019
8月22日(木)東京・新木場 STUDIO COAST
開場/開演:13:00/13:35
前売り/当日:4,800円/5,300円(いずれもドリンク代別)
※未就学児入場不可、小学生以上チケット必要
http://ukfc2019.ukproject.com

OFR vol.1
8月31日(土)愛知・名古屋 鶴舞 K.D japon
For Tracy Hyde “New Young City” Release Tour
9月13日(土)大阪・南堀江 SOCORE FACTORY
Misty Coast Japan Tour 2019
9月20日(金)愛知・名古屋 鶴舞 K.D japon
FM802 MINAMI WHEEL 2019
10月12日(土)大阪
cattle『Sweet Dream, Tender Light and Your Memory』release party
10月13日(日)東京・渋谷7th FLOOR
Aaron Rays Japan Tour
10月20日(日)愛知・名古屋 鶴舞 K.D japon