INTERVIEW

武満徹に見出されたギタリスト、鈴木大介が渡辺香津美をゲストに“どですかでん”や委嘱新作をお披露目

武満徹に見出されたギタリスト、鈴木大介が渡辺香津美をゲストに“どですかでん”や委嘱新作をお披露目

武満徹《どですかでん》を渡辺香津美とのデュオで、そして西村朗と渡辺香津美の委嘱新作が初演される!

 2016年12月21日――鈴木大介や渡辺香津美らの出演した公演「没後20年 武満徹の映画音楽」がことの発端だった。この公演の数日前に誕生日を迎えた鈴木にむけて渡辺が、“プレゼントとして何が欲しいのか”と尋ねたのだ。

 「一晩考えて、ギタリストみんなが弾けるような曲を書いてもらおうと、作品をお願いしました。香津美さんには『みんなが得するようなことで本当に良いの?』と言われてしまいましたけどね(笑)」

 クラシックギター奏者を想定した渡辺香津美の独奏曲といえば、山下和仁に献呈された傑作《アストラル・フレイクス》が存在するが、書かれたのは四半世紀以上も前のこと。2019年に渡辺がどんな新作を書き下ろすのか、ギタリストならずとも興味を惹かれる。この新作のお披露目の場として2019年12月18日、ギターに最適な音響をもつ東京文化会館小ホールでのリサイタルが決定。そこで鈴木は長年温め続けた“ある企画”の実現を思いつく。

 「自分が初演や初録音に携わってきた作品が一晩では弾ききれないほどの量になったものですから、そうした曲だけでリサイタルをしたいなとずっと考えていたんです。そもそも委嘱をするようになったのは(ギタリストとして)大先輩の荘村清志さんが武満さんに委嘱したことで素晴らしいギター曲が残されたのをみてきて、僕も次の世代の作曲家の方々に、新作をお願いしないといけないと思うようになったのがきっかけでした」

 武満徹に“今までに聴いたことがないようなギタリスト”と讃えられることで大きな注目を集めた鈴木大介にとって、武満の音楽は何事にも代え難い存在。そんな武満のギター曲が生まれるきっかけを作ってくれた先人のギタリストに感謝すると共に、今度は自分がギタリストとして何をしていかなければならないのかを学んだ……と考えればこそ、今回のプログラムは単なるマニアックな企画ではないことがご理解いただけるだろう。日本人作曲家と鈴木のコラボレーションによって生まれた“日本のクラシックギター作品”を、次世代に引き継いでいくための品評会であり、ショーケースのような演奏会なのだ。加えて……

 「有り難いことに、作曲家の方からもギター曲を書いたから演奏してほしいと、沢山のオファーをいただいてきました。最近では西村朗さんから今年の頭にお電話をいただき、これまで弾いてきたギター作品と新作をあわせて、作品集のレコーディングをして欲しいというお話をいただいたんですね。それをお聴きして、それならその新作をリサイタルで初演させていただけないかということになりました」

 実は渡辺香津美と西村朗は1953年生まれの同い年(!)。ジャズと現代音楽という異なる分野でトップランナーとして活躍し続けてきた両者の新作が、同じ日に初演されるというのも実に興味深い。今後、日本のギター音楽を考える上で、ひとつのメルクマールとなるような公演になるはずだ。

 今回の公演、作曲家の顔ぶれだけをみても実にバラエティ豊かだ。リサイタルの冒頭に予定されるのは、最大の難曲である酒井健治《エーテル幻想》。C、Ab、Eという3つのメジャーコードだけを基礎にしてつくられた作品にもかかわらず、それがジェットコースターのように高速で組み合わされることで万華鏡のような響きがうまれるという作品。そして、ブラジル音楽から強い影響を受けた幻想的なハーモニーを聴かせる伊左治直作品は、実に美しい。日本作曲界の大御所、池辺晋一郎の《ギターは耐え、そして希望し続ける》はアウシュヴィッツを訪れた経験から生まれた痛切な楽曲だ。ゲストとして渡辺香津美が加わったデュオでは、現代音楽でありつつもアドリブが出来る作品として書かれた猿谷紀郎の《虹のあしおと》に、武満徹の映画音楽からは《どですかでん》《ホゼー・トレス》も取り上げられる。普段、現代音楽を聴かないという方でもお楽しみいただけると胸を張って薦められる内容だけに、多くの音楽ファンに是非とも足を運んでいただきたい。

 


鈴木大介 (Daisuke Suzuki)
ギタリスト。横浜生まれ。ギターを市村員章、福田進一、尾尻雅弘の各氏に、作曲を川上哲夫、中島良史の両氏に師事。ほかに、ザルツブルク・ モーツァルテウム音楽院においてエリオット・フィスク、ホアキン・クレルチの両氏に師事。作曲家の武満徹に「かつて聴いたことがないようなギタリスト」と評され、バロックから現代に至るまでの多岐にわたるレパートリーと共に作編曲も手がける演奏活動を行う。最新録音は『The Best 2019』。

 


LIVE INFORMATION

Music Program TOKYO プラチナ・シリーズ
第4回 鈴木大介 ゲスト:渡辺香津美 ~HAPPY BIRTHDAY to / from ミスター・ギタリスト~

○12/18(水)18:30開場/19:00開演
【会場】東京文化会館 小ホール
【出演】鈴木大介(g) ゲスト:渡辺香津美(g)
【曲目】酒井健治:エーテル幻想/武満 徹:森のなかで/伊左治 直:架空映画『熱帯伯爵』のテーマ/池辺晋一郎:ギターは耐え、そして希望し続ける/西村 朗:委嘱新作初演/猿谷紀郎:虹のあしおと[デュオ]/武満 徹:どですかでん[デュオ]/武満 徹:ホゼー・トレス[デュオ]/渡辺香津美:委嘱新作初演
www.t-bunka.jp/stage/1870/

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