オーケストラの経営難、国や自治体の経済的支援、自治体の財政難により減らさられる補助金…どこかで聞いたような、現実でも突き付けられた問題と、殺人事件が見事に融合したミステリー。県は芸術振興のためにオーケストラに助成金を払い続ける必要があるのか? オーケストラはそこに住む住民にとって必要なものなのか? 有名人が発した一言で民意が大きく傾き、住民は情報に右往左往し、権力を持つ議員は思惑に満ちている。そこにラブストーリーも絡み合い複雑に、そしてラストの驚き…。オーケストラが最終公演に選んだ作品の演奏場面は選曲の妙もあり、団員の気持ちが文字からグサグサと刺さる。