〈破壊衝動〉や〈新しさ〉を求め、アグレッシヴなサウンドでリスナーを驚かせた前作『22, A Million』から早3年。稀代の音楽家が新作を上梓した。コラージュ的なジャケや記号的なタイトルが多いことからもわかるように、前作の延長線上にあるような編集感覚、コラージュ感覚を擁しながらも、よりヴァラエティーに富んだ多様な〈歌〉を感じさせる作風に。ジェイムズ・ブレイクなども参加し、万華鏡のような音世界を描き出す“iMi”、クワイア的な昂揚を感じさせる“Naeem”、ビートレスで浮遊感漂うシンセ音のみで歌を紡ぐ“Jelmore”など、大衆性と先進性とのバランスの取り方が見事だ。ファースト・アルバム=冬の季節から始まり、春、夏を経て円熟の秋へ。ひとつのサイクルが完結したのかもしれない。