INTERVIEW

ライド『This Is Not A Safe Place』 進行形のレジェンドが語る、ノスタルジアでは終わらない未知なる旅

ライド『This Is Not A Safe Place』 進行形のレジェンドが語る、ノスタルジアでは終わらない未知なる旅

トレードマークのシューゲイズを下地にした野心的で現代的なクリエイション……懐かしさに引きずられない進行形のレジェンドがいま轟かせるサウンドはこれだ!

未知なる旅

 「再結成したバンドにとっていちばん難しいのは、ノスタルジックで親しみのある旅へと人々を誘うと同時に、これまでやったことのない新たなアプローチの楽曲をレコーディングして、未知なる旅へもリスナーを連れていかなければいけないということ。ノスタルジアだけでは行き止まりになるからね。新鮮なアイデアと新しい活力をグループに吹き込み、常に前進して新しいオーディエンスを獲得するというのが、本当に大事なことなんだ」(マーク・ガードナー)

 前作『Weather Diaries』からおよそ2年ぶり、英国はオックスフォード出身の4人組、ライドのニュー・アルバム『This Is Not A Safe Place』が、早くも我々のもとに届けられた。マーク・ガードナー(ヴォーカル/ギター)、アンディ・ベル(ヴォーカル/ギター)、スティーヴ・ケラルト(ベース)、ローレンス・コルバート(ドラムス)によって80年代末に結成。〈チェーンソーを持ったハウス・オブ・ラヴ〉(NME誌)などと紹介され、その端正なルックスも相まって、日本でもアイドル的な人気を誇った彼らは、深く堕ちていくようなフィードバック・ノイズとメランコリックなメロディー、マークとアンディの美しいハーモニーにより、マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、スロウダイヴらと共に、90年代オリジナル・シューゲイザーの代表格として一世を風靡した。

 いまも名盤との呼び声高いファースト・アルバム『Nowhere』(90年)をリリースして以降も、コンスタントに良質な作品を作り続けていた4人。しかし、次第にメンバー間(特にマークとアンディ)の亀裂が進み、グランジ~ブリットポップ・ブームの吹き荒れるなか、96年に一度は解散してしまう。その後、マイブラを皮切りにチャプターハウスやスロウダイヴ、スワーヴドライヴァー、ラッシュといった〈同期〉たちが軒並み再結成を果たすなか、水面下で着実に関係修復を進めていた彼らは、2014年11月19日に再結成を発表。前作『Tarantula』(96年)から実に21年ぶりとなる通算5枚目のフル・アルバム『Weather Diaries』を2017年にリリースした。本作は、それに続く通算6枚目のフル・アルバムである。

RIDE This Is Not A Safe Place Wichita/BIG NOTHING(2019)

 プロデューサーは、前作に引き続きロンドンを拠点とするDJのエロル・アルカンで、ミックス・エンジニアもお馴染みアラン・モウルダーが手掛けている。ナイン・インチ・ネイルズやマイブラを手掛けたことでも知られるアランとのタッグは、これで3度目となる。ソングライティングの段階からじっくりと時間をかけた前作と違い、今作のレコーディングはかなり手早く行われたという。

 「本当に、すべての作業があっという間だった。それは今作の方向性にも影響している。ヴァラエティーに富んだ前作と比べると、焦点を絞り込んだ作品に仕上がっていると思うよ」(アンディ・ベル)。

 

満足したことがない

 とはいえ冒頭のマークの言葉にもあったように、今作にも〈これぞライド!〉と快哉を叫びたくなるような楽曲と共に、新たな試みに挑戦した楽曲も数多く含まれている。例えば、バンド名を曲名に冠したその名も“R.I.D.E.”は、ギター・オーケストレーションやコーラスなどにマイブラからの影響が強く感じられるインスト曲だ。

 「確かにあの曲は、フェンダー・ジャズマスターのトレモロアームを駆使しているし、ケヴィン・シールズ(マイブラのリーダー)からの影響を指摘するのは理解できるよ。それとオープン・チューニングはサーストン・ムーア(ソニック・ユース)が編み出したものだ。俺はこのアルバムのすべての曲で、このチューニングを用いているよ」(アンディ)。

 「インストはローレンスから出たアイデアだった。そこから全員でさまざまなアイデアをトライしていったんだ。僕自身はマイブラを意識してなかったけど、(クリエイションでの)レーベルメイトだった90年代は、彼らのことが大好きだったよ。人としてもバンドとしても素晴らしかったからね」(マーク)。

 また先行曲“Repetition”は、個人的には中期YMOを想起するニューウェイヴ色の強いアレンジ。歌詞の部分はアンディによれば、ジョン・バージャー(小説家)やブライアン・イーノからの影響について語る、ジャン・ミシェル・バスキアのインタヴューから大きな影響を受けたという。この曲をはじめ、“15 Minutes”や“End Game”など、全体的にポエトリー・リーディングっぽいスタイルの楽曲が増えているのも印象的で、とりわけ静と動を行き来するようなダイナミックな楽曲“15 Minutes”は、〈たった一度の過ちが、その人の一生を左右する〉という強烈なセンテンスを含んでいる。

 「これは、アンディ・ウォーホルの〈15 minutes of fame(15分の名声)〉を引用している。〈未来の世界では、誰でも15分間は有名人になれるだろう〉という有名な予言だ。ここでは、〈訴訟を起こしてバンドの立場を悪くするような真似は、そいつにとっては束の間の名声かもしれないが、死ぬまで後悔するほどの過ちになりかねない〉ということを歌っているんだ」(アンディ)。

 他にも、ポスト・パンク風のソリッドな楽曲“Kill Switch”や、ベックの影響を受けたというヘヴィー・サイケな“Dial Up”など、これまでになかったタイプの楽曲が並ぶ。もちろん“Eternal Recurrence”や“In This Room”など、〈これぞライド!〉と快哉を叫びたくなるような、メランコリックで美しいハーモニーの楽曲もあり、最後まで飽きさせない。結成から30年以上経ったいまも、マークとアンディのソングライティング能力が、衰えぬどころかむしろ円熟味を増して豊かになっているのは驚きだ。

 「僕自身、これまで作ってきたものに満足したことがないんだ。そうなることは恐らく一生ないと思う。アルバムを作り終えるたびに、次の作品こそ自分たちの最高傑作になると信じているし、最高のレコードを作りたくて仕方がない。新しい音楽を聴くのも、作るのも大好きなんだよね。それって、自分が初めてレコードを手にした時の気持ちから何一つ変わってなくて。音楽は僕にとっての生命力であり、執着なんだ」(マーク)。

 今年11月には東京と大阪でのライヴも決まっている彼らが、本作からの楽曲をどんなふうに再現してくれるのか、いまから期待に胸が膨らむ一方だ。

ライドの作品を紹介。

 

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