INTERVIEW

cali≠gari『この雨に撃たれて』 二重の記念イヤーを彩る3つの雨模様。強い〈死に様〉を映した新曲と、あの復活作の新装盤が登場!

cali≠gari『この雨に撃たれて』 二重の記念イヤーを彩る3つの雨模様。強い〈死に様〉を映した新曲と、あの復活作の新装盤が登場!

二重のアニヴァーサリー・イヤーを彩る3つの雨模様。〈死に様〉から転じた強さをドライヴさせる新曲とあの復活作の新装盤で、バンドは次なるフェイズへ——

 結成25周年、再結成から10周年というダブルのアニヴァーサリー・イヤーに突入しているcali≠gariが、古巣のビクターよりニューEP『この雨に撃たれて』をリリースする。〈雨三部作〉と銘打たれた同作には、新曲である表題曲と彼らの代表曲とも言えるライヴの定番曲“冷たい雨”、再結成時の日本武道館公演の際に配布された“続、冷たい雨”を収録。さらには10年前に発表されたアルバム『10』に再ミックスを施した〈Rebuild〉盤が付属の〈夕立盤〉と、新曲に関する映像をまとめたDVDが付属の〈秋雨盤〉の2形態が用意され、記念イヤーに相応しい一枚となっている。

cali≠gari この雨に撃たれて ビクター(2019)

 

――取材は昨年末の『14』以来ですが、今回は〈7年ぶり3回目のビクター復帰〉ということで……。

桜井青(ギター)「甲子園か、ってね(笑)」

――(笑)。かつ、現在のcali≠gariは復活から10周年と、結成25周年が重なっていて。

桜井「そう、今回はホントに重なっちゃって。確か、『14』のレコーディングのときだよね? 〈10周年だし何かない?〉って二人に訊いたら、研次郎君(村井研次郎、ベース)が『10』の話をしてきたのって」

村井「俺、周年探しをするのが得意なんですよ。長くバンドをやってると何かしらあるじゃないですか。ちなみに来年は石井秀仁(ヴォーカル)が加入して20周年。そういうのを探してたなかで、2019年は『10』を出して10年だよって」

――その『10』を今回は〈Rebuild〉という形で再ミックス/新録されていて。

石井「そう。まずリミックスするっていうことになったから、それだけじゃおもしろくないし、どうせなら録り直そうよって」

桜井「まずは研次郎君の意見があって、そこに石井さんの意見が加わって、録り直しとリミックスをやることになって。結果、やり直して良かった。前の『10』は、研次郎君が音の迫力みたいな部分でちょっと納得していないところがあるっていうことは聞いてたんですね。オリジナル盤は当時のエンジニアの趣向もあって、ドラムにゲート(リヴァーブ)をかけて、80年代の音にあえて近付けていったっていうのがあるんですよ。まあ、あれはあれで気に入ってるんだけれど、趣味嗜好の問題ですよね。研次郎君的にはそこがちょっと気になってたんだろうし、僕もcali≠gariの音にしては綺麗すぎかな?ってのがあったし。それなら10年経ってるし、せっかくだからやり直そうってなったら、石井さんからさっきの意見が出て、じゃあ、録り直そうかって。それで実際に新しく出来上がった『10』っていうのは、やっぱり違うんですよ(笑)。びっくりするぐらい違う」

――いやもう明確に違いました。まず、さっきおっしゃっていた音の迫力が……。

桜井「全然違いますよね。ああ、これがcali≠gariだ……って感じ」

――今回のヴァージョンは、楽曲ごとのカラーがよりヴィヴィッドに際立っていて。録り直しもあるということですが、コーラスやシンセの音色も少し差し替わってます?

石井「“―踏―”の同期は作り直してます」

桜井「“電気睡蓮”のキーは半音上がって」

――アレンジが大幅に変わってるわけでもないのに、ミックスを変えると聴いた感触もこんなに変わるのかと。

桜井「やっぱりドラムの音が全然違いますよね。もっと締まった音になったっていうか。前のゲートはあたりまえだけど、全体的にモワッとしてましたから。今回はロック感が増してますよね。語彙力がなくて申し訳ないんですけど(笑)」

――(笑)再ミックスにあたってのオーダーはあったんですか?

桜井「録り直しに行ってたので、何か違うっていうギターは弾き直したりしましたけど、ミックスは特に」

――録り直しは部分的なんですね。

桜井「もちろん。基本的に素材はそのまま使ってて。じゃないとリミックスじゃなくて、新録になっちゃう。完全に変わってるのは……“―踏―”は全部新録ですね」

石井「“スクールゾーン”も全部録り直してますね。あ、ベースは弾いてないか。ドラムは録ってるけど」

村井「ドラムが変わってるから、ベースも調整してる」

石井「歌を録り直したのは、“―踏―”と“スクールゾーン”と“電気睡蓮”。“―踏―”と“スクールゾーン”はシングルじゃないですか。いちばんわかりやすいんで、録り直すのであればそこからだろうって。で、“電気睡蓮”はライヴでやってるのとキーが違ってたし、ヴォーカルもなんでオートチューンかけてたのかわかんない感じだったんで(笑)、普通に歌って」

――あとはエンジニアさんにお任せして。

桜井「はい、白石(元久)さんに」

 

〈死に方〉も選べる

――そんな感じで10周年記念の『10』の再ミックス盤がまずありまして。

桜井「それを出していいのかっていうのを、ビクターの以前の担当の方に相談したんです。そしたら、出すことに関しては問題ないと。じゃあ、どういうふうに出すかっていうところで、せっかく10周年だし、またビクターで出すのもいいよねって話になって。とはいえ、7年ぶりに戻って『10』だけ出すのはどうなんだろうと(笑)。やっぱり新曲も付けたいってことで、〈こういう曲があるんですけど〉って話をして、今回の形態になったんですよ」

――“この雨に撃たれて”はもともとあった曲なんですね。

桜井「そうですね。でも、1曲だけだと寂しいし、リード曲が雨の歌だから、じゃあ、ここいらで“冷たい雨”と“続、冷たい雨”もお色直ししちゃえ、みたいな。“続、冷たい雨”は武道館公演のときに配布した曲なので、いい機会かなって」

――〈雨三部作〉ということですが、“この雨に撃たれて”は他の2曲と比べてずいぶん毛色が異なるように思います。

桜井「そう、雨の歌なので〈三部作〉としているんですけど、話としては全然繋がりはないんです。表題曲は他の2曲に比べてテーマ的に強すぎるので」

――これは〈ダーク〉をテーマとしていた『13』の頃に作られていた曲だとか。

桜井「そうですね。『13』のときに作っていて入れられなかった曲です」

――サウンドとしては青さんお得意のビート・パンク的な楽曲で。ただ、歌詞は青さんにしては珍しく一人称が〈俺〉なんですよね。“ミッドナイト!ミッドナイト!ミッドナイト!”(2013年)以来だと思うんですけど。

桜井「まあ、〈僕〉って感じの曲じゃねえなって。『13』のときに入れられなかった理由も、まず入れ場所がわからないっていうね。テーマ的にも若干重くて、比較的プライヴェートな話になってしまうんですけれど、僕、この3年で友人が4人ほど亡くなりまして。余命宣告されてパニックになるかと思いきや、死の間際まで笑い飛ばして生きててね、〈強えな、みんな〉って思ったんですよ。死生観を『14』で扱ったきっかけは実はこのへんからきてて、友達を失ったことを受け入れられたから作れたんでしょうね。でも、『13』の制作中はそういったことを聞かされて……死を迎え入れてる人と会話するって、本当に何を話していいかわからなくて……で、思いを曲にしてみたんですよ。そしたら自分のエゴというか、この曲に対する気持ちが強すぎて、やっぱり入れ場所がわからないって感じだったんです。で、リズムまで録っていたのにお蔵入りと。その後も曲への思いが強すぎて『14』に収録するのも見送ることに……かといって発表しないのももったいないし、このタイミングかな、シングルだったらいいかな、って。この死生観を、もう死ぬことが決定付けられてるのに、みんな強かった、みんなすごい生き様だったってことをどうしても言葉に残しておきたい、みたいなね」

――〈生き様〉というよりは〈死に様〉が感じられる歌詞ですね。

桜井「〈生き方〉も選べるけど、〈死に方〉も選べるよねっていう」

――そういう意味でも、他の2曲とはまったく毛色が異なりますね。

桜井「その2曲は言っちゃえば、当時の若造の失恋から始まる、〈何もかもうまくいかねえよ、バカヤロー〉みたいな、そういう流れで作ってた曲なので完全に違いますね。ただ、“この雨に撃たれて”もね……最初は応援のつもりで作った曲だったからね……もうみんな死んでしまったってところがなんともね……(苦笑)。結局、弔いの曲になっちゃったなって感じ。でもまあ、強い曲にはなったかなって。死ぬだなんだは置いといて、やっぱりね、生きるしかねえよっていう」

――そして、“冷たい雨”と“続、冷たい雨”は再録なんですよね。

桜井「そう。10年前の“続、冷たい雨”のほうですら、生のデータを聴いたらシャレにならないぐらいヤバくて(笑)」

――ギター・ソロもありますし。

桜井「白石さんに、〈青さん、それダメ。上手く弾こうとしてるでしょ〉って言われたり(笑)。でも、実際白石さんがOKを出したテイクって、確かにもう1回弾けって言われたら難しいなっていうものなんですよね」

――ベースのアレンジいかがです?

桜井「ベースはよっぽどのことがない限りお任せですよ。あと、僕は秦野(猛行、cali≠gariのサポート・キーボーディスト)さんによくコード・チェックをしてもらってるんで、他のところは研次郎君と秦野さんでお話してもらってます」

村井「秦野さんからはたまにLineがきますね。〈ここどうなってるの?〉とか、〈ここはこうしようよ〉とか。この曲に限らず、ここ5年ぐらいはそういうやり取りをしてますね。今回録り直した2曲に関しては、ライヴで何回も弾いてるし、特に考えることもなかったですけど」

石井「前の“続、冷たい雨”は、〈つっめたい♪雨の♪あとで♪〉のところがちょっと気持ち悪かったよね」

村井「あそこも直ってた」

石井「でもなんか、やっぱり正解がわからない感じだよね。もっとやれる気がする」

桜井「大サビの〈♪つっめたい~♪〉のところがとても難しいんですよ」

石井「ものすごいテクニカルな演奏じゃないとね(笑)。あんまりこの手のバンドではないアレンジというか。だから気持ち悪いっていうんじゃないな。ああ、難しいなって感じ。完璧だぜ、っていうふうにはなかなかならないなっていう」

 

価値観が覆って

――そんな、“続、冷たい雨”が発表された復活時からも10年が経って。この間で変わったことはありますか?

石井「10年って、全部が変わるぐらいの時間ですよね。それまでにはなかった経験をして、いろんな価値観が覆ったり」

桜井「ゲーム音楽を作ったり、個人で事務所を立ち上げたりもしてましたもんね」

石井「昔はたぶん、自分が作った音楽で収入を得て、それで生きている実感がなかったんですよ。それが年を経るとだんだん重みを増すっていうか、そういう責任感は音楽性にも反映されてると思います。で、アルバムを出すごとに抜け殻になるみたいな」

桜井「僕はcali≠gariの作品を作ったら、もう次のcali≠gariの曲を作りたくなっちゃうんですよ。昔とは違って、よりプライヴェートに近いような感じのものはヘクトウに持ってっちゃってますけど」

石井「もう、1回あるアイデアをやってしまうと、次へのプレッシャーみたいなのが増すんですよね。写真撮影とかもそうなんですよ。どういう写真を撮るかは青さんが決めるけど、洋服や髪型はどうしようとかあるじゃないですか。それが思い付かないっていうんじゃなくて、いろんなことをやりすぎてるから、そことは違うところで自分がいいと思えるものはなかなか難しくなってくるなっていう」

――このヒッピー風の研次郎さんは……。

桜井「これはヘアメイクさんの家に石井さんと自分と集まってたとき、『ヴォーグ』のなかにこういう髪型があって、研次郎君に合うよね、って」

村井「いいですよね、これ」

石井「俺としてはいままでで最高だと思ってる」

――ちなみに、写真全体のテーマは?

桜井「……まあ、結果的に石井さんの目で見てそう言ってくれるんならいいかなっていう感じの〈グッチ〉」。

石井「〈『ヴォーグ』感〉〈グッチ感〉がありますよね。青さんはもともとそういうイメージじゃなかったっぽいけど」

桜井「そもそもはホテルのスウィートとかでラグジュアリー感が全開のものを撮りたかったんですけど、まあ、こういう感じに。ただ、想定していたものではないけど物凄くcali≠gariな写真になったので、流石は小松(陽祐)さんだなって」

――で、作品の話に戻すと〈秋雨盤〉には表題曲の〈店内BGM篇〉が収録されていて。これは完全にエレポップ化した……。

桜井「エレポップ化っていうか、〈呼び込み君〉ですよ。日本全国、いろんな場所のスーパーで使われてるアレです」

村井「俺は毎日聴いてる」

――普通にスーパーには行きますけど、聴き覚えはなかったです。

桜井「スーパーに行くと、著作権どうなってるの?って音楽があるじゃないですか。〈これ、お琴の音で弾いてるけど“TSUNAMI”だよね?〉みたいなのとか。要はそれです。それを〈呼び込み君〉風に作ってみようと」

――ずいぶん可愛らしくなりましたよね。

桜井「可愛いですよね(笑)? 何となく聴いていられませんか? これ」

――〈ロングver.〉は約30分ありますし。

桜井「結構実用的なんですよ」

――ということで今回の新作について伺いましたが、今後もビクターからリリースを? 何と言ってもアニヴァーサリー・イヤーですし……あれ? その期間はいつからいつまででしたっけ?

桜井「結成25周年は去年の9月11日から今年の9月11日までで、そこに再結成10周年が重なってるんです。そっちは今年の6月から来年の6月までなんですけど、くどいから9月まででいいです、って(笑)。でも、がんばってビクターで出したいですね、アルバムを。どうなのかな~?って感じです(と言ってビクターの担当者を見る)」

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