この「イタリア」は凄い。当時多くの芸術家たちが夢みた憧れの地が、油彩でも水彩でも写真でもなく、柔らかな自然光とともに目の前に浮かんでくるような演奏である。西脇&デア・リング東京の特徴は、「空間力」の重視=自分たちの発した音が最終的にホールでどのように響くのかを重視する姿勢にある。そのため「イタリア」においては、奏者は通常の配置とは全く異なる位置で立奏し、楽器ごとのグルーピングもないという。さらに面白いのは目で見てではなく、耳で聴いて合わせるため、各人は指揮者の方を向く必要もないというのだ。配置の工夫が奏者の意識を変え、未聞のサウンドを生むという注目すべき例だろう。