新しい出会いも発見も! 老若男女が楽しめるケルト音楽の祭典

 今年も、ケルティック・クリスマスが開催される。いまや、冬の風物詩となり、毎年、このイベントに足を運ばなければ年が越せないというか、大事な忘れ物をしたようで落ち着かないくらいだ。少なくとも、ぼくにとっては、1年間無事に過ごせたことへの感謝と、友人や知人との久々の再会への期待をも胸に、慌ただしい師走の下町に足を運ぶようになってから、もう随分経つ。

 ケルティックと呼ばれるだけあって、アイルランドやスコットランド、ウェールズやコーンウォールといったブリテン諸島、フランスのブルターニュやスペインのガルシア、カナダやアメリカの一部等々に根付くケルト音楽の祭典だ。遠く歴史の彼方から脈々と引き継がれるケルト文化に触れ、それらの音楽を通じて先人たちの知恵を、神秘を、浪漫を感じる貴重なときでもある。

 だからと言って、気取ったり、畏まったりするところは一切なく、いつも、親し気な、気の置けない雰囲気が楽しめる。故郷に帰ったときのような懐かしさや、ささやかな癒しの暖をいただくことも多い。伝統音楽に限らず、老若男女が、普段の暮らしの中でこれほど身近に、音楽を楽しんでいる人たちはいないのではないかとさえ思えるくらいだ。と同時に、若くて、新しい才気と出会える素晴らしい機会でもある。

 今年は、3組が来日する。アイルランドからは、すっかりお馴染みになったシャロン・シャノン、一昨年の来日公演で一気にファンを増やしたウイ・バンジョー・スリー、そして、今回初参加となるスコットランドのタリスク、いずれも、弾けるようなライヴ・パフォーマンスが評判の人たちだ。もちろん、カナダからのクリスティン・カーも、小気味の良いステップ・ダンスを楽しませてくれることだろう。

 シャロン・シャノンは、人気、実力ともにアイルランドでは群を抜くアコーディオン奏者で、ウォーター・ボーイズからジャクソン・ブラウンまで交流も幅広い。2008年の“ゴールウェイ・ガール”の大ヒットで、もはやアイルランドの国民的な人気を誇るまでになったが、人懐っこい、飛び切りの笑顔は相変わらずだ。

 ウイ・バンジョー・スリーは、その名の通りバンジョーを中心に、ギター、フィドル、マンドリンと弦楽器を駆使し、アイリッシュ・トラッドとカントリーを自由奔放に躍らせる。アイルランドのパンチ・プラザーズと評する声もある。そして、初めて我々の前に姿をみせるのが、タリスクだ。コンサーティーナを溌溂と操るモーセン・アミニを中心にしたスコットランドの3人組、2014年の結成以来めきめきと評価をえて、フォーク、ワールドミュージックのメディアでは最も旬と騒がれている。

 こんな3組によるライヴだ。きっと、生気に満ちた、躍動感みなぎる音楽で会場は満ちあふれることだろう。身も心も弾んで、冬の寒さも忘れ、ライヴの楽しさを存分に実感させてくれるはずだ。そういったライヴはもちろんだが、当日の会場の一角では映画が公開されたり、出演者たちの公開インタヴューが行われたり、バラエティに富んだ企画が盛りだくさん用意されているのも、このケルティック・クリスマスの魅力だ。その余韻を胸に、東京下町での美味しいお酒も、ぼくには欠かせぬ楽しみでもある。

 


LIVE INFORMATION

冬のケルト音楽フェスCeltic Christmas 2019
〈ケルティック・クリスマス〉

2019年12月8日(日)16:30 開場/17:15 開演
会場:すみだトリフォニーホール 大ホール
出演: シャロン・シャノン(アイルランド)/ウィ・バンジョー・スリー(アイルランド)/タリスク(スコットランド)/クリスティン・カー(カナダ)
http://plankton.co.jp/xmas19/