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カインドネス『Something Like A War』 深化したディスコ・アンサンブルを聴かせる〈最後のアルバム〉

Photo by Michele Yong

深化したディスコ・アンサンブルを聴かせる〈最後のアルバム〉

 英国出身のアダム・ベインブリッジによるソロ・プロジェクト、カインドネスのサード・アルバムがリリースされた。シンガー/プロデューサー/作曲家/映像作家と多方面で活躍するカインドネスは、2012年にデビュー作『World, You Need a Change of Mind』を、今年6月に不慮の事故で亡くなったフィリップ・ズダールとの共同プロデュースのもとに発表。その2年後にはセカンド・アルバム『Otherness』をリリース、多数のゲストを引き入れてスケールを拡大するとともに、前作とは異なる演奏感溢れるアンサンブルへと舵を切り、その評価を確固たるものとした。

KINDNESS Something Like A War Female Energy/BEAT(2019)

 その後はブラッド・オレンジやソランジュ、ロビンなどのプロデュースを手がけてきたこともあり、5年の歳月を経て待望の3枚めのアルバムがリリースされたことになる。今作ではロビンをはじめジャズミン・サリヴァンやセイナボ・セイら多数のシンガーが参加しており、楽曲ごとに異なるヴォイスがありながらもアルバムとして統一されたサウンドを保っているのは、プロデュース・ワークを兼ねてきたカインドネスであればこそ実現できた試みだと言っていいだろう。さらに前作のアンサンブル・サウンドを踏襲し、その先へと進み出した内容にもなっている。

 たとえばピアノによるジャジーかつミニマルなコード・ワーク、またはディスコ・サウンドを基調にR&Bの揺らぎを取り入れたドラミング、あるいは節々に挿入されるホーン・セクションなどは、あたかも目の前でセッションを繰り広げているかのような躍動感を伝えてくれる。それは現代のジャズともどこか重なるところがあるようにも思う。そのような質感はおそらく、アルバム全体のミックスを担当したフィリップ・ズダールとの二度と行うことのできない共同作業によって生まれたものでもあるはずだ。そうした〈最後のアルバム〉である今作を、カインドネスはズダールに捧げている。

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