デビュー4年目を迎えた今年最初のリリースは、何気ない日常の幸せに想いを捧げた圧倒的なミディアム・バラード。この切なくも力強い願いはどこまで届いていく?

この3年の手応え

 およそ8か月ぶりとなるUruのニュー・シングル“願い”が届けられた。前作“プロローグ”は、TVドラマ「中学聖日記」の主題歌として本編のクライマックス・シーンを大いに盛り上げた曲だったが、その余波はドラマの視聴者を越えたところにまで届き、彼女にとって過去最高のチャート・アクションを、いや、それ以上に〈届いている〉印象を残す曲になった。

 「ドラマの主題歌にさせていただいたこともあって、いままで私を知らなかった方々にも名前を知ってもらえたなという嬉しさがすごくありました。バラードかアップテンポなのか、その間くらいの曲だと自分では思っているのですが、ギターの印象的なフレーズだったり、いままでの私の楽曲と比べると音数もドラムの刻み方も〈新しいUru〉だったと思うので、そういった部分は今後の曲作りに活かしていきたいなと思いました」。

 今年3月には、自身最大規模のワンマン公演をTOKYO DOME CITY HALLで開催。

 「お客さんとして行ったことのある会場だったので、あのとき自分が見ていたステージに自分が立っているんだと思うとすごく不思議な感覚でしたね。ステージからの景色も、客席がせり上がって丸く囲まれたような空間で、思っていたよりもホーム感があるというか、皆さんとの距離が近いなと感じました。お客さんも一曲一曲拍手をしてくださったり、相槌を打ってくださったり、すごく温かさを感じられましたし、そういうところでもいつもより皆さんを近くに感じることができました」。

 そう振り返る大きなステージを経て、6月にはメジャー・デビューから丸3年を迎えたUru。かつてシアトル・マリナーズのイチローは〈3年続けて結果を残してようやく本当のメジャー〉と言っていた……と、突飛なことを持ち出しつつ、彼女自身のこの〈3年〉の手応えを訊いてみた。

 「手応えは……正直あまりないですが、でも、SNSなどで私の楽曲をカヴァーしてくださっていたりするのを見ると、あぁ、浸透してくれているんだなと嬉しくなりますね。私もイチロー選手のインタヴューを拝見したことがあるのですが、何かの折に〈逃げられるなら逃げ出したいとほぼ毎日思っていた〉というようなことを仰っていて、その言葉が自分と重なり、あのイチロー選手でもそんなふうに思うのかと思って安心しました。そう思うのは、真正面からやるべきことに向き合ってる証拠なんだと」。

 

人と人との繋がり

 さて、ニュー・シングルの“願い”。表題曲は、7月から放送中のTVアニメ「グランベルム」のエンディング・テーマとしてすでにオンエア中だが、歌詞を編むうえで、この作品のどんなところにもっともインスパイアされたのだろうか。

Uru 願い ソニー(2019)

 「ただの少女たちの戦いではなくて、それぞれ〈なぜ戦わなければならないのか〉という背景というか理由があって、その理由がそれぞれ切ないなと思いました。ズキッとするセリフがあったりして、この作品の鬩ぎ合うキシキシした世界観というか色というかが何となく見えてきて、それで冒頭に〈灰色〉というワードを入れました。勝つために騙したり傷つけ合ったり、世界がひしめき合っている感じを歌詞に反映させたかったのと、強い気持ちで挑みつつも中身はみんな孤独で自分の弱さとも戦っている、という相反する気持ちも表現したかったです。あとは、そばにいてくれる人との繋がりの深さ。〈ボロボロこぼしながら〉という言葉はいちばん最初に思いつきました。自分自身の体験が具体的な言葉として織り込まれているわけではないですが、日常を悪い方向に逸脱したときに日常が如何に幸せだったかを感じたことはあるので、それは自然と盛り込まれているかもしれません」。

 デリケートに描かれていく心象風景に寄り添うのは、ミディアムテンポの温かく包容力のあるメロディー。今回、作曲/編曲を手掛けたのは、H.Aoba、N.Sasakiという初顔合わせの作家陣だ。

 「〈サビ感〉がすごく印象的だなと思いました。サビに入る前の〈軋む〉の部分など、これから如何にもサビがくるぞ!という感じでワクワクします。歌っていても、〈軋む〉から意気込んで次の〈世界に〉の〈か〉にアクセントと張りを出せるし伸ばせるので、とても気持ちがいいです(笑)。今回は、カップリングの“Scenery”も初めてご一緒するrionosさんが編曲をしてくださったんですけど、rionosさんのアレンジを初めて聴いたときの鳥肌感と、顎が外れそうな感覚は絶対忘れないですし、いまでも毎回大サビ後の弦の盛り上がりに鳥肌が立ちます。こんな壮大なアレンジができる方なのでどんな方なのだろうと思ってご挨拶させていただいたら、なんとも可愛らしくてほんわかと柔らかい雰囲気の方で、ギャップがすごい!と思いました(笑)」。

 その“Scenery”は、自身が詞曲を書いたバラード・ナンバーだ。

 「テーマは〈人と人との繋がり〉で、“願い”という曲のタイム感からもう少し時間が経って、もっともっと相手との繋がりを深めたタイミングの曲かなと思っています。いろんなことを2人で乗り越えてきたからこそ、相手のことを知ることができるし、信頼もできるし、何かあるならば助けたい、そばにいたいという、相手に対する〈愛情〉のようなものを感じてもらえたらいいなと思います」。

 

次のステージへ向かって

 カップリングでは毎回恒例となっているカヴァー曲。今回取り上げているのは、King Gnuの“白日”。ピアノと声を軸にしたUruらしいシンプルなアレンジながらも、オリジナルが持っているグルーヴ感もしっかりと活きている素敵な仕上がりで。

 「もともと好きな曲でずっと聴いていたのもあるのですが、周りのスタッフさんからの勧めもあって一度歌ってみたところ、〈あっ……歌ってみたい〉となって決定しました。ただ、やはり想像通り難しくて、ブレスをする位置をまず探りました(笑)。あと、King Gnuの井口さんはサラッと歌われているので感じなかったのですが、音域がかなり広くて、そこもとても難しかったです。リズム感というか〈縦〉を合わせながら歌うのもものすごく難しかったんですけど、それと同じくらい歌っていて楽しかったです」。

 さらに、昨年9月のシングル“remember”のセルフ・カヴァーを収録。こちらも毎回恒例で、〈ピアノと歌だけ〉という、彼女の原点に立ち帰ってのスタイルで聴かせるもの……と、シングルながら今回も内容の濃い一枚になった“願い”。“remember”“プロローグ”“願い”ときて、2017年12月以来のアルバムもそろそろ、なんていう声も聞こえてきそうだが、散歩のなかで詞や曲作りのアイデアを得たりすることも多いということで、最近はどんな出来事にときめいたり幸せを感じているのだろうか?

 「最近は暑すぎて散歩をしてもすぐに戻ってきてしまいますが、寝る前の読書の時間とかアイスを食べる瞬間がすごく至福の時間です(笑)。曲作りはいろいろと取り組んでいて、この前は初めて夏らしい曲を作ってみました。少し時間を置いて自分で聴いてみたら、Uruに夏のイメージはないんだろうな……とちょっと笑ってしまいましたが、それはそれでいつか皆さんに聴いてほしいですし、これからもたくさんの方に聴いてもらえるような曲を作りたいと思っています」。

 来年2020年はうるう年。さらに多くの人たちがUruの歌で心潤う〈Uru年〉になることを願って、2月29日──うるう年のうるう日に東京・中野サンプラザで開催されるワンマン公演、さらに3月に控える名阪でのライヴにも期待したい。

 「Uruがどんなアーティストなのか、ライヴに来てもらってもっと知ってもらえたらなと思います。MCも含めて直接お伝えすることで、たぶん想像と違うところもいくつかあるはずですので、皆さんにお会いできる日を楽しみにしています」。

Uruの近作。