INTERVIEW

FIVE NEW OLD『Emulsification』 さらに開かれたポップセンスを手に、〈矛盾〉を楽しむことで生み出された新アルバム

FIVE NEW OLD『Emulsification』 さらに開かれたポップセンスを手に、〈矛盾〉を楽しむことで生み出された新アルバム

整体師のような(!?)新メンバーを迎えたことで、より開かれたポップセンスを手にした4人。日常に気付きをもたらすサウンドは、エキサイティングな〈矛盾〉に満ちている!

 去年の7月にベースのSHUNを正式メンバーに迎え、ふたたび4人体制となったFIVE NEW OLD。メジャーなJ-Popアーティストのアレンジも手掛けるSHUNの加入により、3月に発表されたEP『What's Gonna Be?』は、ファンク、ソウル、ゴスペル、ハウスなどを自在に掛け合わせ、熱量のあるバンド・サウンドで鳴らすという基本はそのままながら、これまで以上に開かれた、ポップな仕上がりが印象的だった。

 「もともと引き算の音楽を得意としていたんですけど、SHUNくんが加わって、ちょっとゴージャスに、華やかになったと思います。あとは、メンバーだけにしかわからない共通言語ができてしまっていたり、いろんな意味で歪んでた部分を、SHUNくんが整えてくれたので……整体師みたいな人です(笑)」(HAYATO、ドラムス)。

FIVE NEW OLD Emulsification トイズファクトリー(2019)

 約1年半ぶりとなるニュー・アルバムのタイトルは、〈本来混ざり合わないものを溶け合わせるための媒介操作〉を意味する〈乳化〉の英訳『Emulsification』。ある種の〈矛盾〉を楽しむことによって生まれた、幅の広い13曲が収録されている。

 「今回、アレンジは他のメンバーに任せて、曲を書く僕自身は〈聴いてくれる人に何を届けたいのか〉にフォーカスしました。種は自分が蒔くけど、それがどんな芽を出して、どんな花を咲かせるのかは、ホントにわからなかった。でも、そういう制作が楽しくて」(HIROSHI、ヴォーカル/ギター)。

 「1曲目の“Fast Car”は、僕らのもともと持ってるオルタナな部分が出てるというか、〈ポスト・パンク調のエッジーさがあるけどしっかりポップス〉みたいなのはやってみたくて」(WATARU、ギター/キーボード)。

 「“Fast Car”というタイトル通り、ゴールに向かってみんなで一気に走って、気持ちのいいドライヴ感が出たなって」(SHUN)。

 アジア諸国でライヴをする機会が増え、言語を介さない直接的なコミュニケーションを追求した結果、多彩なリズム・パターンの曲が収録されているのも本作の特徴。その象徴がマーチングのリズムを用いた“Keep On Marching”だ。

 「パニック・アット・ザ・ディスコの“High Hopes”とか、テイラー・スウィフトとブレンドン・ユーリーの“Me!”みたいに、ドラムラインが醸し出す結束力、音楽の持ってる〈繋ぐ力〉を僕たちも取り入れたくて。あと、この曲を作ったときにちょうど茨城のり子さんの詩集を読んでて、英語で歌ってるのに1か所だけ昭和・大正的な日本語を歌うっていう、これもある種の〈乳化〉かなって」(HIROSHI)。

 「マーチングはルーディメンツの基礎でもあるので、ドラマーとしてちゃんと自分で叩きたくて、生感を出すためにも、実際にマーチング・スネアを使いました」(HAYATO)。

 同世代のゲストとして、“Magic”はLUCKY TAPESの高橋海、“Same Old Th­­i­ng”は踊Foot WorksのTonde­nheyがバンドと共同でアレンジを担当。意外なところでは、“Pinball”にレベッカと活動を共にしたヴェテラン・ギタリストである是永巧一の名前も。

 「海くんとは好きなものが似てるので、〈打ち込みベースなんだけど、サビにホーンが入るとエイミー・ワインハウスっぽいよね〉とか言いながら、楽しくやれました。後半のトラップの部分からは彼のクリエイティヴの高さを感じますね」(HIROSHI)。

 「“Same Old Thing”はもともと“By Your Side”とか“Ghost In My Place”みたいなコードワークにソウルフルなメロディーが乗ってたんですけど、リミックスみたいな感じで返ってきて。FIVE NEW OLDらしい曲が、ある意味一番らしくない、おもしろい曲になりました」(SHUN)。

 「是永さんは僕のギターの師匠で、ご近所さんなんです(笑)。〈乳化〉という意味でも、80年代の録音方法を取り入れてみたくて、当時ナイル・ロジャースがやってたような、アンプではなく、宅に直で挿して録るカッティングを試せました」(WATARU)。

 〈聴いてくれる人に何を届けたいのか〉という命題に向き合ったHIROSHIの歌詞は、これまで以上に彼自身の内面が表れていて、〈孤独〉というキーワードが浮かび上がる。しかし、深い思索の先で、バンドがかねてより掲げる〈One More Drip=日常に彩りを〉というテーマが、改めて浮かび上がってきた。

 「〈乳化〉って、溶け合ってひとつになる過程では必ず濁って見えなくなるときがあって、そういうときに一筋の光をどこに見い出すのかを考えると、やっぱりできることは自分の日常を大切に生きることで。音楽だけで180度何かがガラッと変わることはないと思うけど、日常の中の小さな気付きがたくさんの人に広がることによって、社会は緩やかに変わって、もっと良くなっていくんじゃないかと思うんですよね」(HIROSHI)。

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