Photo by Makoto Ebi

グレッチェン・パーラトのプロデュースによるデビューから7年、満を持してセカンドが発売に!

 ローレン・デスバーグが約3年ぶりに来日した。僕が観たセットは、デビューEP『サイドウェイズ』の冒頭を飾る“ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド”でスタート。この曲のような〈グレイト・アメリカン・ソングブック〉または〈スタンダード〉と呼ばれる曲は、ミュージカルや映画のために作られたものが多い。ライヴにおけるローレンのストーリーを語りかけるような歌には、ミュージカルからの影響を感じた。

 「小~中学生の頃はミュージカルを学んでいました。でも、ロサンゼルスの芸術高校時代(LACHSA)に〈ミュージカル・シアター〉ではなく、〈音楽〉のコースのジャズ・ヴォーカルを選択しました。キャバレー・ミュージックのように両方の要素を併せ持つスタイルの音楽もあるのに、私の高校ではジャズを選んでしまうと、ミュージカル・シアターの授業は受けられない。その点はちょっとおかしいなと思う」

LAUREN DESBERG 『Out For Delivery』 Lauren Desberg/コアポート(2019)

 ローレンは快活な口調で、淀みなく喋る。セカンド・アルバムにあたる新作『アウト・フォー・デリバリー』は、ファースト・アルバムとは逆にオリジナル曲が主体だが、自分の音楽に対する見解も明快だ。

 「私の自作曲のメロディは、グレイト・アメリカン・ソングブック的と自覚している。子供の頃にそういう類の音楽を学んでいたから。でも、ジャズにしては、メロディはキャッチー。私はサラ・ヴォーンが好きだけど、その一方で、スパイス・ガールズも好き。だから私らしいメロディだと自分で思う。私にはR&B系のノリはあまり合わないし、韻を踏んだ歌詞を簡単に書くこともできない。ただし、メロディは私の得意分野で、音楽の方向性も自分で決めています」

 ローレンはプロのフォトグラファーとしても活動しているが、「写真で稼いだお金を、音楽に使う」がモットーとのこと。ちなみに先日、彼女はヴォーカルの師にあたるグレッチェン・パーラトの新しいアーティスト写真を撮影したそうだ。こんなローレンらしく、新作はバーのような雰囲気を伝える曲があったり、テープの逆回転の音や電話のプッシュ音が効果音としてサンプリングされていたりと、曲ごとに違ったシーンが浮かんでくるような映像的なアルバムだ。しかもアルバムとしてのトータル性に重きが置かれている。

 「ええ、単なる曲の寄せ集めではなく、昔ながらの〈アルバム〉を意識して作りました。私としては、たとえばディナー・パーティーでBGMとして流しっぱなしにして欲しい。もしそのときにかけられていたアルバムが起伏に乏しく退屈なものだったら、途中で別のものに変えられちゃうでしょ。だからこの新作が最初から最後までかけられとしたら、私の狙い通りです」