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「作曲家への尊敬の念を示したいと思ってアルバムを作っています」

 ハンガリーのピアニスト、ガーボル・ファルカシュは、2009年に第6回国際フランツ・リスト国際ピアノコンクール(ワイマール)に優勝。そのあとも多くのコンクールに入賞し、ヨーロッパ各地でリサイタル、音楽祭への参加など盛んな演奏活動、さらには東京音楽大学で後進の指導にあたっている。録音にも積極的で、これまでにもリストやシューマンの作品を収めたディスクをリリースしてきたが、今回はショパンのバラードと即興曲に取り組んだ。

GABOR FARKAS ショパン: バラード&即興曲集 Hungaroton(2019)

 「リストコンクールで優勝してから、リストの演奏を求められることが多かったです。しかし私自身は“リスト弾き”というレッテルを貼られることは避けたかった。実際、リストコンクールでもシューベルトやハイドンなども弾きましたし、音楽家として生きる以上、色々な作曲家を取り上げなくてはなりません。ただ、もちろんリストは私にとって近く大切な存在であることは確かです」

 リストといえば、まだまだ“超絶技巧”というイメージが先行する作曲家である。それについては違和感を覚えているという。

 「彼がヴィルトゥオーゾとして活躍したのはほんの一時期のことです。私はロマン派の作曲家の中でも最も哲学的な存在だったと思っています。あくまでも超絶技巧はリストの音楽言語のひとつであり、彼自身はいつも感情や哲学を大切にしていました」

 今回は数あるショパンの作品からバラードと即興曲を組み合わせているが、このプログラミングはどのような意図から生まれたのだろうか。

 「バラードは私にとって大切な作品で、これまで様々な試行錯誤をしながら演奏してきました。第1番の最初の音から第4番の最後の音までが一つのアーチを描いており、全曲を演奏することにとても意味があると思っています。カップリングについては色々と考えましたが、ショパンの様々な面を感じて頂けるものにしたかったので、即興曲を選びました。即興曲は軽い作品だと誤解されがちですが、ショパンのあらゆる面を伝えられる重要な作品です」

 ファルカシュはCDを作るにあたり、一人の作曲家でまとめることを大切にしてきたという。

 「CDを作る際、私は作曲家への尊敬の念を示したいと思っています。ですから作曲家のあらゆる面を伝えるようなプログラミングをしてきました。まだアイディアの段階ではありますが、ベートーヴェンのソナタ全曲やリストの《巡礼の年》全曲をはじめ、ラヴェル、スクリャービンなど、様々な作曲家の多様な魅力を伝えられるようなディスクを作っていきたいです」

 


LIVE INFORMATION

ガーボル・ファルカシュ コンサート2019
○10/3(木)
【会場】山形県遊佐町生涯学習センター(リサイタル)
○10/27(日)
【会場】埼玉県嵐山町芸術の家(リサイタル)
○12/1(日)
【会場】東京音楽大学校友会コンサート岡山県立美術館(ゲスト)