この驚くべき創意から生まれた一枚が聴き手をどこへ連れていくのか。聴き手が実際にその音に触れた地点で答えは初めて浮上する。〈3種〉のゴルトベルク録音を果たしてきた塚谷水無子が今度は〈トイピアノ〉版で前人未踏の沃野を拓いた。〈ケンバニスト〉塚谷の面目躍如。第7変奏では12台のトイピアノをダイブする。総勢67台のトイピアノの音色や響きが喚起するイメージはもはや縁へりがない。そのありようは過ぎ去った時代の音であると見えて、同時にすぐれて現在的でもある。独創的冒険を包容するバッハ音楽の深奥はまさに宇宙的だ。ゴルトベルクを知っているなら必聴。いえ、すべてのかたにこの音を知って欲しい。