レクイエムの傑作のひとつとしてはずせないデュリュフレ作品を、ティチアーティのタクトで聴く至福の一枚。ティチアーティは多士済々というべき‘80年代生まれの俊英指揮者たちのひとり。楽想を精緻に描出し、精妙で透明な響きを彫琢する才腕が堪能できる。“入祭唱”で垣間見せる空間へのひらけと収束、“主イエス・キリスト”での祈りと轟くように一閃する鳴動との振幅、“サンクトゥス”での光輝に満ちた頂点、深い静謐へ導かれる“ピエ・イエズ”(コジェナーの絶唱!)。いにしえの音楽がひも解かれ、近代の洗練された響きで幽明の気配が立ち籠める。ひと時の逍遥がもたらす不思議な奥行きの味わいをぜひ。