©2019 映画「蜜蜂と遠雷」製作委員会

蜜蜂と遠雷
国際コンクールを舞台に、世界を目指す若き4人のピアニストたちの挑戦、才能、運命、そして成長を描いた、恩田陸の新たな代表作となった『蜜蜂と遠雷』

――「複数の文化を背負うマサルに自分の姿を重ねました」~金子三勇士(ピアノ)
ピアノコンクールが舞台の恩田陸の同名小説を原作とする映画『蜜蜂と遠雷』(東宝)でマサル・カルロス・レヴィ・アナトール役の演奏シーンを担当したピアニスト、金子三勇士の話を聞いた。

金子三勇士,円光寺雅彦,東京フィルハーモニー交響楽団 映画「蜜蜂と遠雷」~金子三勇士 plays マサル・カルロス・レヴィ・アナトール ユニバーサル(2019)

 

――どんな人が映画を観にこられるのでしょうね。

「原作小説は割と色々な人々が読み、話題にしていました。演奏旅行で搭乗した飛行機のキャビンアテンダントも私がピアニストだとわかると『蜜蜂と遠雷は読みました』と言われたほどです。原作に触れた皆さんが、映画にも来てくださるとよいのですが」

――三勇士さんが原作を読まれたときの感想は?

「結構コンクールの生々しい裏側に触れていて、参加経験者として、気持ちがよくわかりました。舞台裏の様々なドラマもたっぷり、描かれています。今の音楽界、ピアノの世界にスポットライトが当たったのは、素晴らしいことです。日本の若い世代のコンクールに対する考え方は昔と違い、コンクール自体を目標にすえて命がけでゴールを目指し、そこにさえたどり着いたら良しとする風潮が強まりました。変な部分だけがブームと化して子どもどうし、親どうしの派閥争いも激しく、ちょっと繊細な子は精神を病んでしまいます。映画化にもかかわり、改めて、コンクールのあれこれについて考えさせられました」

――3社4点、キャラクターごとのCD制作は画期的です。

「映画で演奏を担当したよりもCDに収めた曲数の方が多いのです。ディスクは原作から各キャラクターの弾く曲を選び、1次、2次、ファイナル…とそれぞれのラウンドの演奏曲目に沿って入れました。ハンガリー人を母に持つ私が得意とするリスト、バルトークだけでなく、モーツァルトを録音できたのは、うれしかったです」

――マサルというキャラクターの「分身」を担い、映画にかかわってみて。

「複数の文化を背負ったマサルには原作を読んでいる時点から親近感を感じ、自分のイメージを重ねていました。主人公4人は肝試し、スランプからの脱出、最後のチャンス…と、それぞれ異なった視点から、コンクールを受けに来ています。個人的には、コンクールが終わった後にそれぞれが人間として、どう成長していくのかを考えさせる点に、この作品の面白さがあると思いました。マサルの場合はラウンドを経るごと、心の中の葛藤が変化していくのが興味深く、私も過去に似たような体験をしています」

――ご自身もライバル意識は強い方ですか?

「日本は足の引っ張り合いも多い国ですが、少子化も進むなか、クラシック音楽は今のままだと完全に斜陽産業です。1人でも多くの人々を引っ張り込むには年齢の近いライバルどうしでも手を携え、《何ができるのか》を皆で考え、行動に移すことの方が最優先です。私はとりあえず、ハンガリーの子どものためのバルトーク国際ピアノコンクールの日本開催にかかわりました。小中学校の子どもたちは、とても良いものを持っているので、もっともっと伸ばせるように、応援していくつもりです」 *池田卓夫(音楽ジャーナリスト@いけたく本舗)

 


金子三勇士 (Miyuji Kaneko)

1989年、日本人の父とハンガリー人の母のもとに生まれる。6歳よりハンガリーのピアノ教育第一人者チェ・ナジュ・タマーシュネーに師事、単身ハンガリーに留学し祖父母の家よりバルトーク音楽小学校に通う。2001年(11歳)飛び級で国立リスト音楽院大学(特別才能育成コース)に入学、2006年(16歳)全課程取得とともに日本に帰国。東京音楽大学ピアノ演奏家コースを首席で卒業し、同大学院器楽専攻鍵盤楽器研究領域を修了。スタインウェイ・アーティスト。

 


LIVE INFORMATION

京&三勇士 ジョイント・リサイタル
○10/25(金)18:15開場/19:00開演
【会場】熊本県立劇場コンサートホール

金子三勇士 ピアノリサイタル 2019
○10/27(日)13:00開場/14:00開演
【会場】神戸ポートピアホテル内 ポートピアホール

みなとみらいクラシック・マチネ 金子三勇士&中野翔太
○11/28(木)【会場】横浜みなとみらいホール 大ホール
【第1部】開場 11:30/開演 12:10
【第2部】開場 13:50/開演 14:30
※各部別プログラム/入れ替え制
https://miyuji.jp/