2014年のファースト・アルバム『LP1』が絶賛されたイギリスのシンガーによる2作目。前作よりも折衷度が増した内容は、妖艶な音像を描いている。ざらついたインダストリアル・サウンドに攻撃的な歌声を乗せる“Fallen Alien”、デッド・カン・ダンスを連想させる呪術的歌唱が際立った“Thousand Eyes”など、すべての曲が強烈なインパクトを放ち、荘厳さを隠さない。

 


新約聖書中の福音書に登場するマグダラのマリアにインスピレーションを受けた5年振りのアルバム。前作からブランクの間に、精神・肉体の双方に辛い出来事があったそうだが、その逆境を糧にした今作での彼女は、畏敬の念を抱かせるほど神々しい歌声を聴かせる。その歌には困難を跳ね返したタフネスだけでなく、崩れ落ちそうな弱さも抱え込み、表現者として著しい成長がみてとれるだろう。ニコラス・ジャー、ジャック・アントノフ、フューチャーらの参加はトピックであり、トレードマークの奇怪な電子音も刺激的ではあるが、未来のR&Bから一歩高みへと踏み込んだ厳かな楽曲群とそこに映える歌の威力には霞んでしまう。