アイリッシュ・トラッドの可能性に挑み続けるベテランフィドル奏者とフィリップ・グラス作品の演奏からジョシュア・レッドマンとのコラボまで現代音楽のフィールドを超えて活躍する弦楽四重奏楽団との共作。整然としたカルテットの上をどこ吹く風で軽快に飛び跳ねる演奏に、同属楽器といえど共演してみればその音はまるで違うものだ、と関心しつつ聴き始める。ところが、どちらからともなく音色、アンサンブルが融解していき、その境界がわからなくなっていく。トラッドのようで、或いはコンテンポラリーのようでそのどちらでもない、既聴感を保ちながら新しい音楽を聴いているような不思議な作品だ。