ストーンズ・スロウの推す才媛が初フル・アルバムを完成。先行EP『Sink』などで聴けたアフリカン・リズムや土着的な音楽観は今作では後退し、歌を前に出しつつより洗練に向かった印象だ。長短と軽重の表現が自在なヴァイオリンの音色を駆使し、どんな楽曲にもある種の気品を付与できるのは彼女ならではだろう。ダークなトラップ・ビートに天上からヴァイオリンの美音が降り注ぐ“Black Vivaldi Sonata”の曲名に象徴されるように、ルーツと欧州の両方の価値観を呑み込み、みずからの表現とする強さが際立つ快作だ。西洋美術である彫像を、ブラックネスを強調した裸体によって生々しく模したジャケット写真も、本作を聴き終える頃には、彼女の音楽を表す見事なアートワークだと思えるはず。