ROTH BART BARONの〈ロット熊戦記〉

ROTH BART BARONの原点! USインディーの影の力持ち! エンジニア、ジョナサン・ロウ!

ロットバルトバロン三船雅也がお届けする世界音楽〈熊〉紀行:第九話

ロットの2人とジョナサン・ロウ(右端)
 

すっかり秋めいてきました、いやもう冬なのか? なんだか季節がよくわからないすね最近。皆さんお元気でしょうか? 三船です。いつも不定期でお送りしております海外の音楽を届ける〈ロット熊戦記〉、戦記の名にふさわしく三船は音楽で戦っている日々でございます。この夏のほとんどはレコーディングスタジオで過ごし小さな部屋、大きなレコーディングブースで楽器と向き合い、歌を歌いツアーをし、清く正しくミュージシャンらしく過ごしております。部屋から1歩も出ないのに大きな旅をしている気分です相変わらず。

新しいアルバムが出ます、タイトルは『けものたちの名前』!

ROTH BART BARON けものたちの名前 felicity(2019)

『けものたちの名前』トレイラー映像
 

だからそれに関わってくれた僕の友人ジョン(ジョナサン・ロウ)について今日はお話ししようと思います、おそらくロットの最初の音楽体験、三船個人の音楽制作の哲学はここから始まったのかもしれません。今回はエッセイになっております、それではどうぞー。

 

2012年に『化け物山と合唱団』をリリースしたあと、京都ツアーでの帰り道、僕はその後の自分たちの将来について考えていた。自分は一体何をしたいのか、日本で一生音楽をして過ごしていきたいのか?

『化け物山と合唱団』収録曲“小さな巨人”
 

いろいろ考えて、そしてふと思った、日本のために日本の音楽をやって日本で一生を終えたくない。僕は日本が大好きだけど、ことロックミュージックに関しては相変わらず同じようなジャンルをぐるぐるぐるぐる似たり寄ったりしてる感じでそれに加担したくなかった、それよりも海の向こうからやってくる新しいアイデアや、新しいサウンド、新しいワクワクが、どうやったら日本で作れるかっていうことを考えていた。

そのためには国内に仲間が必要だった、しかしまだ僕らには仲間がいなかった、そしてその感覚をわかってくれるミュージシャンは特にいなかったのだ。

だから直接現地で学んでしまおうと思った。僕には将来一緒にやってみたいエンジニアとスタジオのリストがあった、世界中のリストだ、インターネットで調べあげて勝手に作っていた。
だからそのリストの中で本当に今デビューアルバムを作れるチャンスがあったとしたら、仮に僕のボーカルだけでもレコーディングして何か持ち帰って、現地の人たちの音楽の哲学を学べるのではないか?と思った。だから直接スタジオのアドレスにメールを送ってみた。

当時は全然英語がしゃべれなかったから翻訳ソフトウェアを駆使して、「あなたが作るサウンドが大好きだから一緒にやってくれないか」と送った。そしたら即レスが返ってきた。「いいよ。君達のバンドサウンド非常に面白いし、一緒にやってみようぜ」っていうメールだった。でもお金もないしびびってしまって、まだ僕らは何の実績も契約もないし将来が分からないからもうちょっと待ってくれとお願いしたにもかかわらず、メールでの交渉を半年の間ぐらいずっとしていた。もしかしたら実現しないと思っていた。でも結果2013年の年末、僕はアメリカにいた。僕にとって初めての海外経験だった、やばくない? やばかった、そこで初めてジョンに会ったのだ。

 

彼はいまやThe Nathionalを筆頭にSufjan Stevens、Nico Muhly、Frightened Rabbit、Bryce Dessner、James Mcalister、Kurt Vile、Bon Iverの別プロジェクトBig Red Machineなどを手がけ、グラミーを受賞したエンジニアだ。でも当時の彼は全然無名だったし、僕とも年齢がとても近いどちらもいわば新人だった。

ナショナルがサントラを手掛けた、マイク・ミルズのショート・フィルム『I Am Easy To Finf』。劇伴のミックスをジョナサン・ロウが手掛けている
 

挨拶を済まし、早速ドラムのセッティング、丁寧にドラムチューニングをしてさあ、いつでも録音できるぞというところでまさか1日目は終了、びっくりした。

彼はシャイで少し神経質、笑いのツボが変で、機材オタク、三船と似たようなものである。だいたい11時に仕事を始めて、7時には終わる。夜中にセッションすることはない。合宿RECならあるかもしれないけど。

彼の作るサウンドは独特だ、今はすべてをラップトップコンピューターで完結させてしまう方法が当たり前だが、彼はほとんどソフトウェアを使わずハードウェアを使って音楽を作る。この方法はスタジオならではだ。いったら今の若者に作るのはとても難しいプロセスだ、お金も時間も関わる人間もたくさんいる簡単ではない。ここにはプロフェッショナルのスタジオサウンドがある。1つの音に対してデジタルとアナログのサウンド両方を使いながら、丁寧にレイヤーを重ねていく。例えればフィルムで撮った写真とデジタルで撮った写真を両方使って一枚の作品を作り上げてゆく感じだ。そしてとても力強いドラムサウンド、とても強いボーカル処理が特徴だ。

 

自然な音、良い音を鳴らすと言うことは日本人の多くの人がデジタルの処理とかエフェクトをかけない自然さみたいなことに工夫を注ぐが、アメリカではものすごく加工されてしまっても結果良い音が出ればok。それが何故か自然に聴こえると言う感覚だ。それが音の秘密だったりする、それでいてPhotoshopでめちゃめちゃに加工されたうえで美しいとされる人工人間を映し出すようなことはなく、極めてナチュラルで自然で自分の持っているポテンシャルをブーストさせてくれるのだ。僕はその時音楽のミックス作業とは本当に想像力が必要だと実感させられた。彼は別に曲を書いたりとか楽器を演奏したりするわけじゃないが、人の曲をミックスするということであるアートを作り出すのである。 

 

去年アーティスト写真の撮影のためニューヨークに行った時、運良くドイツ帰りの彼と会えた。ベルリンでBon Iverのフェスティバルがあったからだ。そのフェスティバルのこと、ドイツでの音楽シーンのこと、ニルス・フラームの新しいスタジオに遊びに行った話、大好きなFrightened Rabbitの悲しい事故のことや新しい機材の話などをした。

そして今年2019年を締めくくる最後の作品に彼のサウンドが必要だと思った。ジョンは忙しいなか時間を作ってくれた。あの極寒のスタジオで窓の景色から見たフィラデルフィアの街並みをいまだに覚えているし、あの景色は今でも僕のサウンドの中に溶け込んでいる。それはアメリカを通して見た日本があるからだ、そして一緒に作品を何か作り上げると言うことは単なるビジネスではなく仕事の関係ではなく大切な仲間になっていく。どこか遠い国に会いたい人がいるというのは本当に良いことだ。

ジョンが日本に来たときの写真
 

音楽を通して何か新しい作品を作りたいと思うし、何か新しいことを知りたいと思うしこの感覚をもっとあげたいというか、日本に伝えたいっていうのは自分の正直なところだ、パソコン1つで完結する音楽もほんとに楽しいしクリックに合わせて無機質なリズムを作って人間の温かみを消してしまうことも今の現代的な方法だ。しかし、僕たちはバンドで、スタジオを使ってものすごいお金と人の時間を使って大きな作品を作り上げる、ビジネスで言ったら非常に効率が悪いことを今でもやっている。

でもそのバンドサウンドこそが、そのめんどくさい作業こそが今の音楽の歴史を作ってきた。それは自分たちにしか出来ないことだと思っている。

『けものたちの名前』収録曲“春の嵐”
 

僕らがアメリカで培ったことは今の日本で生きているし、ジョンが作るサウンドはいまだに僕らを魅了してくれる。同年代で音楽を生み出している。今回もジョンの他にチャンス・ザ・ラッパーのエンジニア、エルトンにもミックスしてもらったし、ドレイクなどで有名なクリスにもマスタリングをしてもらった。

いろんな人種と性別と年齢と、そういうものがたくさん入ったアルバムになった。新しい時代に次は彼と何を作ろうか?

音楽を通してまだ見ぬ世界を知りたいので、自分の目を通して感じたり体験したものを、そういう世界の秘密をこれからも〈熊戦記〉で皆さんに少しでも分けられたらなぁと思ってます、これからもどうぞよろしく。

バンドは今クラウドファンディングをやってます。新しいアルバムのスペシャルパッケージと来年5月のツアーファイナル、めぐろパーシモン大ホール公演という1200人キャパのイベントをやろうと思ってます。もしよかったら一緒に参加してください、これもたくさんの人が参加してくれて1000万円ぐらい集まったら、また世界中回って皆さんに驚きとワクワクをこの〈熊戦記〉を通して届けられるはずです。

※2019年10月30日(水)まで
 

それではまた次回お会いしましょう!

 


TOUR INFORMATION
ROTH BART BARON 〈TOUR 2019-2020〜けものたちの名前〜〉

2019年11月27日(水)東京 渋谷 WWW X - 単独公演 -
2019年11月29日(金)宮城 仙台 darwin - 単独公演 -
2019年12月21日(土)台湾 台北 The Wall - 単独公演 - 
2020年2月1日(土)富山 飛鳥山善興寺 
2020年2月2日(日)石川 金沢 アートグミ
2020年2月7日(金)福岡 天神 the Voodoo Lounge - 単独公演 -
2020年2月8日(土)鹿児島 SR Hall
2020年2月9日(日)熊本 NAVARO
2020年2月10日(月)山口 岩国 Rock Country - 単独公演 -
2020年2月11日(火)大阪 梅田 Shangri-la - 単独公演 -
2020年2月22日(土)愛知 愛知芸術文化センター 中リハーサル室
2020年2月23日(日)広島 福山 Cable
2020年2月28日(金)北海道 札幌 mole - 単独公演 -
2020年3月7日(土)山形 肘折国際音楽祭 
2020年3月8日(日)青森 八戸 Powerstation A7
2020年3月22日(日)京都 磔磔 - 単独公演 -
2020年5月30日(土)東京 めぐろパーシモン大ホール 

 

【プロフィール】
三船 雅也

三船 雅也 (みふねまさや)

87年、東京世田谷区生まれ。2009年に ROTH BART BARON を結成。自主制作にて3枚のEPをリリースしたあと、felicityより3作のフル・アルバムを発表。バンドは〈FUJI ROCK FESTIVAL〉や〈SUMMER SONIC〉など大型フェスにも出演。また、中国・台湾・モンゴルを回るアジア・ツアーや、NYやボストンなど北米7都市を回るUSツアーなど、海外でのツアーも精力的に展開。2017年2月には、故デヴィッド・ボウイ生誕70年を記念する〈CELEBRATING DAVID BOWIE JAPAN〉に日本人ソロ・ゲストとして、田島貴男、吉井和哉と共に出演、エイドリアン・ブリュー、マイク・ガーソンらが務めるボウイ・バンドの演奏のもと“All The Young Dude”を披露。音楽とヒグマをこよなく愛す。趣味は写真。

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