COLUMN

〈オペラ夏の祭典2019-20 Japan↔Tokyo↔World〉ワーグナー『ニュルンベルクのマイスタージンガー』 東京五輪直前の初夏に聴く、ワーグナーの祝典的大作

ザルツブルク公演 ©OFS/Monika Rittershaus

東京オリンピック・パラリンピック直前の初夏に聴く、ワーグナーの祝典的大作

 「オペラ夏の祭典 2019-2020 Japan↔Tokyo↔World」は2020年の東京オリンピック・パラリンピックへ向けて、日本を代表するオペラ指揮者大野和士のリーダーシップのもと、 東京文化会館と新国立劇場が初めて共同でオペラ制作を行うプロジェクトだ。この2つの劇場が共同制作を行うのは初めての試みである。プロダクションは東京で披露されたのち、地方の劇場でも上演される。第1回目として今年の7月にはプッチーニの『トゥーランドット』が上演され、大野和士がオリンピックの街バルセロナの音楽家、演出家たちや世界の第一線で活躍する歌手たちと作り上げたプロダクションは大きな注目を集めた。

 「オペラ夏の祭典」の第2回目では、東京オリンピックの直前の初夏、2020年6月にワーグナーの楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』が取り上げられる。このプロダクションはザルツブルク・イースター音楽祭とザクセン州立歌劇場との共同制作でもあり、ザルツブルク、ドレスデン、東京と各都市で上演された後、兵庫でも上演される予定である。大野和士が『マイスタージンガー』を上演するにあたってパートナーに選んだのは、2015年から音楽監督をつとめる東京都交響楽団。このオーケストラは1964年の東京オリンピックの際に記念事業として設立された。再び聖火が東京に戻ってくる祝祭の年に、ワーグナーの祝典的大作を上演するオーケストラとして、都響はぴったりのキャスティングだろう。演出はドイツ各地の歌劇場で活躍するイェンス=ダニエル・ヘルツォーク。歌手もハンス・ザックス役のトーマス・ヨハネス・マイヤーを筆頭に日欧の実力あるワーグナー歌いたちが一堂に会する。

 『マイスタージンガー』は休憩を含めて上演時間5時間を超える大作だ。5時間という上演時間はたしかに長いのだが、実際に上演に触れてみると不思議と長さを感じさせない作品である。時計の時間はしっかりと進んでいても、体験としてはほんの短いひとときだったような気がする。この作品はワーグナーの主要10作品のなかでも唯一の純粋な喜劇であり、その音楽も前作『トリスタンとイゾルデ』とは正反対の朗らかで明快なものとなっている。筆者のお気に入りを一つあげるとすれば、それは第2幕だ。この幕は全体で一つの「ナハトムジーク」であり、『トリスタンとイゾルデ』のそれとは全く異なる個性と魅力を持つ「夜の世界」である。『マイスタージンガー』は、「ワーグナーは長くてややこしいから苦手だ!」と敬遠している方にこそぜひオススメしたい。観終わった後には、初夏の軽やかな夜風の中で特別な体験への充実感に満たされているはずである。

 


LIVE INFORMATION

オペラ夏の祭典2019-20 Japan↔︎Tokyo↔World
ワーグナー作曲『ニュルンベルクのマイスタージンガー』
[全3幕/原語(ドイツ語)上演 字幕付]


○2020/6/14(日)14:00開演 17(水)12:00開演
【会場】東京文化会館 大ホール
【指揮】大野和士
【演出】イェンス=ダニエル・ヘルツォーク
【出演】ハンス・ザックス:トーマス・ヨハネス・マイヤー
ファイト・ポーグナー:ビャーニ・トール・クリスティンソン
クンツ・フォーゲルゲザング:村上公太
ジクストゥス・ベックメッサー:アドリアン・エレート
フリッツ・コートナー:青山貴公
バルタザール・ツォルン:菅野敦
ウルリヒ・アイスリンガー:小原啓桜
アウグスティン・モーザー:伊藤達人
ヘルマン・オルテル:大沼徹
ハンス・シュヴァルツ:長谷川顕
ハンス・フォルツ:麦屋秀和
ヴァルター・フォン・シュトルツィング:トミスラフ・ムツェック
ダーヴィット:望月哲也
エーファ:林正子
マグダレーネ:山下牧子
夜警:志村文彦
【合唱】新国立劇場合唱団/二期会合唱団
【管弦楽】東京都交響楽団
https://www.t-bunka.jp/

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