百一年目の孤独を伴奏する響きへ

 寺山修司没後30周年であった2013年。記念認定事業も盛り上がった1年間にふさわしく、素晴らしい音楽作品が届いた。『天井棧敷音楽作品集』完結編である。

 演劇実験室〈天井桟敷〉で音楽を担当し続け、寺山修司の右腕として作品に華を(しかも異形の華を!)添えてきたJ.A.シーザー。この『天井棧敷音楽作品集』はそんなシーザーの音楽を5枚組CD BOX全4巻で編纂した壮大な作品群だ。2008年よりスタートし『Vol.1』『Vol.2 鬼火』『Vol.3 ある家族の血の起源』とリリースされ、今作『Vol.4 身毒丸/草迷宮』にて完結する。最新インタヴューも収録したブックレット、奇怪ながらも美麗なデザインのジャケット、更に未発表音源を含む全曲初CD化と実に豪華な仕様である。

J・A・シーザー 『天井棧敷音楽作品集VOL.4 身毒丸/草迷宮』 富士(2013)

 今作は副題からも窺えるように演劇、映画作品の音楽に特化した収録となっている。「阿呆船」「中国の不思議な役人」「奴婢訓」から最終公演「レミング 壁抜け男」まで天井棧敷ファンなら垂涎の演目が並び、さらには「ボクサー」「さらば箱舟」などの映画音楽まで収録されている。作品自体をご覧になった方ならこの選曲の幅広さに驚かされるはずだ。

 J.A.シーザーの音楽観というのは唯一無二だ。アングラ、サイケデリックと表現されるがそれともちょっと違う、なんとも形容しがたい世界観だ。もちろん彼の音楽は寺山修司、そして寺山作品なしに生まれることはなかった。だがそれら付随要素を除いたとしても、音楽自体が独立した世界観を持っている。たった1分の音源を聴くだけでも、それが自己の中で解釈していた彼の“音楽”をより拡げてくれる。もっと聴きたい、すべて聴きたい、そう思える音楽を紡ぐ存在だからこそ、この作品集は必要なのだと僕は思う。2013年末にコンサート〈大鳥の来る日〉を開き現在も精力的な活動を続けている。彼の音楽は止どまることはない。