今回は最近我が家に到着したCDの中から幾つかピックアップいたします。脈絡のないチョイスなので申し訳ないとは思いつつ、まぁ大体いつもこんなもんか。

まずは英国スコットランドから清涼感溢れる一枚。ABEL GANZの新譜がとても良いという話を。夜、エアコンの効いた部屋でまったり聴くのに最適な、この夏のプログレ必聴盤かと思います。

バンドが最初のアルバム(カセットテープ)をリリースしたのは1984年。いわゆるポンプロック第2世代がデビューし始めた時期でしたが、ABEL GANZは結局レコード契約を勝ち取ることができませんでした。しかし後にPALLASへ加入するALAN REEDを擁した編成のこのデビュー作は非常に完成度が高く、同年メジャーデビューしたPENDRAGON辺りと較べてもなんら遜色のないものでした。バンドは85年に2作目、そして87年に3作目(いずれも自主制作)をリリースしますがその後はペースが衰え、94年の『The Deafening Silence』(これとて90年頃散発的に録音された曲をまとめただけに過ぎません)以降しばらく音沙汰がなくなります。

2002年に変則のベスト盤『Back Form The Zone』がひょっこりと出てきて僕をびっくりさせましたが、2006年には本格的に活動を再開、2008年には3rdアルバムの新装版久々の新作『Shooting Albatross』をリリース。先日出たセルフタイトルの新譜『Abel Ganz』は前作から6年振りということになりますね。

バンド初期のサウンドは典型的なポンプロックを標榜するもので好事家以外にはなかなかアピールしにくいものでしたが、2006年の活動再開後はスコットランドの出自を押し出したフォーキーな味わいとエレクトリックとの融和を図り、要するにまぁ、このさじ加減がとても良いのです。

本作は前作の延長上にありつつ更に完成度を高めていますが、バンドのオリジナルメンバーは誰一人残っていないというのがなんというか、ちょっと複雑な気分ではあります。しかしJERRY DONAHUE(米国人カントリーギタリスト。FAIRPORT CONVENTIONなど、SANDY DENNYと一緒に演奏していたことをご存知の方々も多いかと)を客演に迎えたのも大正解、上品で質の高い楽曲群は聴いていて非常に気持ちがイイです。

管楽器セクションの導入に躊躇がないというのは、最近ではちょっと珍しいかも知れません。更にもう1曲(尻切れですが)貼っておきます。

この曲では独特なサスティンのギターが聴かれますが、どうやらこれはE-BOWを使っているみたいです。これも今どき、なかなか変なデバイスを操っていますねぇ。総合的な楽曲の方向性、インストゥルメントの編成、そして機材に至るまでちょっとした捻りが効いている本作は、やさぐれたプログレ耳に新鮮な響きを与えてくれるものだと思います。

 

続いてはハードロックの再発ものです。これぞ怪しい珍盤といった感じでしょうか。僕は割とTHIN LIZZY(というかPHIL LYNOTTというか)についてはたくさん聴いてるつもりだったのですが、まだまだ全然駄目でした。こんなの知らなかったよー。

えー、ナニコレ?って感じですが。『Funky Junction Play A Tribute To Deep Purple』という企画盤で、1972年にリリースされたアルバムだそうです。このFUNKY JUNCTIONなるいかがわしいバンドが実はトリオ時代のTHIN LIZZY+αだということで、いかにもバンド初期の苦節を伺わせる1枚ですなぁ。しかし言われてみればこのせわしないドラムは確かにBRIAN DOWNEYのそれに間違いありません。そして、

んー、実にERIC BELLらしいギターだなぁ。しかし“Danny Boy”(アイルランド民謡)は“Roisin Dubh”(1979)にGARY MOOREのギターで組み込まれる遥か以前、こんな形で既に演奏されていたのですね。なかなかに興味深い事実です。

そしてPHIL LYNOTTは…やっぱりあの独特の歌声がないとベースだけでは判別しづらいです。因みに本作で歌っているのはELMER FUDDというバンドにいたBENNY WHITEいう人で、ELMER FUDDはアルバムを残していないみたいですね。

なんとも評価しづらい珍盤ではありますが、こういうのはただ楽しんで聴けば良いのです。実際、かなり面白い1枚だと思います。

 

最後はザ・モップスで。この4月に“ブラインド・バード”入りの1stアルバム完全を含んだ全8タイトルが再発されましたが、僕はそれ以前の再発で既に持っていた盤を後回しにしていたのでなかなか全部揃わなかったのです。で、最後になったのが『モップスと16人の仲間』(あ、これも1972年か)です。まぁ、アレです、やはり一般にこのアルバムは“たどりついたらいつも雨ふり”ということになるのでしょう。ええ、特に反論はございません。実際、カッコイイですもんね。しかし、捻くれ者の僕としては別の曲も推しておきたいところ。

ズバリ“母さんまっ青”でありますが、貼り付ける音源が見つかりません。うむむ、やっぱり権利的なアレとか色々と難しいことがあるのでしょう。基本的に外部ライターの曲を演奏したこのアルバムにあってバンドメンバーのスズキミキハルが作詞、星勝が作曲したこの曲はタイトルからしてLOS POP TOPSがヒットさせた“MAMMY BLUE”(オリジナルはHUBERT GIRAUD)を思いっきり意識している訳ですが(実際曲終わりでモロに“MAMMY BLUE”のメロディを流用して〈あ~ お母さん お母さんまっ青~〉とコーラスしています)、そのエンディングに至るまでのギターリフは“JUMPIN' JACK FLASH”っぽかったりして、非常にスピード感溢れるロックの名曲なのです。特に三幸太郎のドライブするベースが素晴らしいんだな。

…あー、もどかしいな。とりあえず“MAMMY BLUE”と“JUMPIN' JACK FLASH”貼っときますね。

どんな曲よ!?ってなりますわな、やっぱりこれだけじゃw

鈴木ヒロミツが亡くなってもう7年も経ちます。我が国のロック黎明期にあって、柔軟な姿勢でジャンルを跨いでみせたモップスというバンドは、もっともっと評価されて然るべきだと思うのですが、いかがなものでしょう。海外のサイケマニアに1stだけがもてはやされる状況はなんかちょっと(大いに)歯痒いのです。