でっかいハートとあったかい歌声で人々に元気を与えてきた歌い手が人生という旅路の途中で見つけた〈前向きな言葉〉たち――通算5枚目のニュー・アルバムが完成!

 遊助の音楽の中心を担っているのは〈言葉〉だ。ヒップホップ、ダンスホール・レゲエ、R&B、EDMなどのカラフルなサウンドに乗せて、リスナーの心に直接響く言葉を手渡していく――そんな彼のスタイルは、シングル“とうもろこし”“Earth Child”“V”“いるよ”を含む5枚目のオリジナル・アルバム『あの・・旅の途中なんですケド。』でもしっかりと貫かれている。

遊助 『あの・・旅の途中なんですケド。』 ソニー(2014)

 「言葉がすべてかもしれないですね、確かに。それを助けてくれるのが音楽だと思っているので。音楽に乗せることで運べる言葉って絶対にあると思うんですよ。シラフじゃ言えないようなことも、音楽のなかでは堂々と言えるというか。それが曲を作ってるときのやりがいでもあるし」。

 〈どんな人も/きっといつか/自分を見失うから/だから今日も/これからもずっと/そばにいるよ〉(“いるよ”)。 

 〈ウソつきな僕でも/何かしらできんだろう/空見上げ/考える1人きり〉(“キリンの涙”)。

 彼が紡ぎ出す言葉は、何か(誰か)を責めるものでもなければ、単なる応援歌でもない。そうではなく、リスナーひとりひとりの人生を丸ごと肯定し、〈大丈夫だ〉と鼓舞するために使われるのだ。

 「〈こうじゃなきゃいけない〉というルールなんて、どこにもないと思うんですよ。みんながそれぞれの人生を生きていて、すべて自分次第だから、〈おまえ、それは良くないよ〉みたいなことは絶対に言えないなって。たとえばイヤな経験を引きずることだって、意味があると思うんです。〈あんな失敗はしたくない〉って思ってるからこそ、いつまでも考えてしまうんだろうし……」。

 さらに遊助は「聴く人に求められなければ、曲も作らないし、歌詞も書かないと思う」とはっきり言い切る。

 「聴く人のことを考えないで音楽をやっても、意味がないですからね。〈俺はこれが歌いたい〉ということもあるけど、聴く人がいるから曲を作って、歌ってるので。ただ自分が歌いたいだけなら、風呂場で歌ってればいいですから(笑)。そういう気持ちはやればやるほど強くなりますね」。

 唯一の例外は彼自身の人生を振り返る“History III”(サード・アルバム『あの・・涙があるから愛があるんですケド。』から始まった、みずからの人生を歌う〈History〉シリーズの第3弾)。この曲のなかで遊助は、ヴァラエティー番組の出演をきっかけにしたブレイクの時期――激変する環境、そのなかで芽生えた危機感――について、驚くほどリアルに歌っている。

 「あの時期のことを早く歌にしたかったんですよ。歌詞にも書いたんですけど、ずっと〈こんなもんじゃねーぞ〉〈こんなハズじゃねーよ〉って思ってたので。ブームとか旬っていう言葉は怖いですからね……。それがイヤだったわけではなくて、あの時期があるから、いまがあると思ってるんですけどね」。

 Mummy-D(RHYMESTER)のキレ味鋭いラップが堪能できる“ルーレット”、ノスタルジックなメロディーと〈故郷〉〈仲間〉を想起させる歌詞がひとつとなったRakeとの共作曲“キャッチボール”、恋人同士の切なくも愛おしい想いをMs.OOJAとのデュエットで描いた“Ring”など、コラボ曲もさらに充実。30代半ばに差し掛かった遊助は、歌手としてもさらに豊かな時期を迎えつつあるようだ。

 「アルバムのタイトルは〈子供でもお年寄りでも、人生はいつも旅の途中だよな〉って思ったからなんですけど、もしかしたら自分が30代半ばになったことも関係してるのかも。30歳になったとき〈自分の20代、胸を張れるな〉と思ったんですよね。〈駆け抜けた!〉という実感があったというか。いまはそのとき蓄えた筋肉をさらに鍛えて、もっと気を引き締めなくちゃいけないなと思ってます。40歳になったときも、〈30代もやり切った〉って思いたいですからね」。

 

▼関連作品

左から、2013年の『とうもろこし/Earth Child』『V/時給850円のサンタクロース』、2014年の“いるよ”(すべてソニー)
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▼『あの・・旅の途中なんですケド。』に参加したゲストの作品

左から、Mummy-Dが所属するRHYMESTERの2013年作『ダーティーサイエンス』(NeOSITE/キューン)、Rakeの2013年作『Free Bird』(エピック)、Ms.OOJAの2013年作『MAN -Love Song Covers 2-』(ユニバーサル)
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