「ハーモニカが欲しかったんだよ」と歌う小沢昭一や、「ハーモニカおじさん」と呼ばれて親しまれたジャズ・ハーモニカのトゥーツ・シールマンスを持ち出すまでもなく、ハーモニカには“昭和”や“おじさん”のイメージがあるのではないか。それを鮮やかに払拭するのがクロマチックハーモニカ奏者の南里沙だ。神戸女学院音楽学部オーボエ専攻だったある日、同じリード楽器のクロマチックハーモニカの音色に遭遇。忽ち魅了され、この楽器に転向した。

 「クロマチックハーモニカを始めると決めたのは即決! 翌週には楽器を手にしていました」

【参考動画】南里沙〈ゴッドファーザー 愛のテーマ〉

 

 クロマチックハーモニカは、1912年ドイツ生まれ。クロマチックとは半音階の意味だ。

 「スライドレバーを操作してピアノの黒鍵、つまり半音上の音を奏でることができ、4オクターブの音域があります。表現力もあり、こんなに魅力的な楽器なのに、日本だけでなく、世界でも認知度が低く、とても残念です。ですからクロマチックハーモニカの普及こそ、私の使命だと思いますね」

南里沙 RISA Plays CINEMA キング(2014)

 幅広い年齢層にこの楽器の魅力を広めたいと、今回、アルバム『RISA Plays J-songs』と『RISA Plays CINEMA』の2枚を同時発売した。しかもそれぞれ2枚組で、カラオケとメロディ譜付だ。

 「私が監修したメロディ譜には楽譜が読めない方でもクロマチックハーモニカが演奏できように、穴番号を音符一つ一つに付けました。現在、私の生徒さんは小学生からご年配までと幅広いのですが、皆さん楽しんで演奏していらっしゃいます」

南里沙 RISA Plays J-songs キング(2014)

 収録した歌謡曲は知らない曲も多かったらしい。

 「私の生まれる前の曲も私の世代には新しい音楽に感じます。布施明さんのファンなので《シクラメンのかほり》、大好きです。小椋佳さんの詞も素敵。この曲に限らず、歌詞を大切に、どの曲も歌うような演奏を心がけています」

 クロマチックハーモニカ普及のためにはジャンルにこだわらず、映像を含め多くのコラボをしていきたいと意欲満々。2013年には、ブルガリアのソフィア市でソフィア・フィルと共演し、クロマチックハーモニカ協奏曲 《Labyrinth of Fantasy》を世界初演した。日本でも演奏したいと意気込む。

【参考動画】南里沙による由紀さおり“夜明けのスキャット”のカヴァー

 

 「阪神淡路大震災後、オーケストラが慰問に来てくださりオーボエを知りました。中学はオーケストラ部に入部。オケの一員としての演奏とソロでは緊張度が違います。また、あの空気を味わいたいですね」

 とは言え「私一人立てる場所があればどこでも演奏します」。一見おっとりしているが、男前の南里沙だ。

【参考動画】南里沙の2014年のパフォーマンス映像