夏×音楽=青春
[緊急ワイド] サマームード2014、または未来の思い出

 季節は巡り、空模様は変わり、出会いがあれば別れもあります。先頃発表されたLUVRAWPAN PACIFIC PLAYA離脱と、それに伴うLUVRAW & BTBのコンビ解消という報せはちょっとしたにわか雨のようではありました。本誌読者にはいまさら説明する必要もないでしょうが……LUVRAW & BTBといえば、『ヨコハマ・シティ・ブリーズ』(2010年)に『HOTEL PACIFICA』(2011年)という2枚の名作を残し、シティーアーバンといったキーワードが飛び交う時節に先駆けて独自のメロウ世界を構築してきたフロム横浜のトークボクサー・デュオです……でした。ただ、もともとソロ・プレイヤーだった両名はコンビ結成前から結成中も個別でも動いてきたわけですし、実際にここ最近は各々の名前を見る機会も多くなっていたわけで、この発展的なコンビ解消がそれぞれの新しい動きをよりいっそう活発化させていくのは間違いないことでしょう。すでにEspeciaのプロデュースや「スペース☆ダンディ」のサントラに参加しているLUVRAWは新たに立ち上げたIMAGE CLUVからシングルを発表済みですが、ここにきてBTBも動き出しました。それが、今回紹介する初のソロ・アルバム『Back To Basic ~俺とお前篇~』であります!

BTB Back To Basic~俺とお前篇~ PAN PACIFIC PLAYA/VYBE(2014)

 今回は彼の敬愛するアーティストの楽曲をリビルドしたカヴァー・アルバム。特に夏歌に限定しているわけではないものの、期せずして季節にハマるメロウ&ブリージンなサマー・フィーリングをたっぷり含有しているのは期待通りのはず。トラックリストを眺めてまず目に留まるのは、かつてクルーの初作『PAN PACIFIC PLAYA』(2007年)にソロで提供した“Outstanding”を再録していることでしょうか。言わずと知れたギャップ・バンドのカヴァーですが、もちろんトラックも歌いっぷりも当時とは違っていて、これぞ〈Back To Basic〉を体現するような出来映えです。コンビ時代からザップキース・スウェットブラコンR&B系のカヴァーはお手の物でしたが、今回はさらに選曲の幅を広げています。

 7インチのリリースも告知されているのは、山下達郎が手掛けて後にクラブの定番となった笠井紀美子“バイブレイション” (77年)と、イージー・ENWAのアルバムに遺した“I'd Rather Fuck You”(91年)。さらには達郎の“DANCER”にクリスタルキングのキザな佳曲“初夏の忘れもの”、ハマの先達クレイジーケンバンドの“Revolution Funk”、横山剣のペンによる和田アキ子“史上最悪の夜”、さらにはプリンスの“Erotic City”にダン・ハートマンロリータ・ハロウェイ)のダンス・クラシック“Relight My Fire”……などなど、古今東西のアレコレをトワイライトなアーバン・シンセで構築し、トークボックスで思うままにノビノビ歌いまくった内容は最高に気持ち良し! と思ったら、この号の校了直前にリリース延期が決まってしまいましたが……今年は9月まで暑さが厳しいそうですし、季節を問わず脳内にメロウな光景を再生してくれるヤバい効能には変わりナシ。残暑もこわくないぜ!

 

▼関連作品

左から、LUVRAW & BTBの2010年作『ヨコハマ・シティ・ブリーズ』、同2011年作『HOTEL PACIFICA』(共にPAN PACIFIC PLAYA/VYBE)、一十三十一の2014年作『Snowbank Social Club』(Billboard)、JINTANA & EMERALDSの2014年作『Destiny』(Pヴァイン)

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