本文にもあるように、『ディア・ポップシンガー』は彼女のデビュー30周年を記念した一枚なわけで、前作にあたる『Songs & Voice』(2009年)からデビュー・シングル“未来航海-Sailing-”(84年)まで遡ってみれば、その過程には流行歌手らしい挑戦やアーティスト性の高まりの産物として、膨大な作品が残されている。80年代アイドル然とした最初期の輝きはもちろん、87年の年間アルバム・チャートでNo.1に輝いた『ノン・ストッパー』(86年)に代表されるユーロビート時代、ナラダ・マイケル・ウォルデンが全曲を手掛けた『VERGE OF LOVE』(88年)や久保田利伸も参加の『TRUST Me』(90年)といったブラコン寄りの佳作群、ヴィヴィッドな歌謡マナーを90年代に問うた傑作『流行歌手』(92年)、大沢伸一や沖野修也らをブレーンに据えたクラブ仕様の『Chains』(97年)など……25周年時には全作品が紙ジャケ仕様の限定盤としてSHM-CD化されたものの、その多くは入手困難となっているのは無念。もちろんヒット曲の数々は各種ベスト盤で手軽に堪能できるものだが、意欲的に音楽性を拡張してきたオリジナル作の再復刻も改めて希望しておきたいところだ。

 

▼荻野目洋子の作品を一部紹介

左から、2009年作『Songs & Voice』、85年作『フリージアの雨』、88年作『CD-RIDER』、91年作『TRUST Me』、94年作『NUDIST』、ベスト盤『ゴールデン☆ベスト 荻野目洋子』(すべてビクター)

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