INTERVIEW

J MASCIS 『Tied To A Star』 Part.1

歪んだ轟音ギターというトレードマークを封印した大恐竜――生身の歌とヴィンテージな音をあえて選んだ理由とは

J MASCIS 『Tied To A Star』 Part.1

 Jマスキスの創作意欲が止まらない――2011年にソロ名義で初のアルバム『Several Shades Of Why』を出し、その後、ダイナソーJrヘヴィ・ブランケットでの新作をそれぞれ発表。今年に入ってからもファックト・アップピンク・マウンテントップスストランド・オブ・オークスらの作品に客演するなど話題に事欠かない彼から、今度はソロでのセカンド・アルバム『Tied To A Star』が届いたのだ。何でも、私生活の変化が近年の精力的な活動に繋がっているそうで……。

  「う~ん、もしかしたら子供ができて父親になったことが、何か関係しているのかもしれないな。〈子供からインスピレーションをもらうのか? それとも子供のためにがんばりたいと思うのか?〉とよく訊かれるけど、そのどっちもあると思う。あとは単純に、いろいろな音楽をたくさん世に出したいと考えるようになったんだ」。

 さあ、新作の話に移ろう。今回は意外にもフォーク・ロック色の強いアコースティック・アルバムに。なぜこうした作品を作ろうと思ったのか、その経緯について語ってくれた。

J MASCIS Tied To A Star Sub Pop/TRAFFIC(2014)

  「変化を付けるためさ。もともとはサブ・ポップミーガン・ジャスパーからの要望だった。凄く昔に〈アコースティックな作品を作らない!?〉と彼女に言われたことがあったんだ。だから、これもその延長線上にある。つまりダイナソーJrと差別化を図った一枚ということだね」。 

 確かに、脱力感を伴いつつもグッとくるマスキス印の歌メロはダイナソーと共通しているが、バンドでのそれとはまた違った哀愁が滲み出ているのも事実。絞り出すような切ない歌い方に、驚くファンは多いだろう。また、キャリア初期からいろいろなことに無頓着なイメージのあるマスキスだが、今作のサウンドの要となるギターにはずいぶんとこだわったようで、新しいものは使わずにヴィンテージの楽器だけを使用したという。

  「古いギターには楽器自体に〈歌〉が潜んでいて、それを引き出してやればいいだけだからね。上手く説明できないけど、古いもののほうが断然良いと思ってしまう。新しいギターを弾くと何か違和感を覚えるんだ」。

 そのようにヴィンテージ楽器特有の丸みのある音色を立たせた楽曲群において絶妙なアクセントとなるのが、キャット・パワーとデュエットした“Wide Awake”だ。

  「曲が出来て聴き返した時、彼女の声が合うんじゃないかって思った。それで〈歌ってくれ〉ってお願いして、しつこく追いかけ回したんだよ。締め切り間際でやっと彼女が自分のパートをレコーディングしてくれた。彼女は最初スティーヴ・シェリーソニック・ユース)のレーベルからアルバムを出して、その後マタドールに移籍してね……何だかんだで長い付き合いさ」。

 そんな旧知の友人による助力もあり、非常にリラクシンな仕上がりとなった『Tied To A Star』。当人はその制作過程をバンドの時と同じくらい楽しめたのだろうか。

  「う~ん、たぶんそれはない。やっぱり轟音で演奏するほうが楽しいな」。

 おや、近年のリリース・ペースを考えれば、ダイナソーの新しい作品が聴ける日もそう遠くはない?……と憶測させつつ、「今後のアイデアについて、いますぐ思いつくものは特にない」とも付け加えるマスキス。本隊の次なるアクションは気長に待つこととして、まずはキャリア中でも特異なこのアルバムをじっくり聴き込みたい。

 

▼関連作品

左から、Jマスキスの2011年作『Several Shades Of Why』(Sub Pop)、ヘヴィ・ブランケットの2012年作『Heavy Blanket』(Outer Battery)、ダイナソーJrの2012年作『I Bet On Sky』(PIAS)、ファックト・アップの2014年作『Glass Boys』、キャット・パワーの2012年作『Sun』(共にMatador)
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