smileY inc.と書いて〈スマイリー〉と読む彼らは、TVアニメ「ゆるゆり」の歳納京子役などで知られる声優の大坪由佳と、ボカロPのゆうゆという、すでに名の知れた2人の〈Y〉によって結成された期待の音楽ユニット。名前の〈inc.〉の部分が示す通り〈企業〉というコンセプトを掲げており、大坪が〈社長兼ヴォーカル〉、ゆうゆが〈秘書兼プロデューサー〉という役職に就任。社員(=ファン)をはじめ関わる人すべてに笑顔を届けたいという理念は、元気ハツラツなキャラを多く演じてきた大坪のイメージにピッタリだ。

 「大坪さんは、初めて会ったときからすごく元気でいい子だなって思って。実際に現場でも大坪さんが入ってくると、スタジオのムードが明るくなるんですよね。人を元気にする力があると思います」(ゆうゆ:以下同)。

smileY inc. 『花雪』 DIVEIIentertainment(2014)

 そんな魅力を踏まえつつ、作詞/作曲/編曲のすべてを担当するゆうゆのリードにより、彼女の歌手としてのまだ見ぬポテンシャルを引き出すことに挑戦したのが、今回のデビュー・シングル“花雪”。表題曲は、よさこい踊りに情熱を注ぐ5人の女子中学生の青春模様を描いたTVアニメ「ハナヤマタ」のエンディング・テーマで、大坪の芯の強い歌声のなかに大人びた表情が混ざり、サビ部分の和テイストな旋律も相まって艶やかで可憐な印象を残す。

 「まず原作の漫画を読み込んで、その世界観にシンクロすることを意識して作りました。読んだときに作品全体から和の雰囲気をすごい受けたので、じゃあそれをどんどん出していこうと思って。もとからそういう和風っぽいメロディーが得意というか好きなので、そこは惜しみなく出しましたね(笑)。それに、大坪さんはキャラクター・ソングをたくさん歌ってますけど、歌い方とか声のトーンは元気な感じのものが多かったので、多分ファンの方にはそういうイメージがあるんじゃないかと考えて。なので、声の力は残しつつ、いままでとは違ってしっとりした部分を出すというのを意識しました」。

 一方のカップリング曲“花憐のスゝメ”は青春のキラメキを全開にしたような、表題曲とは対照的な色合いを持つアップ・チューン。社長の〈ウーッ! ハイッ!〉という合いの手も可愛らしい、ライヴ映えしそうな一曲だ。

 「こっちに関しては大坪さんのイメージを遠慮なく出して、そのまま元気な曲でいっちゃおうと。『ハナヤマタ』は女の子たちの葛藤だとか、あんまりポジティヴじゃない部分も描かれてるんですけど、そういう落ち着いた部分は“花雪”のほうに込めたので。キャラクター同士のドタバタ感だったり、女の子らしい元気なやり取りとかはカップリングのほうで出せたらなあって」。

 もともとアニメ好きだという彼ならではのこだわりによって、歌詞やアレンジに至るまで「ハナヤマタ」とリンクする仕掛けが施された本作。大坪は同アニメに声優として出演しているほか、メイン・キャストから成るチーム“ハナヤマタ”名義でオープニング・テーマを担当するなど、その世界に深く関わっているからこそ、楽曲に込められた細かなニュアンスを表現できるわけで、このタッグの相乗効果は絶大だ。

 「社長ありきの会社なので、社長がいかに良い形で動けるかをサポートできればと思って。〈秘書〉って肩書きは気に入ってます(笑)」。

 

▼関連作品

左から、チーム“ハナヤマタ”のファースト・シングル“花ハ踊レヤいろはにほ”(DIVEIIentertainment)、ゆうゆの2012年作『早退系持論』(クラウン)、大坪由佳が参加する七森中☆ごらく部の2013年のシングル『マジカル大☆大☆大冒険!~七森中☆ごらく部inマイリトルポニー~』(ポニーキャニオン)

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