ミュージカルの古典的名曲を本来の姿で!

 今年25周年を迎えたミュージカル俳優、岡幸二郎が満を持してアルバムをリリース。『ベスト・オブ・ミュージカル』だ。「出演した作品や出ていなくても好きな作品」の中から岡自身が厳選したミュージカル・ナンバー25曲を収める。しかも日本フィルハーモニー交響楽団と共演。極めて特徴的なアルバムとなった。

 「フルオケで成立する曲を基準として選曲し、例えばロック系の“レント”など電子楽器を使用する作品は入れませんでした。オケの贅沢な曲ばかりです」

岡幸二郎 『ベスト・オブ・ミュージカル』 コロムビア(2014)

 フルオケに拘った理由を問うと、答えは明確。

 「私がミュージカルを始めた頃は30人編成のオケでしたが、例えば、今、私が舞台に立っている『レ・ミゼラブル』など、14人編成です。回数を重ねる毎に編成が少なくなり、減る分電子楽器が加わる。それがとても残念で、本来オケ用に書かれた作品をきちんと演奏するとどんな音になるかを残したかったんです」

 岡は子供時代から、のど自慢荒らしだったという。15歳の時には故郷福岡県大川市開催の古賀政男音楽祭で最優秀賞も獲得した。同年「コーラスライン」福岡公演を観て、ミュージカルに開眼。スターを夢見て上京し、大学では中国語を専攻。書道の腕も磨いた。

 「大学は一日も休まず、成績も良かったですね。それでも歌の夢は持ち続け、大学1年の秋、大学の合唱団に入りました。するとここが晋友会に属し、いきなり小澤征爾指揮で歌うことに。その後、朝比奈隆指揮のワーグナーなど様々な体験をしましたが、3年になり〈合唱をやりたいんじゃないよな〉と休部。ディズニーランドでバイトしたんです」

 そこで劇団四季の情報を得て、オーディションを受けて合格。その後の岡の活躍は今更言うまでもないだろう。さらに骨董、着物の趣味や巧みな話術を活かした幅広い仕事をこなし、後進の指導にもあたる。

 「役者は無駄なことはない。例えば中国語を使うことはないと思っていたら、『李香蘭』の中国公演で通訳兼出演者として同行。その公演のテレビ番組では通訳とインタヴュアーもしたんですから」

 そんな彼の今回のアルバムには、大切な仲間がコーラスなどの共演に駆け付けてくれた。彼ら仲間たちのためにもとCDにはカラオケを付けた豪華版だ。

 「私達は舞台以外でも歌う。歌いに行ってピアノだけでは寂しいものです。だったら若い俳優達もこれを使ってあちこちで歌い、稽古にも使ってもらいたい。私もこういうのがあったらいいと思っていたんですよ」

 プロデューサーとしての手腕も見事だ。これからの岡幸二郎は、そんな才能も花開くに違いない。現に劇場のプロデュースが進んでいるらしい。目が離せない。

 


LIVE INFOMATION
25周年スペシャルコンサート
2014年11月26日(水)東京オペラシティ
開演:19:00

2014年11月29日(土)東京芸術劇場 中ホール
開演:19:00
http://kojirooka.tonosama.jp/