INTERVIEW

livetune 『と』 前編

ただ良い曲だけをめざして〈と〉をいくつも繋いだら……【特集】ダンスフロアはいま、どこにある? Part.6

DANCE BETWEEN THE LINES
[特集] ダンスフロアはいま、どこにある?

オンもオフもなく、多才な音楽家が自由に活躍する昨今。何かと何かの間に広がる巨大なフロアは、こんなに楽しいダンス・ミュージックで揺れているよ!

 


 

 

〈歩〉から〈と金〉へ

 ボカロPからキャリアを出発させたlivetuneがさまざまなヴォーカリストを迎える〈adding〉シリーズ。約2年に渡る同プロジェクトが、このたびついに一枚のアルバムとして形になった。そのタイトルは『と』。それはもちろん〈adding〉を意味する〈と〉でもあるし、他にはこんな背景もある。

livetune トイズファクトリー(2014)

  「これをきっかけとして実際に会って、それから友達になった人も多いんです。だから友達の〈と〉だったり、〈together〉の〈と〉でもある。ヴィジュアル・イメージが将棋の駒なのは、僕はひとりでインターネットに曲を上げるところからスタートして、いまはいろんな人と曲を作れるようになったというところで、〈歩〉から敵陣に攻め込んで〈と金〉になるっていう、ヒップホップで言うところのメイク・マネーみたいな意味もあります。そんなこともあって、検索しづらい言葉ではあると思うんですけど、世界一短いタイトルになりました」。

  〈と〉の輪は広がりを増し、今作には新たに原田郁子クラムボン)、YUKAmoumoon)、NIRGILIS鬼龍院翔ゴールデンボンバー)といった具合に、livetuneでしかあり得ない豪華絢爛な面々が集結している。

  「原田さんは単純に昔から好きで。クラムボンのリミックスをやらせてもらったりして、最近はミトさんと話すことも多いので、ミトさんに〈原田さんに歌ってほしいんですよ〉って言いました。立石の飲み屋で(笑)。“ファンタジア”はクラムボンを好きな方にも気に入ってもらえるような曲にしたいなと思って作りました。原田さんの包み込むようなヴォーカルは何かが始まる感じがするというか、(アルバムの)スタート感が合うと思うんです。1曲目がピアノと原田さんの声で始まるっていうのは最初から僕のなかで決まっていました」。

 制作の順序としては「まずヴォーカルを決めていきました。その歌い手の人がどういう曲を歌ったらいちばんピッタリくるかなっていうのを考えてやってます」とのことで、結果的にその音楽性の幅広さは途轍もないものになっている。アルバムに先駆けてシングル・カットされる“千の翼”は9mm Parabellum Bullet菅原卓郎をヴォーカルに迎えたハードでカオティックなロック・ナンバー。これがlivetune作品として収録されていることに驚く人も多いのではないだろうか。

  「何が9mmの凄さなんだろうって考えたときに、卓郎さんのヴォーカルの存在感はもちろんなんですけど、やっぱり滝善充さんのギターが凄いよなと思って。じゃあギターだろうということで、がんばって弾いて作りました。本番では滝さんに弾いてもらっているんですけど、フレーズはだいたい自分で考えてます。それとこの曲はアニメ(『Re:␣ハマトラ』)の主題歌なんですけど、スタッフ側から〈ソリッドなバンド・サウンドが欲しい〉っていうオーダーもあったので、こういうサウンドになりました。ギターはいままでも生っぽいニュアンスが欲しいときにちょこちょこ登場してはいたんですけど、僕もここまでやるとは思ってなかったですね(笑)」。


自分なりの人脈で、ただ良い曲を

 はっきり言って全曲がハイライト状態で、どこも聴きどころと言えそうだが、なかでも極めつけは鬼龍院翔を迎えた“大好きなヒトだカラ”だろう。カラオケボックスで愛を叫ぶという、メタでベタでユーモラスで泣ける、壮大なバラードとなっている。

  「曲調から何から何まで異色ですね。いっしょに歌詞を作ったAkira SunsetさんがよりJ-Popっぽい方向に持っていってくれて。最初は“ヒトカラ”っていうタイトルだったんですけど、〈こっちのタイトルにしようよ!〉って付けてくれたんです。やりすぎかなと思ってビビリました(笑)。これは、鬼龍院くんだからこそできた曲ですよね。せっかく彼が歌ってくれるんだから、僕が普段いないシーンに対して作りたいなって思って。〈J-Popって何だろう?〉って考えたときに、やっぱりわからないところがあって。ひとりで作ろうとしても若干難しくなっちゃうんですけど、それをどこまでローカライズして、ドン・キホーテ的なものにできるかっていう挑戦でした。弦も弦一徹ストリングスさんにお願いしてます。この曲のMVが最高に笑えますよ」。

 お茶の間まで訴えようとするその心意気はどこから来ているのだろうか。

  「それこそメイク・マネーの発想で、どうせやるんだったらどんどん突っ込んでいきたいっていうのは前からよく話していて。せっかくのアルバムを保守的に作ってもおもしろくないから、行くとこまで行こうと。レコーディングもすごい楽しかったです。鬼龍院くんが〈何かやりたいんだよね〉って言って、やってもらったのが終盤に出てくるGLAYTERUさんみたく駆け上がるようなヴォーカルです。自分だったら思い付かないラインですよね。〈おもしろい、採用!〉って(笑)」。

 これだけめちゃくちゃなメンバーで、かつ圧倒的なテンションの高さでまとめ上げた仕上がりはm-floの〈Loves〉シリーズを想起させるもので、ポップス作品としての強度も計り知れないものがある。〈Loves〉が何作か続いたように、〈adding〉は今後も続いていくのだろうか。

  「やっぱり〈Loves〉に対しての憧れはありました。僕なりに表現するのであれば、自分らしい人脈でやりたいっていうのが始めた当初からあって……でも本当に大変でした(笑)。アニメ界隈とかモデルさんとかバンドとか、ヴォーカルの幅が広いし、ダンス・ミュージックだけじゃなくてただ良い曲をやりたいだけなので、曲調も広くなるし。これを聴いてlivetuneはピコピコだけじゃなくてこういうのもあるんだって思ってもらえればいいかなと思ってます。このシリーズに関しては、とりあえずお疲れさまでした、というところですね。次の一手は考えてますよ、将棋だからってわけじゃないですけど(笑)。早いうちに聴かせられるんじゃないかと思います」。

 

 

▼関連作品

左から、livetune adding Takuro Sugawara(from 9mm Parabellum Bullet)のシングル“千の翼”(トイズファクトリー)、〈loves〉シリーズの最終章となったm-floの2007年作『COSMICOLOR』(rhythm zone)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ

 

 

▼livetuneの外仕事を一部紹介

左から、May'nの2014年のシングル“今日に恋色”(flying DOG)、Dancing Dollsの2014年のシングル“monochrome”(ソニー)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ

 

タワーアカデミー
pagetop