BAMを掲げた3年前の『Bitches』で賛否を呼んだっぽい革新犯の新作。昨年のコンセプト作『Sketches Of Spain』には帝王への敬意からトランペット奏者として臨んでいたが、今回は冒頭曲を除いてフェンダー・ローズから繊細な銀河の煌めきを紡ぎ出すことに専心している! 途中で誰か歌い出すんじゃないかと期待してしまうほど黙々と快く熟れた、ニュー・ソウルフュージョンの間を揺らぐ真夜中のメロウ・グルーヴ集。最高。

 

BAMの旗手ニコラス・ペイトンの新作が登場…ですが、これまた波乱を予感させる一枚です。彼のトレードマークである溌剌としたトランペットは本作ではほぼ聴こえず、代わりに台頭しているのはBAM以降の彼のモードを示すフェンダーローズ。ラフな状態で仕上げられたファンキーな「何物か」には具象的なモチーフやタイトルが一切与えられず、存在するのはシンプルなナンバリングのみ。ジャズの長い歴史に基づく…乱暴に言ってしまえば前代的な楽器の象徴とも言えるトランペットを置いたニコラス、歴史や柵を振りほどいてでも彼が追い求めるBAMの理想郷こそがこれだということ、なのでしょうか。