もちろんそれまでも着実に知名度をアップさせながら、DJ RYOWがシーンの厚い支持を受けてきていたのは間違いない。キャリアの発端となるクラブDJとして日本全国を回り、ある時にはAK-69のライヴDJとしてさまざまな現場を経験。サウンド・クリエイターとしても活動し、一方ではイヴェントのオーガナイズやアパレル・ブランドの運営など、まさにヒップホップにまつわるさまざまな側面をみずから体現してきていたことは誰もが知るところだろう。

DJ RYOW #IDWT -IN DREAMS WE TRUST- MS(2014)

 ただ、もどうしてもデカすぎる象徴を背負ってしまった名古屋のシーンにあればこそ、彼がTOKONA-Xをフィーチャーして作り上げた“WHO ARE U?”が愛されるとき、どれほどDJ RYOWのことが認識されてきたのだろうと皮肉に思ったこともないではなかった。つまり彼は比較的無名のまだ早い段階でクラシックを生み出してしまったのだ。しかも尋常ならざる思い入れを抱かれる名曲として。だからこそ、前作『LIFE GOES ON』に収録された“DON'T STOP”がシーンの隅々にまで大きな広がりを見せた時は痛快な気持ちだった。今回登場するニュー・アルバム『#IDWT -IN DREAMS WE TRUST-』は、いまや真の意味でシーンに欠かせないキーマンとなったRYOWならではの采配で、AK-69やZeebra般若M.O.S.A.D.ANARCHYPUSHIMAKLOKOHH田我流紅桜……というふうに、時代の旬と歴史の流れをキャッチしたアグレッシヴな楽曲がひしめき合っている。TOKONA-Xのリミックスがあるのも嬉しいし、そこにSOCKSSTEALERGIANGOYUKSTA-ILLが隣り合う様も美しい。これは今年最大の注目作のひとつだ!