ギラつくエレクトロ・ビートで東京の夜を盛り上げてきたDJコンビの最新モードは、心ざわつくカルトなミックス!?

 ダンス・ミュージックに持ち込まれたロックの衝動性、ジャンル度外視の暴力的なマッシュアップやクイック・ミックスも遥か彼方。エレクトロ以降のダンス・ミュージックを精力的に模索し続けているDEXPISTOLSがミックスCD『LESSON.08 “TOKYO CULT”』を完成させた。ヒップホップに軸足を置いたDJ DARUMAと、芝浦GOLDの最年少DJにして、鉄壁のハウス・ミックス・スキルを誇るDJ MAARの2人は、エレクトロニック・ミュージックをジャックするようにラッパーをフィーチャーするというアイデアをもって、その制作に臨んだ。

 「ヒップホップに対する愛情をコラボレーションという形で伝えてきた僕らは、盛り上がっているいまのシーンに対して外側からアクセスして、異なるタイプの個性をひとつにまとめ上げることができるポジションにいると思うんです」(DJ DARUMA)。

DEXPISTOLS 『LESSON.08 “TOKYO CULT”』 tearbridge(2014)

  最初の構想はその後変化していったが、要所要所にDABOをはじめ、OHLI-DAY、JON-E、KICC、K.A.N.T.A、KOHHといった話題の若手や、シンガーとしてThe SAMOSのShigeoJDをフィーチャー。そんなDEXらしい刺激的なクロスオーヴァーは本作の聴きどころのひとつである。

 「BPM140のトラックにラップを乗せるという1年前のアイデアが変化していって。活性化しているベース・ミュージック、なかでも〈ポスト・ダブステップ〉と呼ばれるダブステップ以降のトラックやその流れにハマるテクノやハウス、同じベース・ミュージックでもテンポが遅いトゥワークも入れたかった。そうやって、あれこれ曲を選んでいるうちに、異なるテンポ、ジャンルのトラックが混在していったんです」(DARUMA)。

 滑らかなビート・ミックスではなく、頻繁なテンポ・チェンジ、シーン展開を繰り返す本作には、〈OUTLOOK JAPAN FESTIVAL 2012〉のサウンドクラッシュ・チャンピオンであるHABANERO POSSEやTAAR、女流ベースDJ/プロデューサーのASHRAやDJ RSといった東京の新たな才能によるカルトなトラックを収録。彼らが仕掛けたミステリアスなトラップの数々は、スリルを喚起しながらリスナーを迷宮に誘う。

 「きっと、いまの分裂気味な世相が反映されてるんですよ(笑)。えっ、それは俺? 確かに〈ジャンルを崩すのはあなたが先頭を切ってることが多い!〉ってよく言われるけど、自分としては崩したものを整えてるつもりなんですけどね(笑)」(DJ MAAR)。

 彼はうそぶくが、DEXの真骨頂である絶え間ないスクラップ&ビルドは、本作にあって、やりたい放題を超え、痛快ですらある。

 「振り返ると、ある時期は〈日本のダンス・ミュージックをおもしろくしたい〉と意気込みすぎ、バランスを意識しすぎだったかも。でも、俺は天才でもスーパーマンでもないから、自分にやれることは大したことないんですよ。そういう認識に立てた時、そこで気が楽になったというか、自分たちがおもしろいと思ってるものをやらないと続けられないし、カッコイイと思うものはまだまだありますからね。そういう思いが今回のミックスCDにも繋がってるんです」(MAAR)。

 

▼関連作品

左から、DABOの2010年作『HI-FIVE』(ユニバーサル)、K.A.N.T.Aの2011年作『ROYAL NEW STANDARD』(KANTALAND)、The SAMOSの2012年作『Crystallized』(SCM)、DJ RSの2013年のミックスCD『Uncompleted』(Connection)、サーキンの2011年作『USA』(Marble)
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 ここでは近年のDEXPISTOLSの関連盤を紹介! ZeebraやVERBALらを迎えた待望の初オリジナル作『LESSON.07 “Via”』(tearbridge)をリリースした2012年は、w-inds.のアルバム『MOVE LIKE THIS』(ポニーキャニオン)や加藤ミリヤのシングル“HEART BEAT”(ソニー)にもリミックスを提供。2013年には新レーベルのSUB TRAXを立ち上げ、Frankoの“Purple Slacks”を配信限定でリリースします。個々ではDJ活動が中心でリリースは多くないものの、DJ DARUMAは〈夏〉をテーマにした日本産ヒップホップのミックスCD『3 WORDS RADIO “SUMMER, SHOWER, SODAS”』(OCTAVE)を発表、対するDJ MAARは実弟TAARによるリミックス盤『re:abstrkt』(TAAR)にSupermaar名義で参加しました! *bounce編集部
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