ドイツ入りし、その日はベルリンへ。
ヴァン、それにアンプや機材のハイヤーもあり、日中はオフというよりバタバタとベルリン中を移動の嵐。
翌日ハンブルグでのフェス出演、さらに同日夜はベルリンにてわれわれのワンマンと、ハード・スケジュールが続くなか、ベルリンにはそれぞれ友人も多く住んでいるので二手に別れ、ぼくと門ちゃんは、元S.C.U.Mの若きシンセマエストロ、サミーの家へ泊めてもらうことになり、翌日のライヴ2発に備えて夜は休もうと、コウヘイ君とタイゲンと別れ、とりあえず解散。
とはいえ泊めていただく身であり、かつサミーとも会うのは実に久しぶりであって、再会を祝ってビールを呑みはじめる。

 

かれこれ長い付き合いのサミー

 

すでに酩酊気味

 

ベルリンはイギリスのようなケミカルまみれの粗悪な缶ビールはなく、上質なドイツ製造の瓶ビールがメインで、それが1ユーロほどと、ビール党にすれば天国のような場所であります。さらに、瓶をリサイクルする習慣(1本ごとに8セントもらえる)が国民の間で非常に習慣化しているので、家でパーティーして呑んでも、ボトルはキープしてお金に替える、路上で呑もうが、ホームレスや別の誰かが勝手に拾ってゆくわけでして、そのおかげで街は清潔を保たれ、ホームレスもその日の食料にありつける、夏に浮かれる人々は気兼ねなく路上で楽しめる、と非常に効率的な環境。ぼくと門ちゃんのようなビールをこよなく愛する人間にとって、この環境は楽しくないわけがありません。
その日は件のサミーがBlack LodgeなるバーでDJするというので、顔を出しに。

 

ルークとエドガー、門ちゃん

 

日付も変わり、午前4時にわれわれのステイ先のクロイツベルクにヴァンが迎えに来たにもかかわらず、ぼくと門ちゃんは寝坊していまい、他2人、そしてドライヴァーのキャシーに大迷惑をかけてしまいましたが、夜通しのドライヴでなんとか朝9時、ドイツ北部・ハンブルグ近郊のフェス会場に到着。

前日にマリリン・マンソンがヘッドラインを務めたとあって、非常にダークで、インダストリアルな趣のフェスでして、われわれのような格好や音楽性のバンドは皆無。お客さんは全身黒ずくめ、さながらRPGのコスプレ大会のような客層。
なかなかにしてこういった経験もできないので、われわれは常日頃、音楽性や嗜好が違いすぎるなどの理由でそこまでライヴのオファーを蹴ったりはしません。
新たな層のお客さんを引き込むことはもちろん、われわれ自身にとっても挑戦であり、新鮮であり続けることができるからです。
常に受け入れられる環境で演奏していると、惰性に走ることは周知の通り。
とはいえ、メインステージの一発目、午前11時オンステージ、なかなかにチャレンジングな経験でしたが、結果的に良きライヴができたと思います。

ライヴを終えて昼食をとり、すぐに一路ベルリンへドライヴ。
イースト・ベルリンのMagnet Clubというヴェニューで、すごく良い場所でした。
到着するなりサウンドチェック。
余談ですが、この日のベルリンは本当に暑く、30度をゆうに超える夏日和。
宿酔の後遺症と暑さのせいで、またしても立っているだけで汗をかくネクスト・レヴェル。
しかし、ビールが本当に美味い。こういう時。

ベルリンでライヴをしたのは過去1回のみ、しかもカルトのサポートだったため、事実上ヘッドラインとしては初めてでした。しかも、いきなりワンマン。
まだまだ一部のヨーロッパでは知名度がないわれわれなので、正直集客が心配ではありましたが、ステージに上がればすでに歓声が。
お馴染みベルリン在住のサウンドエンジニア、ゴウ君も駆けつけてくれました。
ワンマンの醍醐味というのは、他の共演者がいないためにバンドもオーディエンスも、それだけを目的として演奏し、集まるわけです。
あたりまえのことですが、他の一切に干渉されないこの状況というのは、非常に重要で、われわれBO NINGENのありありとした現在をそのまま凝縮した空間が生まれ、ライヴ・パフォーマンス本来の意味に立ち返るような、儀式的なものになります。

1時間強のロングセットを終え、大盛況にて幕。スウェーデン、もっと言えばポーランドから始まった、ライヴ→睡眠をほぼ伴わない移動、のループが、ついにこのワンマンでひとまず終わったかと思うと、急に疲れが襲ってきて、その日は街へ繰り出すこともなく(とはいえヴァンを停めに行った帰り、門ちゃんと呑みながら歩いて帰りましたが)、サミーの家に着くやいなや、交わされる言葉もなく、2人とも轟沈。きづけば昼すぎでした。

 

ハードコア・豪

 

それから5日間はベルリンでオフ、やっと休み。
かといって別段観光をするわけでもなく、サミー宅のあるエリア、クロイツベルグ界隈でただ友人たちと呑み歩いていただけのような記憶があります。
ベルリンはロンドンや他のヨーロッパ諸国の都市と比べても、特にリラックスしている街で、月曜の夜にもかかわらず街や路上は人で溢れています。
バーも常に満員状態。物価や家賃も驚くほど安く、フルタイムで働く必要がないため、非常にユートピア的雰囲気を持った街です。
今回のわれわれのようにホリデーや訪れるぶんにはこれ以上なく楽しめる街ですが、住むにはなかなかに難しいところだろうな。
何もしなくてもいい、ある意味、逆にいつでも何でもできるという概念に捕われてしまう。だからクリエイティヴであり続けるには、根気と自律が必要なんでしょう。
友人であるエンジニアのお馴染みゴウ君は、ベルリンを〈流刑地〉と形容しましたが、なるほど、意外にもウィットに富んだ皮肉だな、なんて思ったり。
いや、退屈な話をしました。

 

近所の大型ミュージック・コンプレックス、ジャストミュージック

 

門とふたりでひたすら往来を眺める

 

オフ

 

煙が目にしみる

 

散歩

 

池呑み

 

安定のストラッセ・ドリンク

 

ルビー、イーザ、アキヒデ

 

やっちまった……

 

とはいえ行きつけの美味しいフレンチ・バーもできましたし、公園でビール片手にピクニックも十分に堪能、夜はもちろん飲み歩き、十分すぎるほど楽しみました。
次はもう少し、郊外や廃墟などへ観光もしたいな。
サミーや友人たちに別れを告げ、このツアーの千秋楽であるオーストリアへ向けてまたも深夜のドライヴ。
オーストリアでは〈Frequency Festival〉というフェスティヴァルで、先日のゴシックなフェスと打って変って、非常にポップなラインナップのイヴェントでした。
なかにはイングランドのワーキング・クラス代表のプリンセス、リリー・アレンなんかもいたり。
ここオーストリアでの演奏も初めてでしたので(しかもメインステージ)、オーディエンスをしっかり掴めたのではないかと思います。
いつも通りフリークアウト、ついにヨーロッパでの夏のライヴが終わり、ウィーンへ移動して一泊。

 

運河呑み

 

夜に運河沿いで軽く呑みつつ、冷え込む空気に、〈終わったなあ、はあ、ウイスキーでも呑みたいナ〉などと独り想いつつ就寝。こうひとくちふたくち、小さなボトルの1/3ほど呑んだあたりで、ポツ ポツ、と身体の芯があったまってくるあの感覚、日本のようなネオンの渦も、ヨーロッパのオレンジの街灯も、等しく都市の夜の光を眺めながら、〈うまい……〉と思えるあの感覚。
世界中どこにいても同じなんだな、と全然関係ないことを感じたところで締めさせていただきます。

この記事がアップデートされる頃には、ロンドンでのヘッドライン・ショウ、アイスランドでのミュージック・ビデオ撮影、フィンランドでのライヴを経て、ロンドンへ戻っている頃合いですが、これらのお話は次回、門ちゃんが甘美に、またいつもの調子で綴ってくれると想います。

9月末よりカサビアンとの北米ツアー、11月のバンド・オブ・スカルズとのUKツアー、さらにサヴェージズとのコラボレーション・アルバムのリリース、そしてマイケル・ギラスワンズ)のキュレーションによるオランダのイヴェントで、サヴェージズとの共作曲“Words To The Blind”を実演。

【参考動画】共に、BO NINGENとサヴェージズのコラボ作『Words To The Blind』トレイラー映像

 

そのさまざまな時空と音楽の旅を、文字通り、越えて。

11月末~12月の日本ツアーも発表になりました。
もう少し先になりますが、ワンマンはもちろん、各地で演奏できること、GEZANと共にツアーを回ること、皆様に会えること、音楽に奉仕できる歓び、すべてに感謝して、楽しみにしています。
それまで、皆様ご自愛を。

【参考動画】BO NINGENの2014年作『III』収録曲“Slider”

 

PROFILE/BO NINGEN


Taigen Kawabe(ヴォーカル/ベース)、Kohhei Matsuda(ギター)、Yuki Tsujii(ギター)、Akihide Monna(ドラムス)から成る4人組。2006年、ロンドンのアートスクールに通っていたメンバーによって結成。2009年にアナログ/配信で発表した 『Koroshitai Kimochi EP』が現地で話題となり、UKツアーのみならず、日本盤の発表後は日本でのツアーも成功させる。2011年にミニ・アルバム『Henkan EP』、2枚目のフル・アルバム『Line The Wall』をリリース。昨年から今年にかけて、〈フジロック〉やオーストラリアの〈ビッグ・デイ・アウト〉、USの〈SXSW〉〈コーチェラ〉といった各国の大型フェスへ出演し、ますます注目を集めるなか、待望のニュー・アルバム『III』(Stolen/ソニー)をドロップ。Yukiの文中にもある通り、9月のカサビアンとの北米ツアーなどなどを経て、11月後半から待望の来日公演が決定! 詳細は以下! そのほか最新情報はこちらのサイトでチェックを。

【BO NINGEN HEADLINE LIVES 2014 ~PLAY ALL】
■11月29日(土)東京・代官山UNIT ※ワンマン

【BO NINGEN/GEZAN JAPAN TOUR 2014 ~Tremolo Never Knows】
■12月6日(土)福岡・VOODOO LOUNGE
■12月8日(月)大阪・PANGEA
■12月9日(火)名古屋・CLUB UPSET
■12月14日(日)仙台・PARK SQUARE