INTERVIEW

勝手にしやがれ 『パンドーラー』

パンドーラーの匣を開放して最後に残るのは希望か、それとも……? 骨太な思想とこだわりの音が問題意識を刺激する13編の寓話たち

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  • 2014.09.24
勝手にしやがれ 『パンドーラー』

 勝手にしやがれ史上、最大の衝撃作にして問題作。〈震災以降の日本が抱える問題を、架空の物語に仕立てた13曲〉というコンセプトを持つニュー・アルバム『パンドーラー』は、武藤昭平(ドラムス/ヴォーカル)という男の骨太な思想、優れた歌とソングライティング能力、バンドの表現力を余すところなく発揮した驚くべき作品だ。冒頭の2曲、武藤が国会前の反原発デモに参加した時に閃いたという“パンドーラーの匣”は、原子の力の危険を暴いて〈いますぐ立ち上がれ〉とアジテートし、“Dr.ベクレキュリー”では、禁断の物質を発見してしまった化学者の悲しい独白を劇的に歌う。武藤の放つメッセージは明確だ。

勝手にしやがれ パンドーラー UKプロジェクト(2014)

 「“Dr.ベクレキュリー”は、いままでにない物質を発見して、初めは称賛を浴びるけど、実はとんでもない物質であることがわかって、悩んで、未来に向かって〈大丈夫ですか?〉と訴える曲なんだけど。もしもそういう博士がいたとして、彼を責めることはできないと俺は思うんですよ。そういう嘆きのストーリーとして歌詞を書いて、Facebookに載せたんだけど、ファンの方のなかには、人類にとってとんでもないことをしておきながら、わがままな言い分だと捉える人もいた。でも、それでいいんですよ。俺が言いたいのは、反原発でも反戦でもなくて、ひとりひとりがしっかり考えを持ってほしいということ。震災から時間は経ったけど、忘れちゃいけないことはいっぱいあるから、そこから目を背けてハッピーな曲を書いても何の意味もない。だから一応は全部架空の話になってるんだけど、照らし合わせてみたら〈なんだ、全部日本の現状じゃん〉というものを作りたかったんで」。

 言葉だけではない。TOSHI-LOWBRAHMANOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)の強烈なヴォーカルをフィーチャーした“パンドーラーの匣”は、ブルースとレゲエの要素が濃密に溶け合い、“ネヴァー・トゥー・レイト”は古いリズム&ブルースやソウルの香りがする軽快な曲で、“アイ・ラヴ・ユー・アゲイン”はとびきり美しいメロディーのジャズ・バラード。どの曲も素晴らしいが、コンプレッサーを使わずに仕上げたという、奥行きと温かみのあるサウンドが最高だ。

 「フェス仕様の音作りというのか、コンプレッサーで圧縮して音のレヴェルをかせぐ作り方にずっと違和感があったんで。今回、音は相当いいと思いますよ。どの音も割れてないし、息遣いが聴こえるくらいクリアになってる。俺の声があんなに歪んでるのは、地声なんだということもよくわかると思う(笑)」。

 バンドの友人である俳優のオダギリジョーが作曲を手掛けた“ゼチェ・プラジナイズド”をはじめ、物語を繋ぐ役割として収録された5曲のインスト・ナンバーにもそれぞれ意味がある。が、構えて聴く必要はない。まるで一本の映画を観るように、ゆったりと音楽に身を任せれば、武藤がこのアルバムに託した思いがきっと見えてくるはずだ。

 「良いエンターテインメントのアルバムにしたかったんですよ。例えば『アバター』はすごい娯楽(作品)だけど、その底辺に人種差別や国の問題が入っていたりする、そういうものを作りたかったので。娯楽で聴いてもらって、でも〈ベクレキュリーって誰だろう?〉とか、〈自分はどう考えるべきなのか?〉とか、ちょっとでも思ってくれたらいいと思います」。

 

『パンドーラー』参加アーティストの作品
左から、TOSHI-LOWが所属するOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDのニュー・アルバム『FOLLOW THE DREAM』(トイズファクトリー)、オダギリジョーの2006年のミニ・アルバム『WHITE』(ビクター)
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 ここでは勝手にしやがれの近年の活動を紹介! 結成15周年となった2012年は、3年ぶりのオリジナル作『メロディ』(UKプロジェクト)と、メジャー時代の人気曲に未発表音源などを加えた『ベスト シルバー & ゴールド~ゴールド 2004-2010』(ソニー)を含む2枚のベスト盤を立て続けた彼ら。さらに武藤はウエノコウジとのデュオ名義による第2弾『'S Wonderfull』(UKプロジェクト)でガット・ギターの腕前も見せつけました。ライヴ三昧の2013年を経て、2014年にはバンドがかねてより計画していた渡辺俊美とのコラボ盤『PLAY』(TOWER RECORDS)が登場。武藤は加山雄三らとのスペシャル・バンド、THE King ALL STARSにも参加し、初フル作『ROCK FEST.』(TOWER RECORDS)ではドラム演奏から作詞/作曲まで、八面六臂の活躍ぶりでした! *bounce編集部

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