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【IN THE SHADOW OF SOUL:ソウル・ミュージックの光と影(連載)】[第76回]全力でフル・フォース Part.1

伝統的なソウル歌唱と筋肉質のバンド・サウンドをストリートで結び付け、アーティストとしてもプロデューサーとしても時代を作った不動の6人。30周年を祝う新作で帰還を果たしたフル・フォースは、ゲット・ビジーでワンモアタイムよ!

【IN THE SHADOW OF SOUL:ソウル・ミュージックの光と影(連載)】[第76回]全力でフル・フォース Part.1

 その名がクレジットされていれば無条件で傑作認定してしまいたくなるほど、フル・フォースに対する信頼は厚い。NYブルックリン出身で結成されたこの6人組は、80年代中期、アンサー・ソング・ブームを巻き起こしたUTFOの“Roxane Roxane”のプロデューサーとして世に登場し、リサ・リサ&カルト・ジャムを手掛けたことがきっかけとなって当時のCBSコロムビアと契約。トラブル・ファンクを思わせる筋骨隆々な姿で我々の前に現れた。

【参考動画】リサ・リサ&カルト・ジャムの85年作『Lisa Lisa & Cult Jam with Full Force』収録曲
“All Cried Out”

 

 それから30年、バンド名義の作品を出しながら裏方として活動してきた彼らは、初期に手掛けたサマンサ・フォックスラトーヤ・ジャクソンよろしく、90年代以降もセレーナアシャンティリアーナリル・キム安室奈美恵など、アーバン・シーンにおける女性アイドル/アイコンたちの面倒を見てきた。一方で80年代のジェイムズ・ブラウンファンク復権の徒党を組めば、ボブ・ディランの楽曲にコーラスで参加。その柔軟で万能なセルフ・コンテインド・バンドぶりは現在のザ・ルーツのようだとも言える。また、生演奏バンドで制作にも関わったという意味では、同じ85年にデビューしたステッツァソニックにも通じていたが、ファミリーの結束を重視し、バンド名通りの総力体制でメンバー不動のまま30年間全力で駆け抜けてきたのは彼らくらいだろう。2006年にはメンバーのポール・アンソニーが癌(マントル細胞リンパ腫)と診断され、それも影響したのかプロデュースを含む活動はやや停滞するも、今回の新作『With Love From Our Friends』のリリースである。

【参考動画】リアーナの2005年作『Music Of The Sun』より、
フル・フォースがプロデュースに携わった“That La, La, La”

 

 思えばフル・フォースが登場した80年代中期のソウル/R&Bシーンは生演奏より打ち込みが主流となり、大所帯グループの人員削減が始まった、ファンク・バンドやヴォーカル&インストゥルメンタル・グループにとっては冬の時代。しかし、リード・ヴォーカルのボウレッグド・ルーポール・アンソニー、およびB・ファイン(ドラムス/パーカッション)のジョージ3兄弟と、ベイビー・ジェリー(キーボード)、カートT-T(ギター)、シャイ・シャイ(ベース)という3人の従兄弟から成るこの6人組は、ハウイ・ティーにも助力を仰いで生演奏とテクノロジーを融合し、ソウル・ミュージックの伝統に則りながら、ニューウェイヴや黎明期ヒップホップのストリート感覚をベースにした進取の気性で、すべてをプラスに変えてみせたのだ。

 ソウルへの愛は、彼らの場合、スウィートネスの表出に顕著だろう。リサ・リサ&カルト・ジャムに提供した“All Cried Out”もそのひとつだが、例えば『Smoove』(89年)で披露したスウィート・ソウル・メドレー“4-U(Full Force's Mellow Medley)”でのヴォーカル・グループ的アプローチ。かつてドクター・アイス(UTFO)の甘茶なスロウ・ラップに助力したり、バックストリート・ボーイズインシンクにハーモニーの映える楽曲を提供したあたりにも彼らのスウィートネスへのこだわりが見て取れる。一方で、「クラッシュ・グルーブ」(85年)、「ハウス・パーティ」(90年)、「Who's The Man?」(93年)といったヒップホップ~ニュー・ジャック・スウィング期のブラック・ムーヴィーに出演したFFらしい路上~パーティー感覚は、「ハウス・パーティ」の劇中歌にもなった“Ain't My Type Of Hype”(『Smoove』に収録)を聴いてみればわかりやすい。言ってみれば彼らはパブリック・エナミーガイの中間的な存在であり、ソウル/R&Bとヒップホップの橋渡しということではリヴァートに対抗し得る存在だった。

【参考動画】フル・フォースの89年作『Smoove』収録曲“Ain't My Type Of Hype”

 

 そんな〈橋渡しぶり〉は秘蔵っ子であるシェリル“ペプシ”ライリーEX-ガールフレンドの作品にもよく表れていたし、ゆえにヒップホップ・ソウル時代にイヴェット・ミッシェルモニファらを手掛けたのも自然な成り行きだったはずだ。加えて、サマンサ・フォックスの作品でストック=エイトケン=ウォーターマンの向こうを張るかのようなダンス・ポップを作ったように、ハイ・エナジー~ハウスの取り込みにも積極的だった。そのルーツは、92年作『Don't Sleep』におけるダブル・エクスポージャー“My Love Is Free”のカヴァーにも見て取れるが、そう思うと、新作でEDM調の曲を披露したのも何ら不思議ではない。

 ストリートのエッジとベッドルームの甘美な恍惚を同時に表現し、臆面なくポップに振る舞える総合力。これこそがフル・フォース・ブランド。昨今はソウル/R&Bに対して形骸化を指摘する向きもあるが、それがどうした!と、聴衆をエンターテインしながらブラック・ミュージックの核を見せてくれる彼らは、やはり信頼に足るバンドなのである。

 

▼FF制作曲を含む作品を一部紹介

左から、リアーナの2005年作『Music Of The Sun』(SRP/Def Jam)、アシャンティの2005年作『Collectables By Ashanti』(The Inc./Def Jam)、ブリック&レースの2007年作『Love Is Wicked』(KonLive/Geffen)、ボブ・ディランの89年作『Down In The Groove』(Columbia)、セレーナの95年作『Dreaming Of You』(EMI)

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