THE ART OF BAD ROMANCE
トニー・ベネットとレディ・ガガ、60歳差の熱愛をスクープ?

 デビュー以来のセールスやチャートといった記録面はもちろん、社会現象を巻き起こすほどのカリスマ性やスケール、影響力の大きさをもって無造作に〈ポップ・アイコン〉と呼ぶことを躊躇う必要のないレディ・ガガ。昨年は渾身のサード・アルバム『Artpop』を発表し、先日は公演のために8度目の来日も果たしていたポップ・クイーンの新たなプロジェクトは、大御所トニー・ベネットとのデュエット作品となった。というか、本国USでは序列が逆ということになるのだろうが。 

TONY BENNETT, LADY GAGA 『Cheek To Cheek』 Streamline/Interscope/Columbia/ユニバーサル(2014)

 世代が違えば日本でも〈霧のサンフランシスコ〉(62年)などでお馴染みのポピュラー歌手ということになるのだろう。1926年生まれのトニー・ベネットは、デビューした50年代から60年代にかけて、つまりはロックンロール・エラの到来以前から芸能界で不動の地位を築き、かのフランク・シナトラをして〈最高の歌手〉と言わしめた存在である。そうした背景は知らなくても、近年は各界の後進アーティストと積極的にコラボしてコンスタントに話題作を出しているので、〈よくわからんけど大物〉という認識ぐらいはあるという人も多いだろう。80歳を祝ってディキシー・チックスからジョン・レジェンドまでを招いた豪華な企画盤『Duets: An American Classic』(2006年)にて40年ぶりのプラチナ・ヒットを記録。その続編にあたる『Duets II』(2011年)はキャリア初の全米No.1を獲得している(85歳での首位は最年長記録)。そして、ノラ・ジョーンズやマライア・キャリーらも招集された同作で、エイミー・ワインハウス生前最後の録音と共に評判を集めたのがガガとの“The Lady Is A Tramp”だったのだ。同じイタリア系という共通点はともかく、何せ歌の相性が一聴して抜群だったのだ。ここから始まった縁をアルバムにしたのが、今回の『Cheek To Cheek』だ。

 トニーにとって単独の相手とのデュエット作はKD・ラングとの『A Wonderful World』(2002年)以来となる。どうしてもこの種の企画は互いに箔を付けるためという側面も出てきがちだが、トニーとガガは完璧に息の合ったコンビネーションによって、コラボの必然性のようなものを感じさせてやまない。先行シングルとして発表された“Anything Goes”(コール・ポーター作)を筆頭に、収録曲はいわゆるスタンダードばかり。それぞれの独唱曲も挿みつつ、ナット・キング・コールで知られる“Nature Boy”や、トニーがかつてビル・エヴァンスとの作品でも取り上げていた“But Beautiful”などを2人の世界に染め上げている。

 昨年が災難続きだったこともあり、しばらくは活動意欲を失っていたともいうガガだが、本作のレコーディング期間は大きな救いになったという。包容力のあるヴォーカルでガガの心に活力を与えたトニー。60歳差のカップルが歌の中で育む恋の行方に注目したい。

 

▼関連作品

レディ・ガガの2013年作『Artpop』(Streamline/Interscope)
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▼トニー・ベネットのデュエット作を紹介

左から、2006年作『Duets: An American Classic』、2011年作『Duets II』、2012年作『Viva Duets』(すべてColumbia)
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