INTERVIEW

PAT METHENY UNITY GROUP 『KIN (←→)』

パット・メセニーの描く、今日の空

PAT METHENY UNITY GROUP 『KIN (←→)』

 メセニー、あなたという人は。鬼のように長丁場のツアーをやり、なのにちゃんとレコーディングもして、アルバムのリリースは途切れない。かと思えば、新作のプロモーションのためにわざわざ来日までしてしまうのだから! ああ、音楽のムシ……。

 “あなたがジム・ホールを見上げたように、あなたが下の世代のギタリストたちから憧憬とともに目標とされる存在となっています。来年には60歳にもなりますが、続く後輩たちを導かなきゃとか、考えたりはしますか?” 実は、それが今回の取材の最初の質問。メセニーが滞日したのは、彼が敬愛するジム・ホールが亡くなって間もない時期。その死については皆聞くかもしれないので、少しひねった問いからインタヴューを始めた。

 「いい質問だね。僕は年長のミュージシャンをずっと見上げてきたし、僕も年下の担い手から見上げられる存在であるのは自覚している。実は、新作タイトルの『Kin(←→)』はそういうことを表わしている。この両側を向いた矢印、(←)はジム・ホールのような僕よりも上のミュージシャンをさしていて、一方の(→)は下の世代のミュージシャンたちをさしている。そして、僕たちは川のように繋がっていて、同じものを共有していることを示したかったんだ」

PAT METHENY UNITY GROUP KIN (←→) Nonesuch(2014)

 Kinは親族とか、血の繋がりを意味する。過去の『トリオ99→00』や『トリオ→ライヴ』と同様、→という記号をタイトルに用いている事実には、彼が物事を視覚的に捉えるタイプであると認識させられるか。

 「視覚的というよりは、あらゆる方向で物事を表現していきたいという、僕の思いが出たものだね。演奏をする一方でインタヴューを受けるのもそうだし、またアルバム表記をこういうように視覚的な方向に持って行くのもそうだし。それらはすべて、僕の一つの表現として成り立つ。そういう考えの表われだ」

 さて、そんなメセニーの2014年作『Kin(←→)』のアーティスト名義は、パット・メセニー・ユニティ・グループという。カルテット編成だった同ユニティ・バンドのメンバー(本人に+して、クリス・ポッターベン・ウィリアムズアントニオ・サンチェス)に加え、今作はさらにマルチ・プレイヤーのジュリオ・カルマッシが加わっている。

 「ユニティ・バンド作品を録り、僕はとても楽しんだし、グラミーも受賞したりと成功も収めた。やはり、クリス・ポッターという演奏家とできたのは大きな出来事だよね。それで、その単位で100公演ほどのツアーをやって、バンドは進化し、皆このままバンドを続けたいと思ったんだ。そこで僕は、このユニティ・バンドをやって行くとしたら、もう少し違うこと、それ以上のことに挑戦して行かなくてはならないと思った。前作『ユニティ・バンド』がモノクロのドキュメンタリーであるとするなら、今回は3Dのアイマックス・シアター体験と言えるものにしようと思った」

 なるほど、“3Dのアイマックス・シアター”というのは、まさに的確な説明。新メンバーのカルマッシはウィル・リーの推挙による。彼は2012、2013年のリーの来日公演に同行、キーボード、トランペット、テナー・サックス、ギターなどを曲によりいろいろ演奏し、話題を呼んでいた御仁だ。

 「新たなコンセプトを実現するには、さらに1人か2人ミュージシャンを追加し、そしてオーケストリオン(メセニー考案の、大掛かりな自動演奏装置)も併用しなきゃと思った。新メンバーに関してはソリストを入れる必要はなく、色彩感を加えてくれる人材を迎え入れたいと思った。ジュリオは僕のバンドに入るのが夢だったらしいけど、本当にパーフェクト。彼みたいな奏者に、ぼくはNYで会ったことがない」

 ユニティ・バンドの回路のもと、パット・メセニー・グループの雄大なランドスケープ的表現を求めたように感じます、と彼に伝えると、「まさに、僕はそういうものを目指したんだ」。そこで四方八方に舞う雄大な情景を描くような楽曲群は、すべて2013年に書かれている。

 「収録曲は、ほぼ3、4月に書いた。メンバーには楽譜で渡したけど、1曲目は長い曲なので、楽譜が膨大な量だったな。《ボーン》という曲は5月にブルーノート東京に公演に来たさい、どの曲も構成が複雑なので1曲ぐらいはシンプルな曲が欲しいと思って、東京で書き上げた」

 そのユニティ・バンドの来日公演の際、オーケストリオン音をバンド音に重ねる局面もあったが、今作では鮮やかな色づけや立体感を求めんと、その様が拡大されている思いも得る。

 「今作は全曲で、全面的にオーケストリオンを用いている。オーケストリオンというのは、色を加える作業において、僕のなかでとても大切なものになっているし、今後も僕の作品のなかでは使って行くと思う。僕はまだ、オーケストリオンの可能性の表面しかなぞっていないな」

 クールなメセニーは、答えを返してくる際、話に具体性を持たせるためか、実在のミュージシャン名を挙げることがある。たとえば、今回の質疑応答においては、「僕も含めて、ミュージシャンはすべからく音楽的に血族的つながりを持っている。たとえば、ハービー・ハンコックの場合だと、その前にはウィトン・ケリーがいたりし、多方ではバルトークにもつながっている」とか、「ソニー・ロリンズの名言に、“音楽というのは現代の空だ”、というのがある。僕もまさに、そう思っている」と、いったように。

 そんな彼の言い方を借りるなら、今作『Kin(←→)』は音楽家としての様々なつながりに留意しつつ、自在に表情を変えるアメリカの空を活写したアルバムとなるだろうか。

40周年プレイリスト
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