INTERVIEW

JiLL-Decoy association 『ジルデコ6 ~Just a Hunch~』

自身のなかで燃える閃きをありのままに解き放った新作。日本語のポップスとしてクールに機能する彼らなりのジャズ・マナーとは?

JiLL-Decoy association 『ジルデコ6 ~Just a Hunch~』

 ジャズやソウルを消化し、親しみやすいフォルムに仕立ててリスナーを楽しませてきたJiLL-Decoy association。新作『ジルデコ6 ~Just a Hunch~』は、作品ごとに振り子のような音楽性の変化を見せてきた彼らの〈ポップス〉に対するアプローチを改めて確認するアルバムとなった。ジャズも、ファンクも、どれも直球。ここには、これまで以上に自由で開放的なサウンドが詰め込まれている。

JiLL-Decoy association ジルデコ6 ~Just a Hunch~ ビクター(2014)

 「前作は、30代の女性である私自身のリアルな心情を綴るというコンセプチュアルなものだったんです。それに対して、今回は自由な閃きを大事にしたかったし、自分たちのなかで燃えているもの、やりたいことをそのまま見てもらいたかった。前作とはまったく違うものにしたいという気持ちがありました」(chihiRo、ヴォーカル)。

 冒頭の“Freedom Express”は、ライヴでの共演がきっかけで実現したというMonday満ちるとのコラボ・チューン。彼女の出自でもある90年代のアシッド・ジャズ・ムーヴメントに対するリスペクトが込められた、洒脱でスムースなアンサンブルが堪能できる。

 「Mondayさんは憧れの人ですし、一緒にやるにあたってどうしようか悩んだんですけど、自分たちが若い頃に衝撃を受けたスタイルをもう一度やってほしいなと思って、あえてアシッド・ジャズ的な方向に持っていきました」(kubota、ギター)。

 ほかにも、EGO-WRAPPIN'森雅樹がアレンジと演奏で参加したスカ・ナンバー“光の子どもたち”に、流麗なジャズ・ワルツ“drawing”、ラテンな味付けが楽しい“ジオメトリックな恋人”……と、サウンドのスタイルは実に多彩。“伝わっちゃう”のネオ・クラシック・ソウルと言いたいクールなファンクネスも聴きどころのひとつだろう。

 「僕はNYにいた時期があって、当時はいまをときめくロバート・グラスパーなんかも近いところにいたんですけど、彼らの実験的なアプローチを自分たちなりに消化したいなと思って。これまではあからさまにファンクをやるのは恥ずかしいところがあったんですけど、今回はやってみてもいいかなって」(kubota)。

 さらに、「レコーディングは演奏者の熱がいちばん入る形にしたい」(kubota)とのことで、どの楽曲でも生演奏ならではのグルーヴが前面に押し出されている。その根底にはやはりジャズ的で、かつバンド的な発想があるようだ。

 「音楽を作る時に自分を束縛することで得られる自由ってあると思うんです。いまやラップトップ一台でどんなビートも音も作れてしまうわけで、そういう環境のなかで、どう束縛するかってことを考えた時に、〈なるべく生で録る〉ってことが重要なのかなと」(towada、ドラムス)。

 また、パット・メセニーのインスト“So May It Secretly Begin”にオリジナル詞をつけたカヴァーを含め、ヴォーカル曲のほぼすべてが日本語詞。J-Popの文脈に縛られないサウンドに、いかに日本語を乗せるか──そんなトライアルと成果も刻み込まれた本作は、音楽に対する自由度の高さと同時に、これまでのジルデコらしさも感じ取れる充実作と言えるだろう。

 「こういう音を日本語で歌うとカッコ悪いなってコンプレックスになってる時期もあったんですけど、いまは日本語でカッコ良く歌いたいと思ってます。メンバーがしっかり音を作っているからこそ、自由に言葉を乗せられているのかもしれないですね。空気を読まずに(笑)」(chihiRo)。

 

 

▼文中に登場したアーティストの作品を紹介

左から、Monday満ちるの2013年作 『BRASILIFIED』 (Billboard)、EGO-WRAPPIN'の2013年作『steal a person's heart』(トイズファクトリー)、ロバート・グラスパー・エクスペリメントの2013年作『Black Radio 2』(Blue Note)、パット・メセニー・グループの87年作『Still Life(Talking)』(Geffen/Nonesuch)
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 ここでは彼らのオリジナル作を紹介します。初フル作『ジルデコ』(ポニーキャニオン)のリリースは2007年。都会的なクロスオーヴァー・ポップでいきなり注目を浴びます。その路線を推進した2008年の2作目『ジルデコ2』(同)を挿み、2010年の3作目『ジルデコIII』(PERSONA)ではSOIL&"PIMP"SESSIONSquasimodeのメンバーらクラブ・ジャズ界の実力派を迎えてセッションを展開。ワーキング・ウィーク“Thought I'd Never See You Again”のカヴァーで須永辰緒と組んだ2010年作『ジルデコ4 ~ugly beauty~』(ビクター)の後は、結成10周年記念の3部作を連続リリース。そして、〈30代女子のリアル〉をテーマに制作された2013年作『ジルデコ5』(ワーナー)では、日本レコード大賞の優秀アルバム賞を受賞しています。 *bounce編集部
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