INTERVIEW

【PEOPLE TREE】BOY GEORGE 『This Is What I Do』(5)

HAVE I LOST MY CROWN? OR...――新たな始まりを予感させる新作が完成したいま、ボーイ・ジョージは何を思う?

BOY GEORGE This Is What I Do Very Me/ソニー(2013)

 一度リングを退いたボクサーが、ふたたびスポットライトを浴びて観衆の前に現れる――ボーイ・ジョージの帰還劇は、そんな光景がどうしても頭をよぎってしまう。実際、先行シングル“King Of Everything”のPVでは妻と幼子を抱えた元ボクサーが描かれているだけでなく、この曲のテーマは依存症との戦い/克服であり、これも彼が再起するまで苦闘した姿とシンクロする。アルコールとドラッグに溺れ、80年代の麗しき姿からは想像もつかないほどの変貌を遂げていたジョージは、いかにして復活したのか。

 「レコーディングする良い頃合いだと感じていたんだ」と、復帰へのきっかけについてまずはそう語りはじめた。

 「周りからは一切のプレッシャーもなかったし、マネージメントをはじめ、自分の仕事の環境もすべて一新したんだ。自分が子供の頃、70年代に聴いて育った音楽をすべて反映させたようなアルバムを自分の力で作って、自分で世に出そうと思った。つまり、自分の好きなように自分らしい作品を作りたかったんだよ」。

 ニュー・アルバムのタイトルは『This Is What I Do』。〈これが僕です〉という、シンプル極まりないものだ。しかし、彼はいまこそ高らかにそう告げたかったに違いない。世界の頂点に立った80年代、音楽シーンの第一線でもがいていた90年代を経て、ようやく自分のあるべき姿、場所を見つけたと言っていいのではないだろうか。

 「僕も52歳になったわけで、いまのポップ・チャートを賑わす人たちと無理して競う必要はもうないんだよ。だから、現在の年齢相応の自分らしい作品にしたかった。思い切りポップな売れ線のアルバムを作るつもりはなかったんだ」。

 カルチャー・クラブ時代からルーツとなっていたレゲエをベースに、ソウルやヒップホップ、ダブ、グラム・ロック、カントリーまで、ジョージが辿ってきた音楽遍歴をアルバム通じて旅するかのような内容となっており、そこからは気負いなく、心から音楽を楽しんでいる彼の笑顔が窺える。

 「アルバムを作る際、まず作品全体で伝えたい雰囲気、フィーリングを形にするのが大切なんだ。そういう空気感をうまく捉えている作品がいくつかある。例えばロキシー・ミュージックの『Avalon』とか、初期のローリング・ストーンズデヴィッド・ボウイの作品とかね。そういった名作は〈いかにも狙ってます〉という力みがなくて、自然で、あたかも〈たまたまこういう一枚が出来てしまいました〉と言わんばかりなんだよ。そういうアルバムをたくさん聴いて参考にしたんだ」。

 キャリアを振り返ってみても、ここまで自然体で穏やかな作品はなかった。長い時間がかかったけれど、ようやく彼は本当の自分を取り戻したと言える。

 「僕にとってこのアルバムは新たな始まりであり、所信表明のようなものなんだ。ロックンロール・ライフはもう十分。創作活動に対しての情熱を取り戻したという実感もあるけど、まだまだウォーミングアップ段階だね。言うならば、これはまだオードブルなんだよ」。

 この言葉を聞ければ、もう大丈夫。そう、ボーイ・ジョージが帰ってきてくれたのだ。

 

▼関連作品

左から、キティ・デイジー&ルイスの2011年作『Smoking In Heaven』(Sunday Best)、ドレッドゾーンの2013年作『Escapades』(Dubwiser)、DJヨーダの2012年作『Chop Suey』(Get Involved)
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