アングラ演劇全盛期を蘇らせるオリジナル音源、堂々の復刻!

 以前『天井棧敷音楽作品集』をここでご紹介し2013年の寺山修司没後30年記念を大いに祝ったところだが、その余韻に浸ってる間もなくすさまじい音楽がまたしても届いた。『書を捨てよ!町へ出よう!』のサウンドトラック盤。しかも〈初CD化、最新リマスタリングとなる天井棧敷演劇版音楽〉と、〈71年のサントラには収録されなかった映画用音源〉というレアな音源集だ。

VARIOUS ARTISTS 『天井棧敷 演劇&映画音楽集 書を捨てよ!町へ出よう! 富士(2014)

 そもそも『書を捨てよ!町へ出よう!』は寺山修司作品の中に多数存在する。まず最初に現れたのは1964年の評論集「書を捨てよ町へ出よう」。その4年後1968年に演劇作品として「ハイティーン詩集 書を捨てよ町へ出よう」を発表。演劇実験室〈天井桟敷〉の第7回公演として初演され、60~70年代アングラ演劇の象徴として確固たる地位を確立した。さらにその3年後の1971年に映画版と評論集の続編である「続・書を捨てよ、町へ出よう」が発表された。そしてこれらにまつわる音楽として、この1964年の演劇版のサントラ、1971年の映画版のサントラの2種類が既に発表されているというわけだ。

 さて、今回新たに発表されるこの盤だが、収録される音源は前述の二者いずれにも収録されていない音源で構成されている。前半はクニ河内作曲による演劇版「書を捨てよ!町へ出よう!」の為の音楽9トラックが無編集で収録されている。寺山修司から直接電話で誘われたという彼のキーボードが全編にわたって冴えわたっている。後半では映画版の為に創られつつもサントラには収録されなかったアウトテイク集。浅川マキの狂おしい歌声とJ.A.シーザーの疾走するロックも炸裂する豪華な音楽15トラックが新たに日の目を見る。

 どれもあの60年~70年代のアングラ演劇全盛期を物語る音楽。「書を捨てよ! 町へ出よう!」という世界を半世紀近くたった今なお、鮮やかに蘇らせる音楽が80分ほど詰め込まれている。前述の2種のサントラのみならず映画や戯曲・評論と併せて楽しんでいただきたい。