冒頭、かすれ声のようなヴァイオリンが憧れに満ちた旋律を歌うグレチャニノフの《瞑想曲》から一気に惹き込まれる。生命力に満ちたリズムが躍動するアウリンの《フモレスケ》、内面への沈潜と精神の飛翔を共に描いたディークの《エヴォカシオン》、そしてジプシー調が底抜けに楽しいウィルヘルミの《コンチェルト・シュトゥック》! ここに収録された14曲は知られざる作品ばかりだが、どの曲も凄い名曲に聴こえる。戦前の巨匠のような個性的な節回しと多彩な音色で知られる佐藤久成が、自ら古い楽譜を収集し、選曲、演奏した一枚。これは彼の高い鑑識眼と卓越した技巧、想像力豊かな演奏の勝利だ!

【参考動画】佐藤久成の2013年作『HISAYA - 魔界のヴァイオリン』収録曲“チャールダーシュ”