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ひとつひとつの意味

 冷静にこれまでの歩みを見つめ直した結果、自分たちにしか成し得ない特性がさまざまに見えてきたわけだ。lynch.とは何なのか、そんな自問自答を究極にまで突き詰めたのが『GALLOWS』だった。

 「どれを取っても、このアルバムを代表する曲になってると思うんです」(明徳、ベース)。

 つまり、全体像としての統一感もあるが、同時に多面的でもあるということだ。例えば、「単純に歌が良い。歌詞もおもしろい。卑猥さだったり、lynch.の色気みたいなものがある」(悠介、ギター)という“GREED”や、「初めてリハで合わせたときからヤバいと思っていた」(明徳)という乾いたドライヴ感と切ない歌メロ・パートが交錯する“TOMORROW”、「lynch.が昔から持っている疾走感やメタルコアな感じもあるし、最後にギターのウワモノのセクションがあったり、このアルバムの要素がすべて詰まっている気がする」(晁直)という“BULLET”。

 加えて、「リフの響きが悪魔的なイメージ」(葉月)で「MVにしたらおもしろい映像になるんじゃないかなと思った」明徳)というリード・トラック“DEVIL”、「ただのガツンとしたロックじゃない雰囲気がある」(葉月)という悠介のメランコリックなギター・サウンドを効かせた“ENVY”など、実際に個々の楽曲についてのメンバーのコメントは興味深い。

 しかも本作はさらなる広がりを与えてくれる。聴き手の想像力を喚起させる仕掛けが結果的に生まれたというのだ。

 「最初の“INTRODUCTION”で13階段を上がっていって、“GALLOWS”が始まりますよね。そして曲が終わったときには、(絞首刑を)執行されているようなヴィジョンが浮かぶんですよ。そこから映画のようにストーリーに基づいた一連のシーンが見えてくる。しかも、最後の“PHOENIX”では甦って、また元に戻る。永遠にループしている感じがあるんですよね」(悠介)。

 「すごくいろんなものとリンクしてると思うんですよ。例えば、歌モノが多いというところでは『SHADOWS』にも繋がってくるけど、今回のジャケットのアートワークには、(当時の絵柄の)闇ヴァージョンみたいなイメージもあったり。曲名にしても、絞首台の次に7つの大罪シリーズが出てきたり、最後が“PHOENIX”で、闇の先の光的なものがあったり。意味をひとつひとつ考えてみると、よりおもしろい作品になるんじゃないかな」(明徳)。

 まもなく全国ツアー〈TO THE GALLOWS〉も始まるが、各地のライヴハウスを転戦する精力的なスケジュールが組まれた。バンドとオーディエンスが至近距離で対峙するなかで、『GALLOWS』の強靭なマテリアルが繰り出されることになる。

 「アルバムの世界観をどう表現するかを考えるより、〈生き残れるのか?〉ってことのほうが先に出てきますよ。ホントに肉弾戦というか、撃ち合いみたいになるんじゃないかな。実際、それに相応しい曲ばかりですからね」(葉月)。

 

▼lynch.の作品

左から、2007年作『THE AVOIDED SUN』『THE BURIED』、2009年作『SHADOWS』(すべてmarginal works)
※ジャケットをクリックするとTOWER RECORDS ONLINEにジャンプ

 

▼関連作品

左から、メンバーが参加した大佑と黒の隠者達の2011年作『 漆黒の光』(FIREWALL DIV.)、Pay Money To My Painの2013年作『gene』(バップ)
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